1.MicrosoftがGPT-3を利用した最初の製品を発表まとめ
・ローコード開発ツールのMicrosoft Power Apps内でGPT-3の一部機能が使用可能に
・話言葉を計算式に変換可能になり6 月末までに北米全域で試用できるようになる見込み
・人間の開発者をAIに置き換えることではなく次の1億人の開発者を見つける事が目的
2.GPT-3をMicrosoft Power Appsに統合
以下、blogs.microsoft.comより「From conversation to code: Microsoft introduces its first product features powered by GPT-3」の意訳です。元記事の投稿は2021年5月25日、Jennifer Langstonさんによる投稿です。
Microsoftのクラウド製品であるAzure(アジュール)ですが、語源はフランス語で青系統の色である「紺碧」を意味するようなのですが、「青空」の意味もあるらしいので、おそらく雲(Cloud)に対抗する意味での青空(Azure)なのだろうなと思います。
アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Taylor Cowling on Unsplash
Microsoftは、開発者向けカンファレンスで、消費者向け製品の最初のGPT-3を使った機能を発表しました。GPT-3はOpenAIによって開発された強力な自然言語モデルであり、ユーザーはコンピュータープログラミングや数式の記述方法を知らなくてもアプリを構築できます。
GPT-3はMicrosoft Power Appsに統合されます。Microsoft Power Appsは、コーディングの経験がほとんどまたはまったくない全ての人々(いわゆる市民開発者、citizen developers)からプログラミングに関する深い専門知識を持つプロの開発者までを支援するローコード アプリ開発プラットフォームです。プログラムをほとんど書かずにビジネスの生産性やプロセスを改善するアプリケーションを構築する事を可能にします。
これには、非営利団体の寄付返礼品のレビューをするアプリや、コロナ禍の旅行計画管理アプリ、風力タービンを維持するために必要な残業を削減するアプリが含まれます。
例えば、eコマースアプリを作成している従業員は、新しい AI を活用した機能を使って「製品名が「KIDS」で始まる製品を見つける」等の会話形式でプログラミングの目標を設定できます。
微調整されたGPT-3 モデルは、この目標をMicrosoft Power Fx計算式に変換します。Microsoft Power Fxは、Power Platform用のオープン ソース プログラミング言語であり、本事例は「Filter(‘BC Orders’ Left(‘Product Name’, 4)=”Kids”)」のような計算式に変換されます。
この仕組みは、Microsoftが提供するクラウドであるAzure上で実行されます。Azure Machine Learning を利用して GPT-3 がどのように動作するかを示す最初の実装の1つであり、GPT-3の新しいマネージド エンドポイント機能を使った最初のサービスの1つです。企業規模で実際のビジネスニーズを解決できるとマイクロソフトは述べています。
GPT-3 を利用した新機能により、Microsoft Power Apps ユーザーはプログラミングの目標を話し言葉で記述し、それを自動的に Power Fx コードに変換することができます。
Power Fxは Microsoft Excel 上に構築されているため、従来のコーディングが必要なプログラミング言語よりもはるかに使いやすくなっていますが、データを扱う際には複雑な計算式を作成する必要があります。これらの計算式を作成方法を学ぶ事は、依然として簡単ではないため、今回の新機能はこれを改善するのに役立ちます。
「このような高度な AI モデルを使用することで、ローコード(low-code)開発ツールを更に多くのユーザーが利用できるようになり、ノーコード(no code)開発ツールと呼ばれるものにする事ができます」と、Microsoft のローコード アプリケーション プラットフォーム担当のCharles Lamannaは述べています。
OpenAIとのMicrosoftのパートナーシップは、AI のブレークスルーを加速することを目指しています
独立系のAI研究機関且つ開発会社であるOpenAIによって構築されたGPT-3 は、Azure 上でのみ実行される大規模な自然言語モデルです。
AIのブレークスルーを加速することを目的として活動しているOpenAIとのパートナーシップを通じて、Microsoftは、GPT-3 モデルの背後にあるコードのライセンスを取得しており、これにより、GPT-3テクノロジを自社の製品に直接統合することができます。
MicrosoftとOpenAIのパートナシップは非常に大規模なAIモデルが要求するハードウェア要件を満たすのに十分強力な Azure 上での最初のスーパーコンピューターの共同開発から、新しい AI テクノロジのテストと商品化まで多岐にわたっています。
「これにより、人々は文字通りこれまでできなかったやり方でデータの検索や探索を行うことができるようになります。それは魔法のような瞬間になるでしょう」と Lamannaは述べています。
従来の「市民開発者」はコンピューター プログラミング言語を知る必要はありませんでしたが、以前は次のような数式を作成するロジックを理解する必要がありました。
FirstN(Sort(Search(‘BC Orders’, “stroller”, “aib_productname”), ‘Purchase Date’, Descending), 10)
