Google Research:2019年の振り返りと2020年以降に向けて(1/8)

入門/解説

1.Google Research:2019年の振り返りと2020年以降に向けて(1/8)まとめ

・Google Researchを率いるJeff Deanによる恒例の年初投稿。去年の振り返りと今後の方向性
・AIの倫理的利用についてはモデルカード、Activation Atlases、Fairness Indicators、FaceForensicsなど
・AI for Social Goodは洪水予測、野生生物保護、二酸化炭素排出量を抑える都市設計、教育アプリなど

2.AIの倫理的と社会貢献活動

以下、ai.googleblog.comより「Google Research: Looking Back at 2019, and Forward to 2020 and Beyond」の意訳です。元記事の投稿は2020年1月9日、Google Research部門トップのJeff Deanさんによる投稿です。

毎年恒例の年初のGoogle Research活動の振り返りです。ご本人のTwitter曰く、冬休み中に本投稿を書いていたそうで頑張った!実際、去年版は2019年1月15日の発表で、しかも、this yearを2018年の意味と2019年の意味で使っている箇所が混在していたので、前年中から書き留めていても最終的に二週間かかった事を伺わせるレベルの長文だったのですが、今年は更に1.3倍くらい長文になってます。

アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Benjamin Davies on Unsplash

Google Researchの目標は、人々の日常生活を劇的に改善するような事柄に重点を置いて、長期的に野心的に問題解決に取り組むことです。2019年には、この目標を達成するために、幅広い基礎研究分野で進歩を遂げ、ヘルスケアやロボット工学などの新規および新興分野で研究を行い、様々なコードをオープンソース化し、Googleの製品チームとの継続的なコラボレーションを行い、ツールとサービスをユーザーにとって劇的に有用に改善しました。

2020年の始まりにあたって、一歩下がった視点から過去1年間に行った研究活動を評価し、今後数年間でどのような問題に取り組みたいかを考える事は有益な事です。

この考えを念頭に、本ブログ投稿は、Googleの研究者とエンジニアが2019年に行ったいくつかの研究や作業に焦点を当てています。(2018年にも同様なレビューを行い、2017年と2016年にも一部の作業に限定してはいますがレビューを行っています。)

より包括的な概要については、Publication databaseページから2019年に出版された研究資料をご覧ください。

(1)AIの倫理的利用(Ethical Use of AI)

2018年、Google製品に使われている機械学習などの技術や研究、アプリケーションを評価するためのフレームワークである「AI原則(AI Principles)」を公開しました。

2019年6月、研究と製品開発のライフサイクルの様々な側面でこれらのAI原則がどのように実践されているかについての過去一年の振り返りを公開しました。

AI原則が触れている領域の多くは、AIおよび機械学習研究コミュニティが活発な研究を行っている広範な領域です。(機械学習システムにおけるバイアス、安全性、公平性、説明責任、透明性、プライバシーなど)

私たちの目標は、これらの分野で現在最もよく知られている技術を私たちの仕事に適用すること、そしてこれらの重要な分野で最先端技術を進歩させ続けるための研究を行うことです。

たとえば、昨年は:

クラウドAI製品のいくつかに関して、「モデルカード(使用しているモデルの構成やデータに関する説明書き)」の発行を可能にする新しい透明性ツールに関する研究論文を発表しました。Cloud AI Vision API Object Detectionのモデルカードをサンプルとして見ることができます。

Activation Atlasesにより、どのようにニューラルネットワークが物体を認識していくのか挙動を探り、機械学習モデルの解釈可能性を支援しました。

・TensorFlow Privacyを導入しました。これは、差分プライバシー(differential privacy)保証付きで機械学習モデルのトレーニングを可能にするオープンソースライブラリです。

機械学習の実践者が機械学習モデルの不当な、または意図しない偏見を内包していないかを識別する事を支援するために、Fairness Indicatorsのベータ版をリリースしました。


Fairness Indicatorsのスライスをクリックすると、What-If Toolウィジェット内のそのスライス内のすべてのデータポイントが読み込まれます。 この場合、「female」ラベルの付いたすべてのデータポイントが表示されます。

・一対比較(pairwise comparison)と正則化を大規模な推薦システムにどのように組み込むとMLの公平性が向上するかに関して、KDD’19で論文を公開しました。

・機械学習の研究における公平性を分類システムに適用する事例研究に関する論文をAIES’19で発表しました。
私達の公平性の指標である等価条件(conditional equality)についての説明を行いました。これは、機会均等を実施する際に分布の違いを考慮します。

・テキスト分類問題における反事実的公平性(counterfactual fairness)に関する論文をAIES’19で発表。「事例として参照されているセンシティブな属性を変更した場合、予測はどのように変化しますか?」という問いから考えるアプローチを行い、このアプローチを使用して、オンラインコンテンツの有害性を評価するシステムを改善しました。

・deepfakesにより作成された偽動画を特定する研究に役立つ新しいデータセットをリリースしました。


Googleの偽動画検出研究への貢献であるFaceForensicsベンチマークによる動画のサンプル。この動画は、俳優のペアをランダムに選択し、ディープニューラルネットワークが一人の俳優の顔を別の俳優の頭に入れ替える事で実現しています。

