1.記憶は脳のどこに格納されているのか?まとめ
・記憶が脳の何処に保存されているかは完全には解明されていない
・プラナリアやアメフラシを用いた実験では記憶の移植に成功している
・シナプスの結合や脳内化学物質以外に記憶に関係する何かが存在する可能性
2.アメフラシを使った記憶の移植実験
つい先日、カリフォルニア大学の教授がアメフラシを使った実験で、記憶の移植に成功したと言うニュースがあった。
(1)アメフラシに不快な刺激を与え、一定時間防御姿勢を取るようになるまで繰り返す。通常は数秒間だけ防御姿勢を取るが、繰り返す事により長時間防御姿勢を取るようにアメフラシが学習する。
(2)学習済みアメフラシからリボ核酸(RNA)を抽出し、未学習のアメフラシに移植すると、未学習のアメフラシが刺激に対して長時間防御姿勢を取るようになった。
リボ核酸とは細胞のコアに存在する核酸の一種で、核酸には2種類がある。
1)DNA(デオキシリボ核酸)
遺伝情報を格納している
2)RNA(リボ核酸)
遺伝情報の転写、アミノ酸の収集、タンパク質の合成
RNA、つまり遺伝情報には関連していそうだが、脳とは直接関わり合いがない物質を移植したら、移植元と同じ行動をとるようになったとの事。
3.プラナリアを用いた記憶の再生実験
似たような実験を昔、読んだ事があったので探したみたが、同じくWiredの記事であった。
(1)光が苦手なプラナリアに光があたっている場所に餌がある事を何度も訓練させて覚えさせる
(2)学習済プラナリアを頭部分としっぽ部分にわけて切断する
(3)頭部分としっぽ部分からそれぞれ完全なプラナリアが再生する
(4)しっぽが元になったプラナリアは「光があたっている場所に餌がある」事を覚えていなかったが、たった一度の訓練であたかも記憶を思い出したかのように「光があたっている場所に餌がある」事を学習した。
4.人間の脳と記憶
人間の脳と記憶の関係は、様々な学説がある。私が今まで理解した限りでは
(1)海馬が記憶を司り、短期記憶と長期記憶を仕分ける
(2)短期記憶とは脳内の化学物質の状態変化である
(3)長期記憶とは脳内のシナプス同士の結合が物理的に変化する事である
英単語を覚えようとしても最初は2)のように短期記憶なので定着しないが、繰り返し復習すると1)で海馬が気づいてくれて、3)で脳の構成が物理的に変化する。物理的な変化なので時間はかかるが記憶は長く定着する。
であった。しかし、ではシナプスの結合部分に個別の記憶が格納されているかと言うと、どうもそうではなく「脳とは記憶そのものであり、脳全体で記憶をつかさどっている」と言う説もあるらしい。
わかるようなわらかないような説だが、人工知能的なアプローチで考えると納得感がある。例えば、囲碁の人工知能を構成する複雑なニューラルネットワークはニューラルネットワーク全体で動いており、「ニューラルネットワークのどのノードが最初の一手を判断しているのか?」などと切り分ける事はできないだろう。
また脳全体としての記憶に加え、アメフラシやプラナリアの事例のような「本能的な記憶」を司る何かが別に存在するのかもしれないな、と思う。
5.記憶は脳のどこに格納されているのか?関連リンク
1)wired.jp
記憶は脳の外にある? プラナリアの実験からわかったこと