GPT-3 を利用した新しい機能を使用すると、「製品名にベビーカー(stroller )が含まれる 10 件の注文を表示し、購入日順に並べ替えて、最新のものを上に表示する」のような平易な言葉を入力して同じ結果が得られます。
これらの機能は、プログラマーに取って代わるものではありませんが、Power Fx プログラミング言語を学習している人々を支援し、必要な結果を得るために適切な計算式を選択するのに役立つように設計されています。これにより、より高度なアプリ構築の実現しやすさが劇的に拡大し、ローコード ツールが利用しやすくなり人々をより迅速にトレーニングできます。
開発者向けカンファレンスであるMicrosoft Buildで発表されたこの新機能は、6 月末までに北米全域で英語版が試用できるようになります。
「GPT-3 は、現在、市場で最も強力な自然言語処理モデルであるため、これを使用して顧客を支援できることは非常に大きなことです」と、Power Appsの製品マーケティング マネージャーであるBryony Wolfは述べています。「主流の消費者向け製品で、顧客が自然言語をコードに変換する機能を目にするのは、これが本当に初めてです。」
GPT-3 は、Microsoft が AI at Scale イニシアチブを通じて広く調査している新しいクラスのモデルの一部であり、公開されている何十億ページものテキストを調査することから学習します。言語、文法、知識の概念、文脈のニュアンスを深く吸収するため、同じモデルでテキストの生成を含む幅広いタスクを実行できます。
OpenAI は昨年、開発者がGPT-3の機能を探索できるAzureを利用したAPIをリリースしました。それ以来、詩やツイートの作成から記事の作成、電子メールの要約、雑多な質問への回答、平易な文章の作文からコンピュータープログラムの生成まで、あらゆることを行うためにGPT-3は使用されています。
このGPT-3の膨大な機能の発見は、自然言語学習で可能なことの限界を押し広げたと、マイクロソフトの Azure AI 担当であるEric Boydは述べています。しかし、このような大規模で複雑なモデルを、現実世界のビジネス ニーズを満たすために、費用対効果の高い方法で大規模に展開できるかどうかについては、まだ未解決の問題がありました。
「これをAzureと当社のメインストリーム製品に取り入れる方法を捜しています」とBoyd 氏は言います。「GPT-3でできることは他にもたくさんあると思います。これは、多くの新しい可能性に光を当てる基本的な新技術であり、今回の発表は一種の製品の中で最初の光となります」と彼は言いました。
Power BI、Power Automate、Power Virtual Agents などのビジネス生産性を向上させるローコード ツール開発にも取り組んでいるPower Platformチームは、話し言葉をプログラムに変換するGPT-3の機能が、ソフトウェア開発の民主化、またはさまざまな人々にとってより簡単にするというコア ミッションの推進に役立つことをすぐに理解しました。
目標は、プログラミングや計算式表現のより日常的な要素のいくつかをAIに手伝わせることで、ツールを使用できる人材層を拡大する事です。これにより、経験豊富な開発者が解放され、重要なビジネス ソリューション、または美しいインターフェイス構築など、より興味深い問題に集中できるようになります。
Microsoft は Power Fx を Power Platform 内の他のツールに組み込むことを計画しており、その時点で GPT-3 を利用した新しい自然言語機能がこれらの製品にも拡張されます。Power Platform チームは Azure AI チームと緊密に連携して、自然言語をPower Fx 計算式に変換できる Azure Machine Learning を使用して GPT-3 モデルを微調整しました。
Power Platform チームは、Azure Machine Learning managed endpointsを使用しました。これは、開発者向けカンファレンスで発表された新機能であり、基盤となるコンピューティング インフラストラクチャに複雑な設定をせずとも、Azureにあらゆるサイズのモデルを展開するのに役立ちます。
最初の社内利用例の1つとして、Microsoft製品チームは、チームが Power Appsユーザーに新しい機能を提供するためにGPT-3モデルを展開および管理するためにmanaged endpointsを使用しています。
また、チームはフィルターを追加して、GPT-3モデルが返す可能性のある返答から機密または不適切なコンテンツを検出できるようにしました。モデルは規定されたPower Fx 計算式を生成しているので、自由質問形式に対する回答を生成するよりも、意図しない結果が生じる可能性が低くなります、と Lamannaは述べています。
そして、検索エンジンに質問を入力し、検索結果をランキング表示するのと同じように、GPT-3は Power Fx 計算式に対して複数の提案を返します。アプリの作成者は、使用するのに最も適切な計算式を提案の中から選択できます。
「すべての場合において、処理を行う一連の流れの中には人間が関与しています」とLamannaは述べました。「今回の新機能は人間の開発者をAIに置き換えることではなく、世界中で次の1億人の開発者を見つけることです。」
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1)blogs.microsoft.com
From conversation to code: Microsoft introduces its first product features powered by GPT-3