Google Research:2020年の振り返りと2021年以降に向けて(1/5)

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1.Google Research:2020年の振り返りと2021年以降に向けて(1/5)まとめ

・年始の恒例のGoogle Researchの去年の振り返りと今年の展望の主要なハイライト
・COVID-19を中心とした医療関係におけるAIの活用は様々な試みと進展があった
・災害予測、天候予測などにおけるAIの活用と困難を抱える人々の生活を支援する試みも

2.COVID-19、医療、天候、アクセシビリティ

以下、ai.googleblog.comより「Google Research: Looking Back at 2020, and Forward to 2021」の意訳です。元記事の投稿は2021年1月12日、Jeff Deanさんによる投稿です。

年始の恒例の去年の振り返りと今年の展望ですね。2019年の振り返り投稿と比較すると文章量が更に1.5倍の長さになってます。

アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Roberto Nickson on Unsplash

私が20年以上前にGoogleに入社したとき、Googleは複雑に配線された多くのコンピューターを使用して、Web上の情報を高品質で包括的な検索サービスにする旅を実際に始める方法を考えていました。現在まで早送りすると、Googleは様々な技術的課題に取り組んでいますが、それでもまだ、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにするという同じ包括的な目標を掲げています。

2020年、世界がCOVID-19によって再構成されたとき、研究で開発されたテクノロジーが何十億もの人々のコミュニケーション、世界の理解、物事の遂行にどのように役立つかを見ました。私は私達が達成したことを誇りに思っており、地平線上の新しい可能性に興奮しています。

Google Researchの目標は、様々な重要なトピックにわたる長期的で野心的な問題に取り組むことです。COVID-19の蔓延の予測から、アルゴリズムの設計、ますます多くの言語を自動的に翻訳すること、MLモデルの偏りの緩和まで。

2019年2018年の年次レビュー、および2017年と2016年の一部の研究のより限定的なレビューの精神に基づいて、本投稿では、この例外的な年のGoogle Researchの主要なハイライトを取り上げます。これは長い投稿ですが、多くの異なるセクションにグループ化されています。願わくは皆さんにとって興味深いものがありますように!

より包括的な概要については、2020年に発表された750を超える研究出版物をresearch.googleで参照してください。

(1)COVID-19と健康

COVID-19の影響が人々の生活に甚大な被害をもたらしたため、世界中の研究者と開発者が一堂に会し、公衆衛生当局と政策立案者がパンデミックを理解して対応するのに役立つツールとテクノロジーを開発しました。アップルとグーグルは2020年に提携して接触通知システム(ENS:Exposure Notifications System)を開発しました。これは、COVID-19の検査で陽性となった他の人と接触した場合に、人々に通知できるようにするBluetooth対応のプライバシー保護技術です。ENSは、従来の接触追跡の取り組みを補完し、感染の拡大を抑えるために50を超える国、州、および地域の公衆衛生当局によって展開されています。

パンデミックの初期には、公衆衛生当局は、ウイルスの急速な蔓延に対抗するために、より包括的なデータの必要性を示していました。人の動きの傾向に関する匿名化された洞察を提供するコミュニティモビリティレポートは、研究者が外出禁止令や社会的距離などの政策の影響を理解するだけでなく、経済予測を実施するのにも役立ちます。


コミュニティモビリティレポート:関心地域のレポートを捜してダウンロードできます。

Google所属の研究者達は、この匿名化されたデータを使用して、従来の時系列ベースのモデルの代わりにグラフニューラルネットワークを使用してCOVID-19の広がりを予測することも検討しました。

研究コミュニティは当初、この病気と二次的影響についてほとんど知りませんでしたが、私達は毎日より多くを学んでいます。COVID-19 Search Trendsに登録された症状により、研究者は、無嗅覚症(ウイルスに罹患した人が示す事がある嗅覚の喪失)などの一時的または症候的な関連性を調査できます。より広範な研究コミュニティをさらにサポートするために、Google Health Studiesアプリをリリースして、公に研究に参加するための手段を提供しました。


