HydroNets:最近の洪水予測の改善の背後にある技術(2/3)

入門/解説

1.HydroNets:洪水予測の最近の改善の背後にある技術(2/3)まとめ

・形態学的モデルと呼んでいる浸水モデリングへの新しいアプローチで既存の課題を解決
・データ不足地域で従来の物理学ベースのモデルが影響を受けやすい様々なエラーを修正
・精度を3%向上させ、広範囲予測を改善し、手動作業を減らし迅速な開発が可能となった

2.HydroNetsとは?

以下、ai.googleblog.comより「The Technology Behind our Recent Improvements in Flood Forecasting」の意訳です。元記事の投稿は2020年9月3日、Sella Nevoさんによる投稿です。

アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Andreas Eriksson on Unsplas

大規模な浸水モデリングには、3つの大きな課題があります。

関連する地域が広く、そのよう地域を予測するモデルには高解像度が必要になるため、必然的に計算が非常に複雑になります。更に、ほとんどの広域標高マップには、正確なモデリングに重要な河床の水深が含まれていません。最後に、ゲージの測定エラー、標高マップ内に欠落している特徴物など、既存データのエラーを理解し、修正する必要があります。

このような問題を修正するには、追加で高品質データを収集するか、エラーのあるデータを手動で修正する必要があります。

私達が形態学的モデル(morphological model)と呼んでいる浸水モデリングへの新しいアプローチは、いくつかの革新的なトリックを使用してこれらの問題に対処します。水の流れの複雑な挙動をリアルタイムでモデル化する代わりに、標高マップの形態を変形して計算します。これにより、流体静力システム(hydrostatic systems、静止状態の流体および流体内の圧力)を説明するような単純な物理原理を使用して浸水をシミュレーションできます。

まず、純粋なMLモデル(物理学ベースの情報を取り込んでいない)をトレーニングして、ゲージの測定値から1次元の川の統計情報を推定します。

モデルは、川の特定のポイント(量水標)の水位を入力として受け取り、川の全てのポイントの水位である川の統計情報を出力します。

私達はゲージが増加すると、水位は単調に増加する、つまり、川の他の地点の水位も増加すると仮定します。また、川の絶対標高は下流で減少すると仮定します。(つまり、川は下り坂を流れます)。

次に、この学習済みモデルといくつかの経験則を用いて標高マップを編集し、その地域が氾濫した場合に存在するであろう圧力勾配をほぼ「相殺」します。

この新しい総合標高マップは、単純な洪水氾濫アルゴリズムを使用して洪水の挙動をモデル化するための土台を提供します。最後に、結果の浸水マップを衛星ベースの浸水範囲と元の量水標による測定値と照合します。

このアプローチは、古典的な物理学ベースのモデルが実装している現実世界の物理制約の一部を放棄しますが、既存の方法が現在苦労しているデータ不足地域では、その柔軟性により、モデルは正しい水深を自動的に学習し、物理学ベースのモデルが影響を受けやすい様々なエラーを修正できます。

この形態学的モデルは、精度を3%向上させます。これにより、広範囲の予測を大幅に改善できると同時に、手動のモデリングと修正の必要性を減らすことで、より迅速なモデル開発が可能になります。

アラートのターゲティング
多くの人々は、形態学的氾濫モデルがカバーできていないエリアに住んでおり、正確な洪水予測が利用できるようになる事は依然として喫緊の課題です。

これらの人々にも利用可能にし、洪水予測モデルの影響を高めるために、多様な公開データから直接予測をするMLベースのアプローチを設計しました。このモデルは世界中で一般に公開されているほぼ全てのデータ、例えば、量水標の測定値、公共衛星画像、低解像度の標高マップなどをほぼ排他的に使用し、浸水マップをリアルタイムで直接推論します。


リアルタイムな測定値から浸水を予測する直接MLアプローチ

3.HydroNets:洪水予測の最近の改善の背後にある技術(2/3)まとめ

1)ai.googleblog.com
The Technology Behind our Recent Improvements in Flood Forecasting

2)blog.google
A big step for flood forecasts in India and Bangladesh

3)ai4earthscience.github.io
HYDRONETS: LEVERAGING RIVER STRUCTURE FOR HYDROLOGIC MODELING(PDF)

4)hess.copernicus.org
Towards learning universal, regional, and local hydrological behaviors via machine learning applied to large-sample datasets

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