人工知能を用いて小鳥の唄を調べる試み

  • 2018.07.26
  • AI
人工知能を用いて小鳥の唄を調べる試み

1.人工知能を用いて小鳥の唄を調べる試みまとめ

・人工知能を用いて写真から脳の構造を3D画像化する研究が進んでいる
・Flood-Filling Networksと言う新しい手法で小鳥の脳の全領域の3Dマップ化に成功
・3D画像を元に小鳥が唄を学習する仕組みなどの解明を進めている

2.コネクトミクスとは?

脳や目などの神経構造を3Dの地図にして理解を深めようとするコネクトームと言う手法があります。コネクトームの研究や成果をコネクトミクスと呼ぶのですが、以下は、ai.googleblog.comより「Improving Connectomics by an Order of Magnitude」の意訳で、人工知能を用いて唄う鳥の脳を3D地図化するコネクトミクスのお話です。

コネクトミクスの分野では、脳がどのように働くかをよりよく理解するために、脳のニューロンネットワークの構造を網羅的にマッピングすることを目指しています。

これを行うためには、ナノメートル単位の解像度で脳組織を3D画像化(一般的に電子顕微鏡を用います)し、得られた画像データを用いて脳のニューロン及び個々のシナプス結合を追跡する必要があります。

こうして得られるイメージ画像は非常に高解像度であるため、1ミリ立方メートルの脳組織からでも1,000テラバイト以上のデータを生成することができます!

更に画像の構造が非常に繊細で複雑であるとため、これらを用いて脳マッピングをする際の主要なボトルネックは、データ自体の取得ではなく、データの解釈の自動化になります。

本日、GoogleはMax Planck Institute of Neurobiologyの共同研究で、新しいタイプのリカレントニューラルネットワークがどのように脳データの解釈の自動化精度を向上させることができるかを示す論文、High-Precision Automated Reconstruction of Neurons with Flood-Filling Networksを発表しました。

この論文の公開版はbiorXiv(2017)から入手できます。

Flood-Filling Networksによる3D画像の境界認識

大量の電子顕微鏡データを用いてニューロンをトレースするのは、画像の境界を特定する(セグメント化)問題と見なす事ができます。

従来のアプローチは2ステップでこれを行っていました。
ステップ1:エッジ検出器や機械学習の予測機を用いてニューロンの境界を特定
ステップ2:境界線で区切られていない箇所はWatershedやグラフカットアルゴリズムでグループ化

2015年に、Googleはこれらの2つのステップを統合したリカレントニューラルネットワークに基づく新しい代替アプローチを試し始めました。このアルゴリズムは、特定のピクセル位置に配置され、次に、どのピクセルが初期配置位置と同じ器官の一部であるかを予測する反復畳み込みニューラルネットワークを使用して、領域を反復的に塗りつぶしていきます。

2015年以来、我々は大規模なコネクトミックスのデータセットにこの新しいアプローチを適用し、その正確さを厳密に定量化するために取り組んできました。

2D画像の領域を特定するFlood-Filling Networks。黄色の点は、現在の焦点です。アルゴリズムは、画像全体を繰り返し検査し、同器官と見なせる領域(青色)を拡張していきます。

ERL(expected run length:予想実行時間)による正確度の推測

Max Planc研究所のパートナーと協力して、ERL(expected run length:予想実行時間)と呼ぶ指標を考案しました。この指標は「人工知能に、脳の3D画像内のランダムなニューロン内のランダムな点を与えた時、人工知能が領域判定で何らかのミスをするまでどのくらいかかるか?」です。時間の長さではなく、失敗の間隔を測定します。

エンジニアにとって、ERLの魅力は、線形で物理的な経路の長さと、アルゴリズムの個々のミスの頻度とを関連付けて、それを直接的に計算できることです。生物学者にとって、ERLの特定の数値は、ニューロンの平均経路長などの生物学的特徴に関連し得るという魅力があります。

現在に至るまでの予想実行時間(青い線)の進歩。赤い線は「併合率」、つまり2つの別個のニューロンが単一のニューロンとして誤ってトレースされた頻度。
低い併合率を達成することは、手作業による識別や他のエラー修正を効率的に実行する事を可能にするために重要です。

ソングバードコネクトミクス

ERLを用いて電子顕微鏡を使って画像化した100万立方ミクロンのゼブラフィンチ(小鳥)の脳を測定したところ、私たちの新しいアプローチが以前のディープラーニングパイプラインより有効である事を発見しました。

我々は、下の動画のように、Flood-Filling Networksを使用して、ゼブラフィンチの脳の全てのニューロンを境界を特定しました。

ゼブラフィンチの脳の再構築。着色部分は、Flood-Filling Networksを使用して自動的に生成された個別のオブジェクトの境界内を示します。金の球は、以前に公開された手法で特定されたシナプスの位置を表します。

これらの自動化された結果と、残りのエラーを修正するために必要な少人数の人間の努力を組み合わせることにより、GoogleとMax Planck Institute of Neurobiologyの共同研究者は、今、「どのようにゼブラフィンチが歌を歌うのか?」「ゼブラフィンチはどうやって曲を学ぶのか?」などについて研究を続けています。

次のステップ

私たちは、Max Planck Institute of Neurobiologyや他の機関と協力し、シナプスのコネクトミクスを完全に自動化し、進行中の他のコネクトミクスのプロジェクトに貢献することを目的として、コネクトミクス再構成技術を改良し続けます。

コネクトミクス技術の開発における大規模な研究コミュニティを支援するために、私たちは再構成を理解し、改善するために開発したWebGLビジュアライゼーションソフトウェアと一緒に、flood-filling networkのTensorFlowコードをオープンソース化しました。

3.人工知能を用いて小鳥の唄を調べる試み関連リンク

1)ai.googleblog.com
Improving Connectomics by an Order of Magnitude

2)www.biorxiv.org
High-Precision Automated Reconstruction of Neurons with Flood-filling Networks

3)github.com
Flood-Filling Networks