Gen:新しいAI用プログラミング言語はディープラーニングを超える(2/2)

１．Gen:新しいAI用プログラミング言語はディープラーニングを超える(2/2)まとめ

・確率的プログラミングは、AIの新たなフロンティアとして有望視されている分野の1つ
・Genは確率的プラグラムの使用を容易にするため、問題に対して原理的なアプローチが可能になる
・GenはAI分野でIT分野における汎用的プログラミング言語の役割を担おうとしている

２．Genの評価

以下、news.mit.eduより「New AI programming language goes beyond deep learning」の意訳です。元記事の投稿は2019年6月26日、Rob Mathesonさんによる投稿です。

確率的AIでは、推論アルゴリズムはデータを更新し、更新されたデータに基づいて確率を再計算する事を繰り返して予測を行います。これを行う事で最終的に、見た事がないデータであっても予測できるモデルが作成されます。

初期の確率論的プログラミングシステムであるChurchで使用されていた概念を基に、研究者たちはJulia(MITで開発された汎用プログラミング言語)にいくつかのカスタムモデリング言語を取り入れました。

各モデリング言語は、さまざまな種類のAIモデリングアプローチに合わせて最適化されているため、より汎用的です。Genはまた、最適化、変分推論、特定の確率論的方法、およびディープラーニングなどの様々な手法を使用可能であり、推論タスクのための高レベルのインフラストラクチャーを提供します。これに加えて、研究者達は実装が効率的に実行されるようにするためにいくつかの調整を加えています。

研究室を飛び出して
MIT外のユーザーは既に、AI研究にGenを活用する方法を見つけています。例えば、IntelはMITと共同で、ロボティクスや拡張現実システムで使用されている奥行深度センサー搭載カメラから3次元姿勢推定をするためにGenを使用しています。MIT Lincoln研究所はまた、人道的救済および災害対応に使用できる空中ロボット制御用Genのアプリケーションの共同開発も行っています。

GenはMIT Quest for Intelligenceの下で野心的なAIプロジェクトで使用され始めています。

例えば、Genは、米国国防総省の国防高等研究計画局の進行中のMachine Common Senseプロジェクトと共に、MIT-IBM Watson AI Labプロジェクトの中心的存在です。これは人間ならば生後18ヶ月の子供でも認識できる「(物理)世界のルール」をモデル化することを目的としています。Mansinghkaはこのプロジェクトの主任研究者の一人です。

「Genを使用すれば、研究者達は様々なAI技術を、今までにないくらい簡単に統合できます」Mansinghkaは述べました。「人々が発見した事が簡単に実現可能になる新たな時代は、興味深い時代になるでしょう。」

UberのAIのチーフサイエンティスト兼バイスプレジデントであり、ケンブリッジ大学の教授で、この研究には関与していなかったZoubin Ghahramaniは以下のように述べています。「確率的プログラミングは、ディープラーニングの到来以来、AIの最前線で最も有望な分野の1つです。Genは、この分野における著しい進歩を表し、確率論的推論に基づくAIシステムのスケーラブルで実用的な実装に貢献しています。」

GoogleのリサーチディレクターのPeter Norvigも、この研究に関与していませんでしたが、Genを賞賛しています。「Genは問題解決者が確率的計画法を使うことを可能にします、そしてそれ故に問題へのより原理的なアプローチが可能になります。そして、確率的プログラミングシステムの設計者による選択によって制限される事もないのです。」と彼は言います。「汎用プログラミング言語は、・・・プログラマーにとって作業を容易にするだけでなく、・・・プログラマーが新しい問題を効率的に解決するために従来になかった新しいプログラムを作成する事も可能にしたため成功しました。Genは確率論的プログラミングに対して同様な事をします。」

Genのソースコードは一般に公開されており、Strange LoopやJuliaConなどの次のオープンソース開発者カンファレンスで発表されています。この作業は、一部DARPAによってサポートされています。