プログラム可能な超伝導プロセッサを使用した量子超越性の達成(3/3)

入門/解説

1.プログラム可能な超伝導プロセッサを使用した量子超越性の達成(3/3)まとめ

・未知の新しい現象によって量子コンピュータの相対通りに動作しなくなるリスクも検証した
・Sycamore量子コンピューターは完全にプログラム可能であるためアプリケーションの開発も進んでいる
・広く多くの企業が量子コンピュータを利用できるようにする事と信頼性の向上が次の目標

2.量子コンピュータの活用

以下、ai.googleblog.comより「Quantum Supremacy Using a Programmable Superconducting Processor」の意訳です。元記事は2019年10月23日、John MartinisさんとSergio Boixoさんによる投稿です。

量子物理学による検証
量子コンピューターの将来の有用性を確保するために、量子力学上の根本的な障害がないことを検証する必要もありました。

物理学には、実験を通じて理論の限界をテストする長い歴史があります。なぜなら、従来と非常に異なる物理的パラメーターによって特徴付けられる新しい研究領域を探求し始めると、未知の新しい現象がしばしば現れるからです。

以前の実験では、量子力学は約1000の状態空間次元(state-space dimension)まで期待どおりに機能することが示されていました。ここでは、このテストを10兆のサイズに拡張し、全てが期待どおりに機能することを確認しました。

また、基本的な量子理論も検証しました。2量子ビットゲートのエラーを測定し、これが量子優位回路の完全なベンチマーク結果を正確に予測しているか否かを確かめる事でこれを行いました。

これは、量子コンピューターのパフォーマンスを低下させる可能性のある予期しない物理現象がないことを示しています。従って私達の実験は、より複雑な量子コンピューターが理論に従って機能するという証拠を提供し、規模拡大の努力を続ける事への自信に繋がりました。

アプリケーション
Sycamore量子コンピューターは完全にプログラム可能であり、汎用量子アルゴリズムを実行できます。去年の春に量子優位性の結果を達成して以来、私たちのチームは、量子物理シミュレーションや量子化学などの短期的なアプリケーションや、生成的機械学習の他の領域の新しいアプリケーションなどに取り組んでいます。

また、コンピューターサイエンスアプリケーション向けの最初の広く有用な量子アルゴリズムである、証明可能な量子ランダム性(certifiable quantum randomness)があります。

ランダム性はコンピューターサイエンスの重要なリソースであり、特に量子コンピューターが算出したランダム数である事を自己チェック(認証)できる場合は、量子ランダム性はゴールドスタンダードとなります。このアルゴリズムのテストは進行中です。今後数か月で、認証可能な乱数を提供できるプロトタイプを実装する予定です。

次に目指すものは?
私達のチームには、量子コンピューティングで価値のあるアプリケーションを見出すという2つの主な目的があります。まず、将来的には、共同研究者や学術研究者だけでなく、今日のNISQプロセッサのアルゴリズムの開発やアプリケーションの検索に関心のある企業が、最高クラスのプロセッサを利用できるようにします。
創造的な研究者は、革新のための最も重要なリソースです。新しい計算リソースが実現したので、有用な何かを発明しようとする、より多くの研究者がこの分野に参入することを期待しています。

第二に、フォールトトレラントな、耐久性の高い量子コンピューターを可能な限り迅速に構築するために、チームとテクノロジーに投資しています。このようなデバイスは、多くの価値あるアプリケーションを約束します。

例えば、自動車や航空機用の軽量バッテリー、より効率的に肥料を生産できる新しい触媒(今日では世界の二酸化炭素排出量の2%以上を占める生成プロセス)、より効果的な医薬品などの新しい材料の設計に役立つ量子コンピューティングを想定できます。

必要な計算機能を実現するには、長年続けてきた困難なエンジニアリングと科学的作業が依然として必要です。しかし、私達は今、明確に道を見つけており、前進することを切望しています。

 

謝辞
協力者と貢献者に感謝します。カリフォルニア大学サンタバーバラ校、NASAエイムズ研究センター、オークリッジ国立研究所、ユーリヒ総合研究機構(FZJ)、およびその他の支援を行ってくれた多くの皆さん。

3.プログラム可能な超伝導プロセッサを使用した量子超越性の達成(3/3)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Quantum Supremacy Using a Programmable Superconducting Processor

2)www.nature.com
Quantum supremacy using a programmable superconducting processor

3)arxiv.org
Quantum Supremacy Is Both Closer and Farther than It Appears

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