2022年のGoogleのAI研究の成果と今後の展望~医療編~(1/2)まとめ

ヘルスケア

1.2022年のGoogleのAI研究の成果と今後の展望~医療編~(1/2)まとめ

・消費者向け製品開発時の「発表してから繰り返し改善する」手法とは異なり、MLを医療に応用するためにはより慎重で厳格なテストが必要になる
・医療領域特有の統合と検証作業は、医療分野の専門家であるパートナーとの密接な協力のもとで行う事で作業進捗を加速する事ができるようになった
・ヘルスケア分野のML研究は入院のような集中ケアから地域社会内の患者に関与する分散ケアに重点が移りつつありモバイルヘルスが注目されている

2.モバイルヘルスとは?

以下、ai.googleblog.comより「Google Research, 2022 & beyond: Health」の意訳です。元記事の投稿は2023年2月23日、Greg CorradoさんとYossi Matiasさんによる投稿です。

モバイルヘルス(mobile health)という単語は初めて読みましたが、病院に機械学習技術を持ち込むのではなく、人々が日常使いするスマートフォンなどのモバイル機器に健康状態をチェック可能な機械学習技術を持ち込むと言う、見事な発想の転換ですね。利用可能な医療サービスが限られている地域だけではなく、忙しくて健康診断等が後回しになってしまいがちな人達にとっても、ありがたい事だと感じます。

アイキャッチ画像はstable diffusionのカスタムモデルによる生成で「健康」から連想すると運動になり、比較的描きやすい運動としてジョギングになったイラスト。

(本記事は、Googleの様々な研究分野を取り上げるシリーズの第8部です。このシリーズの他の記事は第1部「2022年のGoogleのAI研究の成果と今後の展望~言語・視覚・生成モデル編~」からご覧いただけます)

GoogleがAIに注力するのは、この変革的なテクノロジーが、ほとんどすべての分野やセクターの人々を支援、補完、強化する能力を通じて社会に利益をもたらすという確信に基づくものです。

ヘルスケアと医療の分野ほど、この機会の大きさを実感する分野はないでしょう。このような社会的利益を実証するという使命にふさわしく、Google Researchの応用機械学習(applied machine learning)プログラムは、2019年から2022年までのすべての年において、Nature Impact Indexの健康・生命科学分野の出版物で最も影響力のある企業研究機関の上位5位に(Googleの持ち株会社である)Alphabetが入ることに貢献しています。

私たちの医療に関する研究論文は、バイオマーカー、消費者センサー、皮膚科学、内視鏡、疫学、医学、ゲノミクス、腫瘍学、眼科学、病理学、公衆・環境衛生、放射線学の分野にまたがり、幅広い影響を及ぼしています。本日は、この1年で注目された3つのテーマについてご紹介します。

・技術提携の重要性
・モバイルヘルスへのシフト
・健康アプリケーションにおけるジェネレーティブML

各セクションでは、健康分野におけるイノベーションのために、慎重かつ協力的なアプローチの重要性を強調しています。Googleの消費者向け製品開発でよく見られる「発表し、繰り返す(launch and iterate)」アプローチとは異なり、MLを医療に応用するには、思慮深い評価、エコシステムの認識、そして厳格なテストが必要です。

すべてのヘルスケアテクノロジーは、導入前に安全性と有効性を規制当局に証明しなければならず、患者のプライバシーや性能監視の基準を厳格に満たす必要があります。それに加えて、MLシステムは医療分野において新規参入者であるため、医療ワークフローにおける最適な使用方法を発見し、医療従事者と患者の信頼を獲得しなければなりません。

このような領域特有の統合と検証作業は、テクノロジー企業が単独で着手すべきものではなく、医療分野の専門家であるパートナーとの密接な協力のもとで行う必要があります。

技術提携の重要性

責任あるイノベーションには、一次研究から人間への影響まで、長い弧を描くための忍耐と持続的な投資が必要です。

私たちは、十分なサービスを受けていない糖尿病患者の失明を防ぐために機械学習(ML:Machine Learning)を利用することを推進していますが、アルゴリズムの主要な研究を発表してから、コミュニティベースのスクリーニング設定で統合MLソリューションの実際の精度を実証する最近の展開研究までに6年が経過しています。幸いなことに、私たちは、考え抜かれた技術提携によって「研究室の試験台に設置されているML」から「ベッドの脇にある人工知能」への旅を根本的に加速できることを発見しました。

