気候変動に対してAIは何が出来るのか?(4/4)

  • 2019.09.08
  • AI
気候変動に対してAIは何が出来るのか?(4/4)

1.気候変動に対してAIは何が出来るのか?(4/4)まとめ

・機械学習にできる作業の多くは測定や警報に関連している作業
・機械学習は可能性を示したり物事を安価にする事で意思決定を支援可能
・しかし集団として気候変動に立ち向かう最終的な意思決定を下すのは人間

2.AIが気候変動に対して出来る事

以下、www.eye-on.aiより「Episode 20 – John Platt」の書き起こし文の意訳です。元WebサイトはPodCast、つまり音声による配信をしているページです。

クレイグ
私達が融合炉の工学上の問題を解決し、突然無限のゼロ炭素エネルギーを手に入れたと想像しましょう。そうなったら、他の努力、つまり産業廃熱、化石燃料の使用、または農地の利用方法などを変更せずとも摂氏2度のしきい値を回避するのに十分でしょうか?

ジョン
まぁ、それはどのくらい安価で実現できるかによります。場合によるのです。まだ本当に初期段階なので、私達はまだそれを知りません。コストはQと呼ばれる値に依存しているため、融合炉がどれほど安価になるかはわかりません。Qは、投入したエネルギー量に対する放出されるエネルギーの比率です。

Qが非常に高い場合、コストは非常に安価になります。しかし、それが高くなければ、そうはなりません。ですから、はい、まだ土地利用について心配する必要があります。また、融合炉を動力源とする飛行機は作られないでしょう。融合炉は大いに役立つでしょうが、しかし、他の努力が無用になるわけではありません。

クレイグ
それでは最終的な解決策ではないのですね。

ジョン
2度の閾値回避の問題を解決できれば、それは素晴らしいことで、世界は繁栄するでしょう。 私は取り組むべき素晴らしい問題だと思います。あなたが言ったように、特効薬はありません。 融合炉さえも特効薬ではありません。

クレイグ
了解しました。このインタビューのポイントは、ポッドキャストを通じて機械学習エンジニアやAI研究者、そして人工知能に興味を持つ人々に伝える事です。

この問題に取り組むために、機械学習を適用できる多くの様々な方法があります。あなたが言ったように、それは単にゼロ炭素エネルギーの解決策や融合炉に関する事だけではありません。

世界中の湿地から排出されるメタンガスの排出量をマッピングし、どの期間にどのくらいのメタンが放出されているかを把握し、そのデータを取得したら、何らかの緩和戦略を考え出すことができるでしょう。

機械学習が気候変動の解決に大きなインパクトを与える事柄にはどのようなものがありますか?

ジョン
えぇ、私はそれをまとめる手伝をしていました。私達はあなたが聞いてくれたワークショップと並行して、論文を書いたのです。arxiv.orgに…

クレイグ
まだそれを読んでいません。

ジョン
わかりました。それは非常に長い論文です。確か、700の文献を参考文献としています。この論文は非常に長く、多くの著者が多大な時間を費やした事を指摘しておきたいと思います。私は、少しの編集作業で彼らを助けました。

しかし、そう、これは多数のポストドクターや大学院生による研究です。ですから、私がやろうとしていることは、機械学習コミュニティの人々に対してこの論文を見る事をお勧めしたいのです。

その論文を見て、インスピレーションを与えてくれるかどうか確かめてください。この論文は網羅的なものではないので、もっとインスピレーションを与えてくれるか、もしくは人々がある種のパターンを目にする事を願っています。

そう、あなたは正しいです。機械学習にできる事の多くは測定作業に関連しているということです。Andrew Ngがメタンの排出測定に使用する事が出来ると話をしていたようにです。

その会議で、論文の共著者の1人による別の興味深い講演「Truck Traffic Monitoring with Satellite Images」がありました。彼女の講演内容は、トラックの交通の流れがどうなっているのかわからないので、機械学習を使用して衛星画像からトラックの流れをモニターして見てみましょう、と言う事です。

ですから、非常に複雑な地球物理学と経済システムの関係を理解しようとする用途だけでも、機械学習はスマートな測定手法という点で非常に役立つと思います。

世界規模で測定する事は非常に困難です。何故なら、全世界で測定を行わなければならないからです。しかし、例えば、よりインテリジェントな送電網を構築する事は期待できます。

どのように電力を送るかという点では、いくつかの難しい最適化問題があります。どこに?どの程度の需要があるのでしょうか?

しかし、おそらくこのインテリジェントな送電網は実現できます。私達が電力の共有と需要を予測できるなら達成できます。何故なら私が言ったように、再生可能エネルギーの発電量は上下に変動するからです。

人々が一日に何をしているのかをより良く予測できれば、ギャップを埋めるために必要な化石燃料は最低限で済むようになり、二酸化炭素の排出量も少なくなるでしょう。そのように役立ちます。

クレイグ
農業についてはどうですか?

