Googleを巨大にした友情(5/9)

入門/解説

1.Googleを巨大にした友情(5/9)まとめ

・ハワイ生まれのJeffは子供の頃からコンピュータに慣れ親しんでいた
・Sanjayは大学に入るまでコンピュータに触った事がなく兄の影で生きてきた
・人生ではJeffは外交的でSanjayは内向的だがプログラミングでは逆になる

2.JeffとSanjayの子供時代

以下、www.newyorker.comより「The Friendship That Made Google Huge」の意訳です。元記事の投稿は2018年12月3日、James Somersさんによる投稿です。Sanjay、話を読むだけでどんなプログラムを書く人なのか大体想像できますね、綺麗なプログラムを書く人っていますよね、カッコイイです。

Jeffは1968年7月にハワイで生まれました。彼の父親、Andyは熱帯病の研究者でした。彼の母親のVirginia Leeは医学人類学者で、六か国語を話す事ができました。趣味として、父と息子はIMSAI 8080コンピュータキットでプログラミング学びました。彼らはマシンに様々なパーツをハンダ付けしてアップグレードし、それらのあらゆる部分を学びました。

Jeffと彼の両親は頻繁に引っ越しました。13歳の時、彼は西ソマリアの難民キャンプを支援するために8年生の最後の3ヶ月をスキップしました。

その後、高校生の時、彼はEpi Infoと呼ばれる疫学者のためのデータ収集プログラムを書きました。それはフィールドワークのための標準的なツールとなり、そして結局、何十もの言語で何十万もの利用者に使われる事になりました。疾病管理予防センターによって運営されているウェブサイト「The Epi Info Story」には、Jeffの高校卒業時の写真が掲載されています。(訳注:下部にリンクを張っておきました)

Jeffとミネソタ大学の大学で出会ったHeidi(訳注:現在の奥さん)は、数年後にこのプログラムの重要性を知りました。「彼はこのことについて自慢しませんでした。」と彼女は述べました。「こちらから聞かなければ教えてくれませんでした。」彼らの最初のデートは女子バスケットボールの試合でした。Jeffはチアリーディング用のホリネズミの着ぐるみを着ていました。

Jeffの指導教官はコンパイラ、つまり人間が書いたプログラムをコンピュータが理解可能なマシン語に変換するソフトウェアの作成を専門としていました。

「セクシーさという点では、コンパイラは退屈の極みです。」とAlan Eustaceは述べました。「その一方で、コンパイラを学習する事はあなたを『機械の非常に近くに』連れて行きます。」

Jeffと言う人を説明する際に、Sanjayは自分のこめかみのあたりで人差し指をグルグルと回しました。「あなたがプログラムを書いている間に、Jeffはそのプログラムをモデル化しています。そのプログラムのパフォーマンスはどのようになるだろうか?彼は滅多に起こらないような例外的なケースも含め、ほぼ半自動的に考えているのです」

Sanjay は、17歳のときにコーネル大学に行くまで、コンピューターに触った事がありませんでした。1966年にインディアナ州ウェストラファイエットで生まれましたが、インド北部の工業都市、コタで育ちました。彼の父親、Mahipalは植物学の教授でした。 彼の母親、Shantaは、Sanjayと彼の2人の年上の兄弟の世話をしました。

彼らは本好きな家族でした。彼の叔父のAshok Mehtaは、Frederick Forsythによる「The Day of the Jackal(訳注:大統領暗殺の攻防を描いたサスペンス小説)の本を買った時の事を覚えています。その装丁はひどく摩耗していました。Ghemawat家の子供たちを見ていると、彼らは本を同時に読むためにバラバラにし、読み終わったら部分を順番に回していました。

Sanjayの兄弟、Pankajは、ハーバードビジネススクールで史上最年少の教員になりました。現在はレナード・N・スターン・スクール(ニューヨーク大学のMBA)の教授です。PankajはSanjayと同じ学校に行き、万能型の教養人として高く評価されていました。

「私は兄の影で生きてきました」とSanjayは言いました。大人びた態度で、彼は才能をひけらかす事を控えていました。2016年に彼がアメリカ芸術科学アカデミー(訳注:米国最古の学会の一つで、入会=大変な名誉です)に入会したとき、彼は両親にその事を告げなかったので、彼らの隣人が両親に知らせました。