COVID-19 Search Trendsは、研究者が病気の蔓延と症状関連の検索との関連を研究するのに役立ちます。

Google全体のチームは、ウイルスの健康と経済への影響に対処するために取り組んでいる幅広い科学コミュニティにツールとリソースを提供しています。


COVID-19の広がりをモデル化するための時空間グラフ

公衆衛生上の脅威に対処するには、正確な情報が重要です。 GoogleニュースとGoogle検索で提供するCOVID-19に関する情報品質を向上させるために、Googleの多くの製品チームと協力して、ファクトチェックの取り組みやYouTubeでの同様の取り組みをサポートしました。

Nextstrain.orgの週刊状況レポートの翻訳を後援することにより、多言語コミュニティが重要なCOVID-19情報に平等にアクセスできるように支援しました。また、 国境なき翻訳者団と共同でCOVID-19オープンソース並列データセットを開発しました。

複雑でグローバルな出来事のモデリングは特に困難であり、より包括的な疫学データセット、新しい解釈可能なモデルの開発、および公衆衛生の反応を知るためのエージェントベースのシミュレーターが必要です。機械学習技術は、自然言語理解により研究者がCOVID-19科学文献の山をすばやく検索するのを支援すること、有用なデータセットを利用可能にしながらプライバシーを保護するために匿名化技術を適用すること、ベイジアングループテストを介してより少ないPCR検査でより速いスクリーニングを実施できるかどうかを調査しました。

これらは、ユーザーと公衆衛生当局がCOVID-19に対応するのを支援するためにGoogle全体で行われた多くの作業のほんの一例です。詳細については、health.googledでCOVID-19への取り組みを支援するテクノロジーについて参照してください。

(2)医療診断のための機械学習の研究

私達は、臨床医がMLの力を利用して、より多くの患者により良いケアを提供できるよう支援し続けています。

今年は、癌の診断と管理にコンピュータービジョンを適用して医師を支援する注目すべき進歩について説明しました。
これには、大腸内視鏡検査中に医師が潜在的に癌性のポリープを見逃さないようにする事MLシステムが前立腺組織のグリーソン分類において病理学者よりも大幅に高い精度を達成できる事放射線科医がX線で乳がんの兆候を調べるときに偽陰性と偽陽性の両方の結果を大幅に削減できる事、などが含まれます。


前立腺がんの危険性を判断するために、病理学者は生検を調べてグリーソン分類を割り当てます。公表した研究結果では、私達のシステムは、前立腺癌の専門的訓練を受けていない病理学者の集団よりも高い精度で評価することができました。深層学習システムの最初の段階では、生検のすべての領域にグリーソングレードが割り当てられます。この生検では、緑はグリーソンパターン3を示し、黄色はグリーソンパターン4を示します。

また、皮膚病の特定、加齢性黄斑変性症(米国と英国での失明の主な原因、世界で3番目に大きい失明の原因)の検出に役立つシステム、そして潜在的な新しい非侵襲的診断(人体から試料を採取せずに診断する事、例えば、網膜画像から貧血症の兆候を検出など)にも取り組んでいます。


私達の研究では、深層学習モデルが網膜画像からヘモグロビンレベル(医師が貧血を検出するために使用する尺度)をどのように定量化できるかを調べています。

2020年はまた、これらの同じ技術を用いてどのようにヒトゲノムの世界を覗きこむ事ができるかについての刺激的なデモンストレーションを行いました。

GoogleのオープンソースツールであるDeepVariantは、畳み込みニューラルネットワークを使用してシーケンスデータのゲノム変異を識別できます。2020年にはFDAチャレンジで4つのカテゴリのうち3つで最高精度を獲得しました。この同じツールを使用したDana-Farber Cancer Instituteが主導した研究では、2,367人の癌患者の集団分析で前立腺癌と黒色腫につながる遺伝的変異の診断率が14%向上しました。

研究は実験精度の測定だけにとどまりません。最終的に、患者がより良いケアを受けるのを本当に支援するには、MLツールが現実の世界の人々にどのように影響するかを理解する必要があります。

今年、私たちはメイヨークリニックと協力して、放射線治療計画を支援し、この技術を臨床診療にどのように展開できるかをよりよく理解するための機械学習システムの開発を開始しました。タイのパートナーと協力して、糖尿病性眼疾患のスクリーニングをテストケースとして使用し、人間を中心に考えるシステムを構築し、より健康な世界を実現するためのツールを構築する際の多様性、公平性、包括性の基本的な役割を認識しています。

