量子プロセッサの極低温制御への道(1/2)

  • 2019.02.23
  • AI
量子プロセッサの極低温制御への道(1/2)

1.量子プロセッサの極低温制御への道(1/2)まとめ

・Googleの試算によれば第一世代の量子コンピュータはおよそ100万量子ビットを必要とする
・Googleが開発した最新の量子プロセッサであるBristleconeでさえも72量子ビットである
・Bristleconeを単純に13,889台集めても配線や廃熱の制限により量子コンピュータは実現できない

2.量子コンピュータの規模を拡大するために必要な事

以下、ai.googleblog.comより「On the Path to Cryogenic Control of Quantum Processors」の意訳です。元記事の投稿は2019年2月21日、Joseph BardinさんとErik Luceroさんによる投稿です。後編はこちら

計算の複雑さ、コスト、エネルギー消費量、または解決までの時間が原因で従来は不可能であった実用的な問題を解決できる量子コンピュータを構築することが、Google AI Quantumチームの長期目標です。

現在のしきい値は、誤り訂正機能を持つ第一世代量子コンピュータはおよそ100万物理量子ビットを必要とすることを示唆しています。これは、私達が開発した72量子ビットの量子プロセッサであるBristleconeよりも4桁以上も多い量子ビットです

量子ビットの制御性能を維持しながら、フォールトトレラントな量子コンピュータに必要な量子ビットの数を物理的に増やすことは、様々な要素が絡み合った刺激的な技術課題です。現在の制御アーキテクチャを単にコピーして貼り付けるだけでは実現できません。

重要な課題の1つは、量子ビット制御性能を高品質に維持しながら、1量子ビット当たりの入出力制御線の数を減らす事です。室温で動くアナログ制御電子機器を低温槽(低温試験装置)内の3ケルビン(-270度)の世界に移動することによってこれを達成します。

市販のCMOS技術を使用して製造された、私達のコントローラは3ケルビンで動作し、2ミリワット未満の電力を消費し、たった1mm x 1.6mmの大きさです。機能的には、これはシングル量子ビットゲート動作用の命令セットを提供します。デジタル回線を介して室温と3ケルビンの間で量子ビットのアナログ制御を可能にします。その一方、現在の室温の制御用電子機器と比較して、消費電力は約1000分の1です。


Googleの第一世代極低温CMOSシングル量子ビットコントローラ(中央を中心にズームしています)はパッケージ化されており、Googleの低温槽内に配置する準備ができています。コントローラの大きさは1mm x 1.6mmです。

72量子ビットを制御する現在の方法
サンタバーバラの研究室では、ギガヘルツ周波数のアナログ制御信号を各量子ビットに適用して量子ビット状態を操作し、量子ビットを絡み合わせ、計算結果を測定することによって、Bristleconeでプログラムを実行します。

これらの制御信号の形状と周波数をどの程度うまく定義するかは、計算の品質に直接影響を与えます。高品質の量子ビット制御信号を作るために、現在私達はサーバーラックにパッケージされたスマートフォンのために開発された技術を室温で利用しています。個々の同軸ケーブルはこれらの信号を各量子ビットに伝達します。各量子ビット自体は10ミリケルビンまで冷却された低温槽内に保持されています。

このアプローチはBristleconeのような量子ビットの数が少ない量子プロセッサには意味があります。現在のBristleconeは144個の固有の制御信号のために1キュービットあたり2本の制御線を必要とします。しかし、私達は私達のシステムを百万量子ビットレベルに規模拡大するためにはもっと統合されたアプローチが必要となる事に気づきました。


リサーチサイエンティストのAmit Vainsencherが、Google社内の最も高性能な低温槽内の1つでBristleconeの配線をチェックしています。青い同軸ケーブルは、カスタムアナログ制御電子機器(右側のサーバーラック)から量子プロセッサに接続されています。

上の画像のような私達の現在の配線状況では、室温から低温槽内の量子ビットに接続されている物理ワイヤの数と低温槽内の限りある冷却力が重要な制約になってしまいます。

これを軽減する1つの方法は、デジタルからアナログへの制御を量子プロセッサに物理的に近づけることです。現在、個々の量子ビットを制御するために使用されている私達の室温のデジタル-アナログ波形発生器は、量子ビットあたり約1ワットの廃熱を出します。

私達の低温槽内の冷却力は3ケルビン時には0.1ワットです。つまり、150台の波形発生器を低温槽内に詰め込んだ場合(ここでは低温槽内の限られた物理的スペースを気しないでください)、低温槽の冷却能力を1500倍圧倒し、それによって低温槽の温度が上昇し、量子ビットが使用できなくなってしまいます。

つまり、低温槽に既存のD/A制御を持ち込んだだけでは、何百万もの量子ビットを制御する事はできません。統合された低電力量子ビット制御ソリューションが必要であることは明らかです。

(量子プロセッサの極低温制御への道(2/2)に続きます)

3.量子プロセッサの極低温制御への道(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
On the Path to Cryogenic Control of Quantum Processors