2022年のAIの進歩は汎用人工知能に手が届くところまで来ているのか?

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1.2022年のAIの進歩は汎用人工知能に手が届くところまで来ているのか?まとめ

・汎用人工知能は存在しえない。人間レベルのAIでさえ汎用的ではなく分化している
・モデルの規模を拡大する事は有用だが人間レベルのAIを達成するための十分条件ではない
・人間レベルのAIに必要な基本的なコンセプトがまだ何かも全容が見えてきていない

2.AGIとHLAI

以下、Twitterよりディープラーニング三賢人の一人Yann LeCunさんのtweetのまとめです。元ツイートの投稿は2022年5月18日です。

直近、言葉による指示を解釈して驚くほど想像力豊かに画像を生成できるDALL·E 2やジョークを解説したり非常に難解なクイズに回答できるPaLM、一つの重みで完全に異なるタスクを実行できるモデルなど、特定分野では人間に勝るとも劣らない人工知能が続々登場しています。

DALL·E 2が生成した画像の例
1)夜の新宿でビールを飲み、ラーメンを食べるクマたちの写真(Photograph of bears drinking beer and eating ramen at night in Shinjuku.)

2)浮世絵「富士山に登りながらグーグルマップを使う女性」江戸時代(Ukiyo-e Painting of a Lady using Google Maps while climbing up Mount Fuji in Edo period)

3)レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたF-35の初期スケッチ(Leonardo da Vinci early sketches of the F-35)

PaLMが正答できたクイズの例
問題
マイケルはフランスにある有名な美術館で、その美術館で一番有名な絵を見ています。しかし、この絵を描いた画家は、マイケルが子供の頃に好きだった漫画のキャラクターを思い起こさせるだけでした。その漫画のキャラクターがいつも手にしている物の原産国はどこでしょうか?(Michael is at that really famous museum in France looking at its most famous painting. However, the artist who made this painting just makes Michal think of his favorite cartoon character from his childhood. what was the country of origin of the thing that the cartoon character usually holds in his hand?)

PaLMの回答
ルーヴル美術館で最も有名な絵画は「モナリザ」です。モナリザを描いた画家は、レオナルド・ダ・ヴィンチです。レオナルド・ダ・ヴィンチは、アニメ「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」の主人公の名前にもなっています。レオナルド・ダ・ヴィンチはイタリア出身です。レオナルド・ダ・ヴィンチが普段手にしているものはカタナです。カタナの原産地は日本です。答えは「日本」です。(The most famous painting in the Louvre is the Mona Lisa.The artist who made the Mona Lisa is Leonardo da Vinci.Leonardo da Vinci is also the name of the main character in the cartoon Teenage Mutant Ninja Turtles.Leonardo da Vinci is from Italy. The thing that Leonardo da Vinci usually holds in his hand is katana.The country of origin of the katana is Japan. The answer is “Japan”.)

これらの結果は、絵心や雑学において少なくとも平均的な人間の能力を完全に超えています。果たして、この勢いのまま何でもできるドラえもんやアトムのような人工知能(汎用人工知能)を実現できるのか?人工知能は神になれるのか?等々が改めて議論される事が増えてきており、そういった意見に対するご意見番からのコメント的なツイートです。

アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Shaouraav Shreshtha on Unsplash

最近のAIの進歩の意義に関して猛威を振るっている議論について、いくつかの明白な事実を(再び)述べておくことは有用かもしれません

汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)などというものは存在しません。人間レベルのAI(HLAI:Human Level AI)は有用な目標かもしれませんが、人間も分化しています。

人工知能研究コミュニティは、HLAIに向けて「いくらか」前進しています。

モデルの規模を拡大する事は有用です。それは必要ではありますが十分ではありません、なぜなら…

いくつかの基本的なコンセプトがまだ欠けています。

新しいコンセプトのいくつかは、おそらく「すぐそこ」にあります。(例:一般化された自己教師付き学習)

しかし、そのような新しい概念がいくつ必要なのかわかりません。私たちは最も明らかなものを見ているだけです。

ですから、HLAIに到達するまでにどれだけの時間がかかるかも予測できません。

モデルの規模を大きくすればいいというものでもないと本当に思います。人間や人間以外の赤ちゃんのように、機械が世界の仕組みを学習するような学習パラダイムは、まだありません。

ある人は、トークン化された入力のシーケンスで訓練された巨大なtransformerをスケールアップすれば十分だと考えるかもしれません。

また、「報酬関数を適切に設定できれば十分だ」と考える人もいます。

さらに、明示的なシンボル操作(symbol manipulation)が必要だと考える人もいます。

勾配に基づく学習が解決策の一部であると信じていない人もいます。

私は、機械が以下のことを可能にするような新しいコンセプトを見つける必要があると考えています
– 赤ちゃんのように観察することで、世界がどのように動いているかを学ぶ
– 行動を起こすことによって、どのように世界に影響を与えることができるかを予測することを学ぶ
– 抽象的な空間における長期的な予測を可能にする階層的な特徴表現を学ぶ
– 世界は完全に予測可能ではないという事実に適切に対処する
– エージェントが一連の行動の効果を予測し、推論と計画を立てることができるようにする
– 機械が階層的に計画を立て、複雑なタスクをサブタスクに分解できるようにする
– これらすべてが、勾配ベースの学習と互換性のある方法で行われる

解決策はすぐそこにあるわけではありません。

解決策はすぐには見つかりませんが、クリアしなければならない障害がいくつもあり、その方法もわかりません。

今回のような投稿を薄いツイートにしてしまうTwitter方式、嫌じゃないですか?

充実したコメント欄が必要な場合はFacebookにどうぞ

3.2022年のAIの進歩は汎用人工知能に手が届くところまで来ているのか?関連リンク

1)twitter.com
@ylecun

2)m.alpha.facebook.com
Yann LeCun

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