1.ディープラーニングを用いて前立腺癌による前立腺摘出の必要性の診断を改善する(1/2)まとめ
・前立腺癌は転移する危険性が高いタイプの腫瘍と低いタイプの腫瘍が存在する
・転移の可能性が高いタイプの腫瘍は前立腺摘出の必要があるが腫瘍の種別は目視で判定している
・ディープラーニングを利用して目視による判定(グリーソンスコア)を改善できないか探った
2.ディープラーニングを用いた前立腺癌の診断
以下、ai.googleblog.comより「Improved Grading of Prostate Cancer Using Deep Learning」の意訳です。元記事は2018年11月16日、Martin Stumpeさんによる投稿です。後編に続きます。
米国の男性の約9人に1人が前立腺癌を発症しており、前立腺癌は男性の最も一般的な癌になっています。
訳注:国立がん研究センターの2016年データによれば、日本ではまだ前立腺癌は癌ランキングのトップ5に入っていませんが、70歳代以上になると肺癌と前立腺癌の割合が増加する事から社会全体の高齢化に伴い前立腺癌の割合は今後急速に増えると予想されています。
一般的であるにもかかわらず、前立腺癌はしばしば非侵襲性(外部にどんどん転移しない事)であり、前立腺の外科的切除(前立腺摘出)を決断するべき程に危険な癌なのか、または放射線療法などの治療で十分なのか、決断するのが困難な癌となっています。
前立腺癌患者が抱えるリスクレベルの識別に役立つ重要な指標はグリーソンスコアです。顕微鏡を用いて癌をスライド上で観察し、正常な前立腺にどのくらい類似しているかに基づいて癌細胞を分類してスコアを付けます。しかし、グリーソンスコアの臨床的重要性は広く認識されているにもかかわらず、前立腺癌のグリーソンスコアを採点する事は複雑で主観的であり、病理学者間でも意見の不一致が30~53%程度発生する事が報告されています。さらに、特に米国外では、前立腺癌に対する世界的な需要を満たすのに十分な人数の訓練された専門の病理学者は存在しません。
最近のガイドラインでは、病理学者が最終報告書にグリーソンパターンが異なる腫瘍の割合を報告することが推奨されています。これは作業量を増やますし、依然として病理学者の主観的な診断です。これらの状況は全体として、転移性乳癌の検出を改善する可能性を示すために、Googleや他社がディープラーニングを使用したのと同様に、ディープラーニングを使用して前立腺癌の診断と臨床管理を改善する機会がある事を示唆しています。
論文「Development and Validation of a Deep Learning Algorithm for Improving Gleason Scoring of Prostate Cancer」で私達は、ディープラーニングを用いて前立腺切除の必要性有無の判断に使われるグリーソングレーディングの精度と客観性を改善できるかどうかを探りました。
私達は実際の病理学者の作業手順を参考にしてディープラーニングシステムを開発しました。最初に患部が写ったスライドの各領域をグリーソンパターンに分類します。より低いパターンは正常な前立腺により近い腫瘍である事を意味しています。その後、ディープラーニングシステムは、2つの最も一般的なグリーソンパターンに基づいてグリーソングレードを決定します。グレード群が高ければ高いほど、さらなる癌進行のリスクが高くなり、患者は前立腺摘出処置から恩恵を受ける可能性が高くなります。
前立腺癌の等級付けのためにグリーソンシステムで使用されるグリーソンパターンの視覚的例。
個々の癌患部には、癌が正常な前立腺組織にどれほど類似しているかに基づいてグリーソンパターンが割り当てられます。低い数値はよりよく分化した正常に近い腫瘍に対応します。画像:米国国立衛生研究所
(ディープラーニングを用いて前立腺癌による前立腺摘出の必要性の診断を改善する(2/2)に続きます)
3.ディープラーニングを用いて前立腺癌による前立腺摘出の必要性の診断を改善する(1/2)関連リンク
1)ai.googleblog.com
Improved Grading of Prostate Cancer Using Deep Learning
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