(2)社会貢献活動のためのAI(AI for Social Good)
機械学習は、多くの重要な社会問題に役立つ巨大な可能性を秘めています。

私たちは、そのような分野で仕事を行うだけでなく、他の人々がそのような問題を解決するために創造性とスキルが発揮できるようにする事にも注力してきました。

洪水は地球上で最も一般的で最も致命的な自然災害であり、毎年約2億5千万人が被害を受けています。機械学習、計算、およびより優れたデータソースを使用して、従来よりはるかに正確な洪水予測を行い、影響を受ける地域の数百万人のスマートフォンに実用的な警告を配信しています。また、洪水予測、水文学、およびGoogleと広範な研究コミュニティの専門知識を持つ研究者を集めたワークショップを開催し、この重要な問題についてさらに協力する方法について議論しました。

洪水予測の取り組みに加えて、世界の野生生物をよりよく理解する技術を開発し、7つの野生生物保護組織と協力して、機械学習を使用して野生生物を撮影したカメラデータの分析を支援しています。また、水中で録音した音からクジラの種と場所を特定するために、米国NOAAと協力しています。

また、新しい種類の機械学習指向の生物多様性研究を可能にする一連のツールを作成してリリースしました。

第6回きめ細かい視覚分類ワークショップの開催を支援する一環として、ガーナのアクラにあるGoogleの研究者は、マケレレ大学AI&データサイエンス研究グループの研究者と協力して、キャッサバの植物病の分類に関するKaggleコンペを開催し、運営しました。

キャッサバはアフリカで2番目に大きい炭水化物の供給源であるため、この植物の健康は重要な食料安全保障の問題であり、87チームの100人以上の参加者がコンテストに参加するのは素晴らしいことでした。

2019年、Google Earthタイムラプスを更新し、人々が過去35年間に地球がどのように変化したかを効果的かつ直感的に視覚化できるようにしました。更に、私たちは学術研究者と協力して、人間が集団として移動する経路に関するデータを収集する新しいプライバシー保護方法を開発し、都市計画立案者が二酸化炭素排出量を低レベルに抑える効率的な環境を設計する方法に関して情報を提供しています。

私達はまた、機械学習を適用して、児童の学習をサポートしています。
国連によると、世界の子供の617百万人は、生活の質を向上する重要な決定要因である基本的なリテラシーを持っていません。

より多くの子供たちが読むことを学ぶのを助けるために、私達はアプリ「Bolo」をリリースしています。このアプリは生徒をリアルタイムで指導する音声認識技術を使用します。

また、利用を容易にするため、アプリは低価格の携帯電話でインターネットに繋がっていなくても動作します。インドでは、Boloは既に80万人の子供たちが物語を読み、5億語を話すのを支援しています。初期の結果は心強いものです。インドの200の村で3か月間の実地テストを行ったところ、参加者の64%が読解力が向上したことが示されました。

より、年長の生徒の場合、Socraticアプリが、数学、物理学、1,000を超える高等教育のトピックで複雑な問題を抱えている高校生を支援できます。

写真または口頭での質問に基づいて、アプリは「質問の根底にある概念」を識別し「その解決に最も役立つオンラインリソースへのリンク」を自動的に生成します。

古代ギリシアの哲学者ソクラテスにちなんだソクラテス式問答法のように、このアプリは質問に直接答えるのではなく、生徒自身が答えを見つけるように導きます。私たちは、BoloやSocraticなどを通じて世界中の教育成果を向上させる幅広い可能性に興奮しています。

5月に、AI for Social Goodの取り組みを拡大するために、Google.orgからの2,500万ドルの助成金を得てAIインパクトチャレンジを発表しました。

反響は膨大で、119か国から2,600を超える思いやりのある提案が寄せられました。20の印象的な組織が大きな社会的および環境的問題を解決する可能性で際立っており、本チャレンジの最初の補助金受領者となりました。これらの組織の仕事のいくつかの例は以下です。

・FondationMédecinsSansFrontières(MSF)は、画像認識ツールを使用して、リソースの少ない環境(現在、ヨルダンで試験運用中)で臨床スタッフが抗菌画像を分析できるようにする無料のスマートフォンアプリケーションを作成しています。このアプリは特定の患者の感染に対して使用する適切な抗生物質について助言を行います。

・世界では10億人以上が小規模農家として生計をたてています。害虫による被害は、作物の収穫と彼らの生計を破壊する可能性があります。Wadhwani AIは画像分類モデルを使用して、害虫を識別し、散布する農薬と時期についてタイムリーなアドバイスを提供し、最終的に収穫量を向上させます。

・熱帯雨林の奥深くでは、違法な森林伐採が気候変動の主な原因となっています。Rainforest Connectionは、生物音響モニタリングと古いスマートフォンとディープラーニングを組み合わせて、熱帯雨林の健康状態を追跡し、脅威を検出します。

20のAIインパクトチャレンジの受賞者。 全ての詳細については、「Working together to apply AI for social good」こちらをご覧ください。

 

3.Google Research:2019年の振り返りと2020年以降に向けて(1/8)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Google Research: Looking Back at 2019, and Forward to 2020 and Beyond

2)research.google
Publication database(2019)
Optimization of Molecules via Deep Reinforcement Learning
AVA

3)modelcards.withgoogle.com
Object Detection Model Card v0 Cloud Vision API

4)ai.google
Working together to apply AI for social good

5)blog.google
Using AI to give people who are blind the “full picture”
What our quantum computing milestone means
Teachable Machine 2.0 makes AI easier for everyone
Google for Startups Accelerator empowers AI startups in Europe

6)support.google.com
Get image descriptions on Chrome

7)federated.withgoogle.com
Federated Learning An online comic with google AI

8)arxiv.org
The Evolved Transformer

9)www.isca-speech.org
Improving Keyword Spotting and Language Identification via Neural Architecture Search at Scale

10)github.com
google / jax

11)leogao.dev
The Decade of Deep Learning

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