M.I.Tの大学院では、Sanjayは固く結びついた友人達とグループになりました。それでも、彼はデートをしたことはなく、今でも「非常に、非常にまれに」しか行いません。彼は、家族を持たないことを決心したのではなく、そのようなってしまっただけだと言います。彼の親しい友人は彼にそれについて気にしないことを学びました、そして、彼の両親はずっと前に彼らの息子が独身を押し通している事を受け入れました。

彼は個人的な事をほとんど話さないため、Google社内でもミステリアスな雰囲気を漂わせています。彼は静かだが深遠で、珍しい明快さを持つ人である事で知られています。

彼の机の上には、几帳面にリストと図で一杯になったミード社のコンポジション・ブック(訳注:Mead composition notebooks、日本で言えばジャポニカ学習帳クラスの超有名で特に大学生に人気のあるノート)が過去20年分近く積み重なっています。

彼はペンでそして筆記体で書いています。彼はめったに古いノートを参照しませんが、考えるために書いています。M.I.T.で、彼の大学院顧問は、複雑なプログラムの設計方法を特に研究した有力なコンピュータ科学者であるバーバラ・リスコフ(訳注:オブジェクト指向プログラミングに繋がった研究を評価されて2008年にヒントンさんがこの前貰ったチューリング賞を受賞している女性です)でした。彼女の見解では、最高のコードは優れた文章のようなものです。それは注意深く実現された構造を必要とし、全ての単語は言葉通りに動作しなければなりません。

このようにプログラミングするには、読者と共感する必要があります。それはまた、コードを目的を達成するための手段としてではなく、それ自体を成果物として見る事を意味します。

私は、彼が一番得意とするのはシステムの設計と思います。Craig Silversteinは言いました。「あなたがSanjayが書いた一連のコードを美術品のようにただ閲覧するのであれば、均整の取れた彫刻が美しいのと同様にそれは美しいです。」

Googleでは、Jeffの方がSanjayよりはるかによく知られています。チャック・ノリスについてのジョーク集をモデルにしたJeff Deanのジョーク集がある程です。

「Jeff Deanの履歴書には、彼がやった事がない事がリストにされています。その方が短いためです。」

(訳注:チャック・ノリスはアメリカの俳優さんですが、出演作で超絶スーパーヒーロー役が多かったので、何でもかんでも可能にする超人設定でのジョークが沢山作られている人です。例:「チャック・ノリスは無限大を2回数えた」「チャック・ノリスはゼロで割り算をする事が出来る」)

しかし、両者を知っている人にとって、SanjayはJeffと同レベルの才能です。「Jeffは、誰も思いついていない新しいアイデアや試作品を思い付くのが得意です」長年の同僚であるWilson Hsiehは述べました。「人生では、Jeffはより外向的で、サンジェイはより内向的です。プログラミングではその逆になります。Jeffのプログラミングは見事です。彼はすぐに驚くべきアイデアの概要を作成する事ができます。しかし、それは速度優先で迅速に行われるため、プログラムの読み手を置いてけぼりにする可能性があります。Sanjayのコードは社交的です。」

Silversteinは言いました。「ルーズすぎるプログラムを書く人達がいます。そのような人達が書くプログラムでは1画面に表示できるコードにほとんど情報がありません。 何が起こっているのかを把握するためには、常に前後にスクロールする必要があります。その一方で、あまりにもごちゃごちゃと密度の高いコードを書く人達もいます。一目見て、うわぁ、これは読みたくないな、と思うようなコードです。」

「Sanjayはどのようにして実現しているのかこの中間なのです。彼のプログラムを見ると、あなたは、OK、私はこれを理解する事ができました、と感じるでしょう。そしてなお、あなたは単一の画面から更に沢山の情報を得る事ができます。」

Silversteinは続けます。「Sanjayの書いたプログラムに新しい機能を追加したいと思った時はいつでも、機能を追加しやすいような仕組みがあらかじめ用意されている事に気付きます。 私はサリエリ(訳注:映画アマデウスでモーツァルトの輝くような才能に気付き嫉妬する音楽家として描かれた人です)のように感じます。 私はその偉大さを理解しています。 しかし、それがどのように実現されているのかわからないのです。」

 

3.Googleを巨大にした友情(5/9)関連リンク

1)www.newyorker.com
The Friendship That Made Google Huge

2)www.cdc.gov
The Epi Info Story

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