厚生労働省発表の平均寿命は実体とどのくらいかい離しているのか?

入門/解説

1.厚生労働省発表の平均寿命は実体とどのくらいかい離しているのか?まとめ

・平均寿命はまだ一度もどのくらい誤差があったか検証されていない
・平均寿命達成時、男性は85%、女性は90%の人がご存命の可能性がある
・人生100年時代は他人事ではないので健康に留意して頑張りましょう

2.日本の本当に実測した平均寿命は何歳なのか?

日本では平均寿命は昭和22年、1947年からのデータが公表されている。以下がグラフ、ビックリするほど線形に、直線に伸びている。参考までにロシアの平均寿命グラフはこちら。

1947年と言えば、第二次世界大戦の終了が1945年なのでGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による占領政策が続いており社会的にも混乱が続いていた時代

1945年8月
・日本政府がポツダム宣言を受諾

1947年10月
・裁判官の山口良忠氏が闇市で闇米を購入する事を拒否して配給食糧のみを食べ栄養失調で死亡

1950年6月
・朝鮮戦争勃発

1952年4月(昭和27年)
・日本の主権回復。GHQ/SCAPの占領政策終了

当時の首相である吉田茂にも下記のような逸話が伝えられている。

Wikipediaより引用、吉田茂がGHQのマッカーサー総司令に「450万トンの食糧を緊急輸入しないと国民が餓死してしまう」と訴えたが、アメリカからは結局その6分の1以下の70万トンしか輸入できなかった。しかしそれでも餓死者は出なかった。マッカーサーが「私は70万トンしか出さなかったが、餓死者は出なかったではないか。日本の統計はいい加減で困る」と難癖をつけた。それに対して吉田は「当然でしょう。もし日本の統計が正確だったらむちゃな戦争などいたしません。また統計どおりだったら日本の勝ち戦だったはずです」と返した。これにはマッカーサーも大笑いだったという。

終戦直後の騒然とした世の中で生きるために必死で統計の精度云々と言っているような時代ではなかったであろうと言う事は容易に想像できる。吉田茂にしても本人の性格から推察するに統計で算出された本当の必要食糧数を相当盛ってマッカーサーに伝えた可能性が高く、日本の統計を批判したのではなく、ジョークとしての切り返しと思う。

何が言いたいかというと、当時の統計データの精度を批判しているわけではなので、そこは誤解なきよう。さて、本題になるのだけれども「昭和22年の平均寿命は実際にはどのくらいずれたのか?」を見れば、厚生労働省発表の平均寿命にどれだけ信頼が置けそうか?がわかるのではないか、と言うのが今回のアイディア。

昭和22年に生まれた人の数は国勢調査で判明しているので、その人たちのご存命の人数を追っていけば、人数が約半分になる時期も判明する。そこがおおよその平均寿命。(厳密には寿命中位数だが)

結論を先に言ってしまうと「わかりませんでした

何故なら、昭和22年生まれの方は2018年現在50%以上の方がご存命だったから。そう、かなり驚いたのだけれども平均寿命がどれだけ本当の値とずれていたのかは、71年後の現在もまだ一度も検証できていないのだ。

考え方を変えて「平均寿命達成時にご存命の方の割合は何%なのか?」を調べてみた。
・1947年生まれの男性の平均寿命は50.06歳、つまり1998年の51歳に平均寿命を迎えた
・1947年生まれの女性の平均寿命は53.96歳、つまり2001年の54歳に平均寿命を迎えた
人口は国勢調査で判明しているから平均寿命達成時のご存命の方の割合は調べる事ができるのだ。

男性は7年間分を調べる事ができます。
「1947年生まれの平均寿命50.06歳、つまり、1998年の51歳の人」~「1953年生まれの平均寿命61.09歳、つまり、2015年の62歳の人」

女性は5年間分を調べる事ができます
「1947年生まれの平均寿命53.96歳、つまり、2001年の54歳の人」~「1951年生まれの平均寿命64.9歳、つまり、2016年の65歳の人」

上記の平均寿命達成時の生存率は、男性は約85%、女性は約90%の人がご存命となりました。

さて、仮にこの誤差が修正されずにそのまま現在まで続いているとしたら、2018年07月20日に最新の「平成29年簡易生命表の概況」では、男性の平均寿命は81.09歳、女性の平均寿命は87.26歳でした。

つまり、
・男性は平均寿命81.09歳達成時、約85%の人がまだご存命の可能性があります。
・女性は平均寿命87.26歳達成時、約90%の人がまだご存命の可能性があります。

コーホート分析による平均寿命の計算「2014年に日本に生まれた子どもの場合、平均寿命は107歳になる」は荒唐無稽な話ではありません。

私はこの事実に気づいたときに100年人生をおとぎ話や夢物語と思うのは止め、少し気が滅入るけれども、現実に見据えなければいけない事だと考えるようになりました。もちろん、人間の最高寿命は125歳説などもあり、平均寿命が今後もずっと直線で伸びる保証はありません。ただ、平均寿命は「乳幼児」の死亡率改善、成人病や三大疾病など「中高年」の死亡率の改善、と主要改善目標とされる年代が段々と高く変化してきた歴史があります。超高齢化社会のこれからは、健康寿命の改善による「高齢者」の死亡率改善に進む動機と伸びしろは十分にあるのです。

100歳の自分を想像すると腰が痛いとか目が霞むとか膝の軟骨がとか、ネガティブなイメージが沸き起こってくるのですが、長寿を呪いとするか祝福とするかは普段の心がけ次第と思うので、みなさん、100歳人生は本当にあり得ると思って、健康に留意して人生100年時代に備えましょう。

前のお話「何故平均寿命は確実に間違っていると言えるのか?

3.厚生労働省発表の平均寿命は実体とどのくらいかい離しているのか?関連リンク

1)www.e-stat.go.jp
・人口推計 / 長期時系列データ 我が国の推計人口(大正9年~平成12年)
人口推計 / 長期時系列データ 長期時系列データ(平成12年~27年)

2)www.mhlw.go.jp
主な年齢の平均余命の年次推移

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