強化学習を使って量子計算を改善(1/2)

  • 2019.10.07
  • AI
強化学習を使って量子計算を改善(1/2)

1.強化学習を使って量子計算を改善(1/2)まとめ

・量子コンピュータの構成要素である量子ビットは周囲の微量なエネルギーの影響を受ける
・更には制御用ツールによってもたらされる干渉などの影響も受けて誤差が拡大してしまう
・強化学習を使用して作り上げた新しい量子制御フレームワークでこれを解決する手法を提案

2.量子コンピューターの計算を阻害する要素

以下、ai.googleblog.comより「Improving Quantum Computation with Classical Machine Learning」の意訳です。元記事は2019年10月3日、Murphy Yuezhen NiuさんとSergio Boixoさんによる投稿です。

短期的な量子コンピューターを実現するための主要な課題の1つは、最も基本的な構成要素である量子ビット(Qubits)に関係しています。量子ビットは、近くに存在するエネルギーを運ぶものと相互作用してしまいます。

・迷子光子(stray photons:不要な電磁場)

・フォノン(phonons:量子デバイスの機械的な振動)

・量子欠陥(quantum defects:製造中に形成されるチップの基板の不規則性)

これらは、量子ビットの状態を予測不能にする可能性があります。

更に問題を複雑にしているのは、量子ビットを制御するために使用されるツールによってもたらされる多くの課題です。

量子ビットの操作と読み出しには、古典的な制御方法、つまり、量子ビットが埋め込まれている物理的な基板に結合された電磁場の形のアナログ信号を介して実行されます。 例えば、超伝導回路など。

これらの制御電子回路の欠陥(ホワイトノイズの発生)、外部放射源からの干渉、およびD/Aコンバーターの変動などは、量子回路の性能を低下させる更なる確率的な誤差をもたらします。

これらの実務な問題は、計算の忠実度に影響を与えるため、近未来に実用化されであろう量子を用いたデバイスの用途を制限します。

量子コンピューターの計算能力を向上させ、大規模な量子計算への道を開くには、これらの実験時に発生する問題を正確に捉える物理モデルを最初に構築する必要があります。

Nature Partner Journal (npj) Quantum Informationに掲載されている「Universal Quantum Control through Deep Reinforcement Learning」では、深層強化学習を使用して作り上げた新しい量子制御フレームワークを示します。

このフレームワークでは、量子制御最適化におけるさまざまな実務的な懸念を単一の制御用コスト関数でカプセル化できます。

私達のフレームワークは、平均量子論理ゲート誤差(quantum logic gate error)を標準的な確率的勾配降下法を使った手法よりも最大2桁低減します。

更にゲート合成を最適化(optimal gate synthesis counterparts)する事よりゲート時間の大幅な短縮も実現します。

私達の研究結果は、短期的量子デバイスを使用した、量子シミュレーション、量子化学、および量子優位性テストの幅広いアプリケーションに活躍の場を開きます。

この新しい量子制御パラダイムの新規性は、量子制御関数の開発と、深層強化学習に基づく効率的な最適化手法にかかっています。

包括的なコスト関数を開発するには、最初に現実的な量子制御プロセスの物理モデルを開発する必要があります。このモデルは、エラーの量を確実に予測できるものでなければなりません。

量子計算の精度にとって最も有害なエラーの1つはリーク(leakage)です。これは、計算中に失われる量子情報の量です。

このような情報リークは、通常、量子ビットの量子状態がより高いエネルギー状態に励起されるか、自然放出によってより低いエネルギー状態に減衰するときに発生します。

リークエラーは有用な量子情報を失うだけでなく、「量子性」を低下させ、最終的には量子コンピューターの性能を従来のコンピューターと同程度に低下させてしまいます。

量子計算中にリークした情報を正確に評価する一般的な方法は、最初に量子コンピューターで計算する計算全体をシミュレートすることです。

しかし、大規模な量子コンピューターを構築する目的の一つは、従来のコンピュータシステムでは実行不可能な計算を量子コンピュータが実現できるという事です。従来のコンピュータシステムでシミュレート可能な計算の範囲に留めていては量子コンピューターの利点が失われてしまいます。

改良された物理モデリングにより、私達の汎用コスト関数は、累積リークエラー、制御境界条件違反、総ゲート時間、およびゲート忠実度などを考慮した最適化が可能になりました。

 

3.強化学習を使って量子計算を改善(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Improving Quantum Computation with Classical Machine Learning

2)www.nature.com
Universal quantum control through deep reinforcement learning(PDF)