プログラム可能な超伝導プロセッサを使用した量子超越性の達成(1/3)

プログラム可能な超伝導プロセッサを使用した量子超越性の達成(1/3)

1.プログラム可能な超伝導プロセッサを使用した量子超越性の達成(1/3)まとめ

・Googleが新たに開発した54量子ビットプロセッサで量子超越性を達成したとの発表があった
・現世界最速のスパコンで10,000年かかると試算される計算を200秒で計算する事ができた
・量子回路が出力するビットの並びに頻出する並びをチェックする計算だが計算量に物言いがついている

2.量子超越性実験

以下、ai.googleblog.comより「Quantum Supremacy Using a Programmable Superconducting Processor」の意訳です。元記事は2019年10月23日、John MartinisさんとSergio Boixoさんによる投稿です。

物理学者達は30年以上にわたって量子コンピューティングの力について話してきましたが、常に疑問を投げかけられてきました。

量子コンピューターは何の役に立つのですか?投資する価値があるのですか?

このような大規模な取り組みでは、計画が正しい方向に進んでいるかどうかを示し、決断の根拠となる短期目標を策定する事は優れたエンジニアリング手法です。そこで、これらの質問に答えるための重要なマイルストーンとして以下の実験を考案しました。

量子超越性実験(quantum supremacy experiment)と呼ばれるこの実験は、量子システム工学に固有の多くの技術的課題を克服して、プログラムによる操作が可能で強力なシステムを作成するという方向性をチームに与えました。システム全体のパフォーマンスをテストするために、コンピューターを構成する要素が1つでも性能不十分な場合に失敗する、繊細なベンチマークテストを選択しました。

本日、Natureに投稿した論文「Quantum Supremacy Using a Programmable Superconducting Processor」で、この量子超越性実験の成果を公開しました。ベンチマークテストを実行するために、高速で忠実度の高い量子論理ゲートで構成される「Sycamore」という名前の新しい54量子ビットプロセッサを開発しました。私たちのマシンは200秒で目標となる計算を実行できました。実験の測定から、同様の計算を行うためには現在の世界最速のスーパーコンピューターで10,000年かかると判断しました。


左:極低温実験装置に搭載されたSycamoreプロセッサをアーティストが美しく演出した画像
右:Sycamoreプロセッサの写真

実験の内容
このベンチマークの仕組みを理解するために、量子コンピューティングを研究している熱心な新人さんが私達の研究室を訪れ、新しいプロセッサで量子アルゴリズムを実行することを想像してください。

新人さんは基本的なゲート操作を実行するコマンド群を使ってアルゴリズムを作成する事できます。各ゲートにはエラーが発生する可能性があるため、ゲート数を約1000程度に抑えた控えめな長さに制限することをお勧めします。

新人プログラマーにプログラム経験がないと仮定しても、本質的にゲートのランダムな並びのようなもの、つまりランダムな量子回路を作成できます。これは、量子コンピュータープログラムにおける「hello world」プログラム(訳注:新しいプログラム言語を学ぶ際に最初に学習する事が多いお約束なプログラム)と考えることができます。

現代の古典的なアルゴリズムが活用できるランダム回路は存在しないため、このような量子回路をエミュレートするには、通常、膨大な量の古典的なスーパーコンピューターの計算が必要です。

量子コンピューターを使ったランダムな量子回路の各実行は、0000101のようなビットの列を生成します。実験を何度も繰り返すと、量子干渉により一部のビット列が他のビット列よりもはるかに発生しやすくなります。しかし、古典的なコンピューターでこのランダムな量子回路上で発生する可能性が最も高いビット文字列を見つけることは、量子ビット数(幅)とゲートサイクル数(深さ)が増えるにつれて指数関数的に難しくなります。


量子超越性を実証するプロセス

 

訳注:今回の論文に対してはIBMから物言いが出ているようで、曰く、Googleが古典的コンピュータで10,000年かかると試算した計算はやり方によっては3日程度で計算可能であると言う指摘であるようです。そうすると、量子超越性の定義は「今後どのようなアルゴリズムが開発されてもどれだけ古典的コンピュータが今以上に発展しても絶対現実的に合理的な時間(この定義も曖昧ですが)で計算する事が出来ない」と言う事なのか、「古典的コンピュータで達成不能と思われる事が出来たらOK」なのか等の定義論になるような気もするのですが、原文をチェックできてないので誤解してるかもしれません。

 

3.プログラム可能な超伝導プロセッサを使用した量子超越性の達成(1/3)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Quantum Supremacy Using a Programmable Superconducting Processor

2)www.nature.com
Quantum supremacy using a programmable superconducting processor

3)arxiv.org
Quantum Supremacy Is Both Closer and Farther than It Appears