健康関連のML技術のリリースを加速する必要性は、例えば腫瘍学で明らかです。乳がんと肺がんは、最も一般的ながんの種類であり、どちらも早期発見が重要な鍵となります。もしMLがこれらのがんの検診の精度を高め、利用可能な範囲を広げることができれば、患者の予後は改善されるでしょう。しかし、これらの進歩の展開を待てば待つほど、助かる人の数は減っていきます。既存の医療技術企業は、新しいAI機能を既存の製品群に統合し、適切な規制のクリアランスを求め、既存の顧客基盤を利用して、これらの技術を迅速に展開することができるのです。

私たちは、このような状況を目の当たりにしてきました。

乳がん検診を改善するためにMLを使用した主要な研究を共有してからわずか2年半後、私たちはマンモグラフィソフトウェアの主要メーカーであるiCADと提携し、彼らの製品への私たちの技術の統合を開始しました。また、RadNet社のAidence社との提携により、低線量CTスキャンのためのディープラーニングの研究を肺がん検診のワークフローに反映させる際にも、同じような加速パターンを見ています。

ゲノミクスもまた、パートナーシップがML技術の強力な促進剤となることが証明されている分野です。この1年、私たちはスタンフォード大学と協力し、新しいシーケンス技術とMLを組み合わせることで遺伝病を迅速に診断し、記録的な速さで患者の全ゲノム配列を決定し、救命介入を可能にしました。

また、Pacific Biosciences社との提携を発表し、同社のシーケンシング手法に私達のML技術を重ねることで、研究および臨床におけるゲノム技術をさらに発展させることに成功しました。同年末、PacBio社は、私達の技術を搭載した新しいゲノムシーケンスツールであるRevioを発表しました。


稀な遺伝病の診断は、患者のゲノムの何十億もの塩基対の中から、一握りの新規変異を見つけることにかかっているかもしれません。

医療技術企業とAI技術企業のパートナーシップは、技術の翻訳を加速させますが、こうしたパートナーシップは、分野全体を前進させるオープンリサーチやオープンソフトウェアの代わりではなく、それを補完するものです。例えば、私達の医療画像ポートフォリオでは、胸部X線モデル開発のための転移学習を簡素化する新しいアプローチ、堅牢で効率的な自己監視によって医療画像用MLシステムのライフサイクルを加速する方法、医療画像システムを異常値に対してより堅牢にする技術など全てを、2022年に紹介しています。

今後、科学的な開放性と異業種とのパートナーシップの組み合わせが、ヘルスケアと医療における人間中心のAIの利点を実現するための重要な触媒になると信じています。

モバイルヘルスへのシフト

ヘルスケア全般において、また健康アプリケーションにおけるML研究において、集中ケア(例:入院)から分散ケア(例:地域社会内で患者にアプローチ)へと重点が移りつつあります。したがって、私たちは、患者を(MLを利用するために)診療所に連れてくるのではなく、患者のところにMLを持っていく事ができるモバイルML-ソリューションの開発に取り組んでいます。

2021年には、スマートフォンのカメラを使って心拍数を測定し、皮膚の状態を特定するのに役立つ初期の研究の一部を紹介しました。2022年には、スマートフォンのカメラによる自撮りで心血管の健康状態や視力への代謝リスクを評価できる可能性や、胸に当てたスマートフォンのマイクで心音や肺音の解釈を助ける可能性に関する新しい研究を紹介しました。

これらの例はすべて、様々なスマートフォンにすでに存在するセンサーを使用しています。これらの進歩は貴重ですが、新しいセンシング技術の開発によってモバイルヘルス機能を拡張することには、まだ大きな可能性が残されています。この分野における私たちの最もエキサイティングな研究プロジェクトの1つは、最新のスマートフォンに簡単に接続できる新しいセンサーを活用し、利用可能な医療資源が少ないコミュニティでモバイル妊婦超音波検査(mobile maternal ultrasound)を可能にするものです。

3.2022年のGoogleのAI研究の成果と今後の展望~医療編~(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Google Research, 2022 & beyond: Health

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