ハエの脳のニューロン接続を見える化(2/2)

入門/解説

1.ハエの脳のニューロン接続を見える化(2/2)まとめ

・フロードフィリングネットワークにより校正にかかる時間が大幅に短縮できた
・また、自動シナプス検出用のモデルも訓練する事で更に堅牢性を向上した
・ヘミブレインコネクトーム使って中心複合体やキノコ体に関する研究が促進される

2.ヘミブレインコネクトームを使った研究

以下、ai.googleblog.comより「Releasing the Drosophila Hemibrain Connectome — The Largest Synapse-Resolution Map of Brain Connectivity」の意訳です。元記事の投稿は2020年1月22日、Michal JanuszewskiさんとViren Jainさんによる投稿です。アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Guslin Al-Fikrah on Unsplash

フロードフィリングネットワーク(FFN:flood-filling networks)は「ヘミブレイン(hemibrain:半脳)プロジェクト」を推進するために十分な精度で3D画像から脳の3Dモデルを再構築する事を実現した最初の自動セグメンテーションテクノロジーでした。従来は、自動再構築のエラーには人間の専門の「校正者」による修正が必要であり、従来のアプローチでは数千万時間の人的努力が必要であると思われていました。FFNを使用する事で、半脳は数十万時間で校正が可能になりました。これは2桁の改善です。

この(まだかなりの時間がかかる)校正作業は、この目的のためにJaneliaで開発されたツールと作業フローを使用して、高度に熟練した専任の校正者のチームによって2年間にわたって行われました。

例えば、校正者はVRヘッドセットとカスタム3Dオブジェクト編集ツールを使用して、ニューロンの形状を調べ、自動再構築のエラーを修正しました。 次に、これらの改訂版を教師データとして使用してFFNモデルを再トレーニングし、改訂されたより正確な機械学習による出力が可能になりました。

最後に、校正後の再構築作業は、「自動シナプス検出」と組み合わされて、ヘミブレインコネクトームが生成されました。Janeliaの科学者は、個々のシナプスに手動でラベルを付けてから、ニューラルネットワーク分類器を訓練して「自動シナプス検出」タスクを自動化しました。複数回のラベル付けにより一般化が改善され、2つの異なるネットワークアーキテクチャの結果が合併され、ヘミブレイン全体で堅牢な分類が生成されました。

ヘミブレインの作成に関する詳細は、HHMIのプレスリリースに記載されています。

本日の発表で公開されたもの
本日の発表の焦点は、関心のある人がハエのコネクトームを視覚的およびプログラム的に研究できるようにするデータセットとツールのセットです。 具体的には、次のリソースが利用可能です。

・テラバイト規模の生データ、校正済みの3D再構成データ、シナプスアノテーションをブラウザから操作(hemibrain-dot-neuroglancer-demo.appspot.com)、または一括でダウンロード(www.janelia.org)できます。

・WebベースのツールneuPrint(neuprint.janelia.org)。指定されたニューロンの接続性、パートナー、接続強度、および形態を照会するために使用できます。

・コネクトームをコンパクトな表現にしたもの。元の生データよりも約100万倍小さいサイズです。storage.googleapis.comからconn_summary.tgzとしてダウンロード可能です。

・上記リソースの使用方法を説明したドキュメントとビデオチュートリアル(www.janelia.org)

・ヘミブレインコネクトームの作成と分析に関連する詳細を含むプレプリント(www.biorxiv.org)

次のステップ
研究者達は、ショウジョウバエ神経系をより深く理解を深めるために、ヘミブレインコネクトームの使用を開始しています。例えば、関心を集めている主要な脳回路は、感覚情報を統合し、ナビゲーション、運動制御、および睡眠に関与する「中心複合体(central complex)」です。

ハエ脳の中心複合体に存在する「リングニューロン」の詳細な外観。これは、ヘミブレインの再構築とコネクトームを使用して研究できる多くの神経回路の1つです。(ブラウザから操作可能なリングニューロンと楕円体(Ellipsoid body)はhemibrain-dot-neuroglancer-demo.appspot.comにあります)

熱心に研究されているもう1つの回路は、ショウジョウバエの脳の学習と記憶を司る部位である「キノコ体(mushroom body)」です。

謝辞
Tim Blakely, Laramie Leavitt, Peter Li, Larry Lindsey, Jeremy Maitin-Shepard(Google), Stuart Berg, Gary Huang, Bill Katz, Chris Ordish, Stephen Plaza, Pat Rivlin, Shin-ya Takemura(Googleのチームと緊密に協力したJaneliaの協力者)の中心的な貢献に感謝します。 また、ヘミブレインプロジェクトに関与したJaneliaやのその他の素晴らしい協力者の皆さんにも感謝します。

3.ハエの脳のニューロン接続を見える化(2/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Releasing the Drosophila Hemibrain Connectome — The Largest Synapse-Resolution Map of Brain Connectivity

2)hemibrain-dot-neuroglancer-demo.appspot.com
Fly brain hemibrain connectome
mushroom body
ring neurons
ellipsoid body

3)www.janelia.org
01/22/20 | Unveiling the Biggest and Most Detailed Map of the Fly Brain Yet
FlyEM / Hemibrain

4)neuprint.janelia.org
Analysis tools for connectomics

5)www.biorxiv.org
A Connectome of the Adult Drosophila Central Brain

6)storage.googleapis.com
conn_summary.tgz

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