ディープラーニングで皮膚疾患の鑑別診断を実現(3/3)

学習手法

1.ディープラーニングで皮膚疾患の鑑別診断を実現(3/3)まとめ

・DLSの診断の際には多くの患部画像と病歴等のメタデータを用意する事が精度向上に結びつく
・メタデータが用意できない場合は画像のみで学習させた方が精度が向上する
・希少な症例が全体の診断精度に影響を及ぼしてしまう事などが今後の課題となった

2.DLS診断におけるメタデータの有用性

以下、ai.googleblog.comより「Using Deep Learning to Inform Differential Diagnoses of Skin Diseases」の意訳です。元記事は2019年9月12日、Yuan LiuさんとPeggy Buiさんによる投稿です。

複数のデータを組み入れる
また、様々なタイプの入力データがDLS(Deep Learning System)のパフォーマンスに与える影響についても調査しました。

複数の角度から画像を撮影することで、皮膚科医が皮膚の状態をより正確に診断できるのと同様に、DLSの精度は画像の数が増えるにつれて向上します。

メタデータ(病歴など)がない場合、モデルは良いパフォーマンスを発揮できません。病歴がないケースで発生する可能性があるこの精度のギャップは、画像のみでDLSをトレーニングすることで部分的に軽減できます。しかしながら、これは、皮膚の状態に関するいくつかの質問への回答を提供することで、DLSの精度を大幅に改善できることを示唆しています。


DLSのパフォーマンスは、より多くの画像(青線)またはメタデータを入力に与える(赤線と青線の比較)と向上します。 入力としてメタデータが存在しない場合、画像のみを使用して個別のDLSをトレーニング(緑)すると、メタデータと共にトレーニングしたDLS(赤と緑の比較)よりわずかに改善されます。

今後の作業と応用
これらの研究結果は非常に有望ですが、多くの作業がまだ残っています。まず、今回の実践実験を反映すると、データセット内のメラノーマなどの皮膚癌の相対的な希少性が、癌を検出するための正確なシステムを訓練する能力を妨げました。

訳注:メラノーマは悪性黒色腫と言い、ほくろと見た目を区別する事が難しく、且つ人種によって発生率は違うのですが日本人だと10万人に1人程度と言う非常に低い発生率なので、多くの誤検知を誘発してしまったのだと思われます。

これに関連して、私たちのデータセットの皮膚癌を示すラベルは生検により確定診断されたものではなく、この点でグラウンドトゥルースラベルとしての品質が制限されています。

第二に、データセットには様々なフィッツパトリックスキンタイプが含まれていましたが、このデータセット内ではあまりに数が少なく意味のあるトレーニングや分析を行うのが難しいスキンタイプがありました。

最後に、検証データセットは1つの遠隔皮膚科サービス(teledermatology service)からのものでした。このデータには2つの州にまたがる17のプライマリケアが含まれていますが、より広い地域から症例を集めて追加で検証する事が重要になります。

上記の制限は、生検で証明された皮膚癌の症例をトレーニングおよび検証セットに追加し、追加のフィッツパトリック皮膚タイプおよび他の臨床センターからの症例を含めることで対処できると考えています。

皮膚疾患の鑑別診断を通知する深層学習の成功は、臨床医を支援するこのようなツールの可能性を大いに奨励しています。例えば、このようなDLSは、治療の優先順位をガイドするのに役立ち、非皮膚科医がより正確に皮膚科ケアを開始し、利用しやすさ改善する可能性があります。まだ重要な作業が残っていますが、臨床医にとってこのようなシステムの有用性を検討する将来の努力に興奮しています。共同研究に関するお問い合わせは、dermatology-research@google.comまでご連絡ください。

謝辞
この作業には、ソフトウェアエンジニア、研究者、臨床医、職域を超えた貢献者の学際的なチームの努力が含まれていました。このプロジェクトの主な貢献者には、Yuan Liu, Ayush Jain, Clara Eng, David H. Way, Kang Lee, Peggy Bui, Kimberly Kanada, Guilherme de Oliveira Marinho, Jessica Gallegos, Sara Gabriele, Vishakha Gupta, Nalini Singh, Vivek Natarajan, Rainer Hofmann-Wellenhof, Greg S. Corrado, Lily H. Peng, Dale R. Webster, Dennis Ai, Susan Huang, Yun Liu, R. Carter Dunn そして David Cozが含まれます。

著者等は、データ収集のためのソフトウェアインフラストラクチャサポートについて、William Chen、Jessica Yoshimi、Xiang Ji、およびQuang Duongに謝意を表します。
私達はまたGenevieve Foti, Ken Su, T Saensuksopa, Devon Wang, Yi Gao 及び Linh Tranにも感謝します。

最後になりましたが、この研究は、この研究の事例をレビューしてくれた皮膚科医の皆さん、プライマリケア医の皆さん、看護師の皆さん、肌の状態のマッピングの確立を支援してくれたSabina Bisと原稿に関するフィードバックを提供したAmy Pallerの参加なしには不可能でした。

 

3.ディープラーニングで皮膚疾患の鑑別診断を実現(3/3)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Using Deep Learning to Inform Differential Diagnoses of Skin Diseases

2)arxiv.org
A deep learning system for differential diagnosis of skin diseases

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