ReCirq:量子ハードウェアを使って化学反応シミュレーションを試みる(1/2)

調査研究

1.ReCirq:量子ハードウェアを使って化学反応シミュレーションを試みる(1/2)まとめ

・量子化学方程式の正確な解は現代のコンピュータでは計算量が多すぎて計算不可能
・量子コンピュータを使用すると複雑な化学反応プロセスで計算可能になるはず
・ノイズ対策を行って化学メカニズムを量子アルゴリズムで直接シミュレーションした

2.量子コンピュータを使って化学反応をシミュレーション

以下、ai.googleblog.comより「Scaling Up Fundamental Quantum Chemistry Simulations on Quantum Hardware」の意訳です。元記事の投稿は2020年8月27日、Nicholas RubinさんとCharles Neillさんによる投稿です。

量子コンピュータを使って化学シミュレーションの第一歩を踏み出したと言うお話で、うーん、もっともっと先の話だと思ってましたが、量子コンピュータを使った人工知能の大躍進って私達が生きている間に余裕で実現しそうな勢いになってきましたね。やや妖しげ論に感じていたレイ・カーツワイルのシンギュラリティ論なども段々と現実味を帯びてきてしまっているように感じます。

アイキャッチ画像はWikipediaよりSycamore MapleでクレジットはWillowさんの「Sycamore Maple (Acer pseudoplatanus) in the Schlosspark Wilhelmshöhe, Kassel, Hesse, Germany」

化学反応を支配する量子力学の法則を使って化学反応を正確に計算できれば、化学の新たなフロンティアを開拓し、様々な産業を改善することができます。

残念ながら、最小構成の式を除く全ての量子化学方程式の正確な解は、現代の古典的なコンピューターでは到達できません。量子変数と統計情報が指数関数的に数が増えてしまうため、計算不可能になってしまうのです。

ただし、量子コンピューターを使用すると、その真髄である固有の量子力学的特性を利用して、古典的なコンピューターでは扱いにくい計算を処理する事が可能になり、複雑な化学反応プロセスのシミュレーションを実現できます。

現在の量子コンピューターは、既にいくつかの計算タスクで計算上の利点を得る事が出来るほど十分強力です。しかし、これが現在の量子化学シミュレーション技術を加速するために使用できるかどうかは未解決の問題です。

本日、Science誌で発表される論文「Hartree-Fock on a Superconducting Qubit Quantum Computer」では、Google AI Quantumチームが、これまでに量子コンピューターで実行された最大の化学シミュレーションを実行することにより、この複雑な問題を探求しています。

私達の実験では、ノイズに強い変分量子固有値ソルバー(VQE:Variational Quantum Eigensolver)を使用して、化学メカニズムを量子アルゴリズムで直接シミュレーションしました。

実際の化学システムのハートリーフォック近似(Hartree-Fock approximation)を計算する事に焦点を当てましたが、以前に行われた量子コンピューターを使った化学計算の2倍の計算量であり、10倍の量子ゲート操作が含まれていました。

重要な事は、現在利用可能な量子コンピューター用に開発されているアルゴリズムが実験的予測に必要な精度を達成できる事を検証し、量子化学システムの現実的なシミュレーションを行うための道筋を明らかにすることです。更に、化学目的の量子計算用のオープンソースリポジトリであるOpenFermionを使い実験用のコードをgithubで公開しました。


低温槽(cryostat)に搭載されたGoogleのSycamoreプロセッサー
最近、量子超越性と量子コンピュータを使った最大の量子化学シミュレーションを実証するために使用されました。 (写真クレジット:Rocco Ceselin)

化学計算のためにエラー耐性が高い量子アルゴリズムを開発
量子コンピューターを使用して分子の基底状態エネルギーをシミュレートする方法はいくつかあります。

この作業では、量子アルゴリズムの「基礎となる土台(building block)」または基本回路(circuit primitive)に焦点を当て、VQEを介してそのパフォーマンスを完成させました。(詳細は後述)

古典的な設定では、この基本回路はHartree-Fockモデルと同等であり、最適な化学シミュレーション用に以前に開発したアルゴリズムの重要な基本回路です。この回路により、デバイスを検証するための指数関数的なシミュレーションコストを発生させることなく、規模拡大に集中できます。

従って、このコンポーネントの堅牢にしてエラーを軽減することは、「古典的な設定を超えた」量子コンピュータ時代に移行し、正確なシミュレーションをする際に不可欠です。

量子計算におけるエラーは、量子回路と環境との相互作用から発生し、誤った論理演算を引き起こします。ほんのわずかな温度変動でも量子エラーが発生する可能性があります。

短期的量子デバイスで化学をシミュレートするアルゴリズムは、追加の計算を抑えながらこれらのエラーに対処する必要があります。量子ビット数または追加の量子リソース(量子誤り訂正コードの実装など)が十分ではないからです。エラーに対処する最も一般的な方法はVQEを使用することです。(これはまた、実験にVQEを使用した理由でもあります)

本実験でも、数年前に開発したVQEを選択しました。VQEでは量子プロセッサをニューラルネットワークのように扱い、コスト関数を最小化することにより、量子回路のパラメータを最適化して、ノイズの多い量子ロジックに対処しようとします。

古典的なニューラルネットワークが最適化によってデータの不完全性を許容するのと同様に、VQEは量子回路パラメーターを動的に調整して、量子計算中に発生するエラーを考慮する事ができます。

3.ReCirq:量子ハードウェアを使って化学反応シミュレーションを試みる(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Scaling Up Fundamental Quantum Chemistry Simulations on Quantum Hardware

2)github.com
quantumlib / ReCirq

3)arxiv.org
Hartree-Fock on a superconducting qubit quantum computer

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