(3)天候、環境、気候変動

機械学習は、自然環境をよりよく理解し、人々の日常生活と災害の両方に役立つ予測を行うのに役立ちます。天気と降水量の予測については、NOAAのHRRRのような計算集約型の物理法則ベースのモデルが長い間最高の地位を占めてきました。しかし、MLベースの予測システムにより、現在の降水量をはるかに細かい地域単位で予測できました(「シアトルで雨が降っていますか?」ではなく、「シアトルの地元の公園で雨が降っていますか?」を実現)。HRRRよりもかなり正確に最大8時間後までの短期予測を生成でき、予測をより迅速に計算できるにも関わらず、時間的および空間的解像度は高くなります


天候予測の視覚化(約1日間分)
左:1時間単位で行われるHRRRによる予測、HRRR予測の最少間隔。中央:実際の天候の変化、つまり、私達が予測しようとしている事。右:私達のモデルによって行われた予測。HRRRによって作成された空間分解能の約10倍で、2分毎(図では15分毎に表示)です。嵐の一般的な動きと形状を捕捉出来ている事に注意してください。

また、HydroNetsと呼ばれる改良された手法を開発しました。これは、ニューラルネットワークのネットワークを使用して、世界中の実際の河川システムをモデル化し、上流の水位と下流の浸水との相互作用をより正確に理解して、より正確な水位予測と洪水予報を実現します。これらの手法を使用して、インドとバングラデシュで洪水警報の対象範囲を20倍に拡大し、25万平方キロメートルで2億人以上の人々をより早く保護するのに役立っています。


HydroNetsの概要図

衛星画像データのより良い分析はまた、Googleユーザーに山火事の影響と範囲(今年カリフォルニアとオーストラリアで壊滅的な影響を引き起こした)のより良い理解を与えることができます。衛星画像の自動分析は、以前に撮影された衛星画像が限られていたとしても、自然災害後の被害を迅速に評価するのに役立つことを示しました。また、都市が現在の植樹の範囲と新しい植樹に焦点を当てるべき場所を評価するのを支援することにより、都市の植樹活動を支援することもできます。また、時間的変化に着目する機械学習手法が、生態学的および野生生物監視の改善にどのように役立つかを示しました

この作業に基づいて、AIとMLを使用してNOAAと提携し、Google Cloudのインフラストラクチャを使用してNOAAの環境モニタリング、天気予報、気候調査を強化できることをうれしく思います。

(4)アクセシビリティ

機械学習は、幾つかの種類の感覚的入力を他の種類に変換する事を学習できるため、利用しやすさを改善する素晴らしい機会を提供し続けます。一例として、食料品店と自宅の食器棚の両方で箱詰めされた食品を識別することにより、視覚障害のあるユーザーを支援できるAndroidアプリケーションであるLookoutをリリースしました。Lookoutの背後にある機械学習システムは、強力でありながらコンパクトな機械学習モデルが、スマートフォン搭載アプリとして200万近くの製品の識別をリアルタイムで実現できることを示しています。

同様に、手話でビデオ会議に参加する人々は、たとえ手を使って合図しても、音声ベースの話者検出システムによって手話で発言している事が検知されないため、ビデオ会議システムを使用するのが難しいと感じています。そのため、リアルタイムの手話検出モデルを考案し、ビデオ会議用のリアルタイムの自動手話検出システムを開発しました。これにより、現在の発言者として手話をしている人を識別するメカニズムを既存のビデオ会議システムに組み込む事ができます。

また、重要な家庭内の音声に対して、Voice AccessやSound Notificationsなどの便利なAndroidユーザー補助機能を公開しました。

Live Captionが拡張され、Pixelスマートフォン利用時に携帯電話通話時やビデオ通話時に字幕を付ける機能がサポートされるようになりました。これは、聴覚障害者や難聴者が第三者からの支援なしで電話をかける事が出来るようになる事を支援するLive Relay researchプロジェクトから生まれました。

3.Google Research:2020年の振り返りと2021年以降に向けて(1/5)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Google Research: Looking Back at 2020, and Forward to 2021

2)research.google
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