1.第7回きめ細かい視覚分類ワークショップの開催(1/2)まとめ
・きめ細かい視覚分類(FGVC)とは、密接に関連する実体、例えば擬態関係にある蝶同士を区別する問題
・2011年に17%であった鳥に関するFGVCがディープラーニングにより2020年に90%の分類精度を達成
・今年も2020年6月19日にIEEEのCVPRカンファレンスと共に仮想空間でFGVC7コンペが開催予定
2.きめ細かい視覚分類とは?
以下、ai.googleblog.comより「Announcing the 7th Fine-Grained Visual Categorization Workshop」の意訳です。元記事の投稿は2020年5月20日、Christine Kaeser-ChenさんとSerge Belongieさんによる投稿です。
アイキャッチ画像は岩に擬態するStonefishこと、オニダルマオコゼ。クレジットはPhoto by David Clode on Unsplash。実は二匹いるのですがわかります?
2020年7月追記)野生動物をターゲットとしたiWildCamにおけるパフォーマンスを向上するContext R-CNNが発表されています。
きめ細かい視覚分類(FGVC:Fine-Grained Visual Categorization)とは、密接に関連する実体、例えば、非常に似ている蝶同士であるmonarch butterfly(学名:Danaus plexippus)とviceroy(学名:Limenitis archippus)の画像を区別するような問題を指します。
訳注
英語版Wikipediaより左がmonarchで右がviceroyです。
ちなみにmonarchは「君主」の意味で、和名でオオカバマダラ、渡りをする蝶として非常に人気のある蝶でネット上では飼育録をアップしている方もおられるようです。そしてviceroyは「(王の代理で他国を統治する)総督」の意味で、和名はカバイロイチモンジ、名前から関係が想像できるのですが、実はviceroyはmonarchを擬態する蝶として知られています。
monarchは鳥からすると非常に不味い蝶らしいんですね。なのでviceroyは「私も食べるとマズイですよぉ~」と「無害なのに害があるように見せるベイツ型擬態」をしていると長い間考えられていたのですが、実は1995年の研究によるとviceroyも食べると鳥的に相当不味いらしくて、「(毒キノコのように)毒を持つ生物が互いに似通った体色になるミューラー型擬態」であるという学説が有力になっているそうです。以上、英語版Wikipediaより蝶愛好家でも知らない人がいるレベルの無駄に深堀りした豆知識をお届けしました。
まぁ、結論として人工知能によるきめ細かい画像分類は、ちょっと配色が似てるとかそんなレベルではなく自然界で行われている命懸けの擬態をも分類対象に出来るレベルに達しつつあると言う事ですね。
2011年の最初のFGVCワークショップの時点では、きめ細かい画像分類用のデータセットはほとんど存在せず、利用可能なデータセット(例えば、そのワークショップで立ち上がった200種の鳥を含むCUB 200データセット)は、当時の主要な画像分類アルゴリズムにとって手ごわい課題となりました。
2020年まで時代を早送りすると、コンピュータービジョンの展望は驚くべき変化を遂げました。ディープラーニングベースの手法は、2011年に17%であったCUB 200の分類精度を90%に押し上げました。きめ細かい画像のデータセットも急増し、美術館、衣服小売業者、キャッサバ農場(訳注:タピオカの原料などにも使われる芋の一種)など、さまざまな組織からデータが提供されるようになりました。
この分野の更なる進展を支援するために、私達は第7回きめ細かい視覚分類ワークショップ(FGVC7)を後援し、共催することに興奮しています。
FGVC7は、2020年6月19日、IEEEのコンピュータービジョンとパターン認識に関するカンファレンス(CVPR:Computer Vision and Pattern Recognition)と共に、仮想空間での集いとして開催されます。
果樹の病気の予測からファッションの属性に至るまで、勢ぞろいした今年の世界クラスのきめ細かい課題をご紹介できることを嬉しく思います。ワークショップには、世界中のコンピュータービジョンの研究者を招待します。
CVPR 2020で開催されるFGVCワークショップは、野生生物を仕掛けカメラで撮影した写真、植物の病気、鳥、標本シート、衣服、美術館の工芸品など。細分化したカテゴリに焦点を当てています。
FGVCチャレンジが現実世界に与えた影響
FGVCの各ワークショップは、これまでにない困難なデータセットを使ってきめ細かい分類を推進することに加えて、研究者と実践者の間で新しいコラボレーションを促進する機会を提供します。FGVCワークショップで行われた取り組みの一部は、現実世界のユーザーの手に飛躍をもたらしました。
2018年のFGVCワークショップでは、デンマーク真菌学会から提供された1,500種類のキノコ種のデータを使用して、Fungi challenge(菌類分類コンペ)を主催しました。 コンテストが終了時には、チェコ工科大学と西ボヘミア大学のチームがスコアボードでトップになりました。
その後、菌類学者たちはチェコの研究者達をコペンハーゲンに招待し、さらなるコラボレーションを模索し、生物多様性における共同機械学習研究の新しい進め方を実地試験しました。
これにより、共同作成された会議論文、AndroidとiOS向けのキノコ認識アプリmushroom-identification_v1がTensorFlow Hubで公開され、オープンアクセスモデルとなりました。
キノコを認識するアプリSvampeatlas。FGVC 2018で開催されたFungi challengeあから生まれたデンマークとチェコのコラボレーションの結果です。基礎となるモデルがTF Hubで公開されました。画像はデンマーク菌学会の許可を得て使用しています。
2019年のiCassava Disease Challengeは、FGVCチームの取り組みが現実の世界で前進しているもう1つの例です。この課題では、ガーナのGoogle研究所の研究者が、マケレレ大学と国立作物資源研究所(NaCRRI:National Crops Resources Research Institute)と協力して、キャッサバがかかる事が多い5つの病気をラベル付きデータセットとして作成しました。
2019年のiCassavaチャレンジに登場するキャッサバの葉病の例
研究者達はウガンダの畑で地元の農家と協力して新しいモデルをテストしており、モデルはTFHubでまもなく公開されます。
3.第7回きめ細かい視覚分類ワークショップの開催(1/2)関連リンク
1)ai.googleblog.com
Announcing the 7th Fine-Grained Visual Categorization Workshop
2)tfhub.dev
models/mushroom-identification_v1
3)sites.google.com
FGVC7
コメント