ジョン
そう、そうです。実際、その通り機械学習が役立つかもしれません。なぜなら、土地利用の形態は温室効果ガスの排出の大部分を占めるからです。

私達は機械学習を農業に使用できるでしょうか?少なくとも米国では、農業はこの種の機械化されたハイテク製品が使われています。あなたが農場を訪れた事があるかどうかは知りませんが、農場のハイテク化は驚くべきことです。ソフトウェアとセンサー、あらゆる種類の驚くべきものと組み合わされています。

機械学習を使用して、最適な栽培方法を知る事は出来るでしょうか?おそらく、その、気候変動の影響で収穫量が減らないように、これらの植物をどのように栽培するのかを把握する必要があります。

別の方法は、またはこれらの植物のいくつかの繁殖法または遺伝的に変更して、食物を生成するために、それらをより強く、より堅牢にする、またはより多くのカロリーを持たせる方法なども考えられます。

機械学習が役立つもう1つの方法は、警報です。Googleには、洪水予測に取り組んでいるチームがいます。そう、災害の予測とそのメカニズムの理解に挑戦しようとする機械学習システムは沢山あります。

ご存じかもしれませんが、洪水が溢れ出す範囲、すなわち氾濫原は変化するのです。そのため、氾濫原の変化のメカニズムを理解し、予測しようとすると、衛星写真のようなセンサーが必要になります。

どれだけの水が通過しているかをシステムは知る事ができます。そのために多くの種類の機械学習が使われています。更に、洪水以外にも、水に関して注意を喚起すべき他の種類の現象がありますが、データを再利用すれば、機械学習を他の種類の警報にも適応させる事ができます。

機械学習は、緩和のためだけでなく、気候変動を防ぐためにも非常に役立つ可能性があると思います。私達は摂氏2.5度以下に危険性を大幅に減らすことができるでしょうか?つまり、私は2.5度が攻防のポイントになると思っています。

私が言ったように、もし、全てのサンゴ礁が死んだとしたら、それは海の生態系に深刻な打撃です。しかし、あなたもご存じのように、一つの希望があります。多くの人々が機械学習を使用して、野生生物の観測を行うことに興味を持っています。

ですから、気候変動により巨大な打撃を受けているこれらの種の幾つかを救おうとするかもしれません。私達は、私達は、サンゴ礁を助け、安全な場所に移動し、種を保存することができるでしょうか?

ですから、あなたのポッドキャストのリスナーがこの長い論文を読みたいと思うかもしれませんが、必ずしもそこに書いてある事をする必要はなく、その他にも出来ることがたくさんあると思います。彼らはきっと出来ます。

(訳注:論文「Tackling Climate Change with Machine Learning」は全97ページ、ただし、本文は55ページで残りのページは708の参考文献リスト)

今回の試みは、始まりのようなものです。AIコミュニティが気候変動との闘いを支援するために何ができるでしょうか?彼らは、きっと論文で示された以上の事ができます。

つまり、皆さんは論文で示されている事に取り組む事もができますし、あるいは論文から刺激を受けて思い付いた他の事をする事もできます。

何故なら、私は、私は、この問題を解決する特効薬となる銀の弾丸(訳注:銀の弾丸は狼男などの怪異を倒す事が出来る切り札と伝承されており、転じて、何でも解決できる万能の解決策の意味で良く使われる)は存在しないと思っているからです。

これは非常に、非常に複雑な問題です。ですので、特効薬はありません。しかし、もし私達全員がさまざまな領域で作業すれば、進歩できるでしょう。

クレイグ
なるほど。一般大衆の心の中の人工知能のイメージは非常に否定的な物語に発展しました。気候変動の緩和と環境への適応の両方に対処するために機械学習を使用するというこのテーマは、この否定的な物語を好転させる方法だと思います。ご存知のように、誰もがAIを人類を奴隷にしようとしているロボットと考えていますが、実際、おそらく機械学習は気候変動を生き抜く上で私たちの最大の希望です。これは言い過ぎだと思いますか?

ジョン
別の言い方をすると、「人工知能(AI)」ですね。そう、この言葉は私にとってほとんどのケースで誤解を招く言葉です。私が「機械学習(ML)」のような言葉が好きな理由は、それが人間の能力を高めるからです。それの多くは、人間よりもはるかに高速で実行されるという点で自律的です。そう、例えば、スパムメールをフィルタリングする事ができます 人間が全てのメールを読んで判別したくはないでしょう?ですから、私は、AIやMLを使って実際の人間の能力を強化する手法について興奮しています。

困難な問題のいくつかを、これらの技術を適用する事で本質的に解決しようとする事は素晴らしく良い事であり、人々がより自分らしく生きる事を助けると思います。

そのため、過去には、人工知能と言う単語の代わりに、AI(Artificial Intelligence:人工知能)とIA(Intelligence Amplification:知能増幅)と言う言葉の対比がありました。

IAは、もうあまり人気のない用語かもしれませんが、機械学習の全体的な目的は、私たちを集合的により知的にすることだと私は思い、それは現在もまだ本当の事だと思います。

私達が集団で、より知的に、より賢く行動する事でこれらの問題を解決できると思います。つまり、私はそれが具体的に何であれ、人々を何らかの方法で組織化する必要があると思います。

何らかの組織原則が必要です。資本主義と利潤は人々を組織化する一つの方法です。だから私は「強いエネルギーの奇跡」を探しています。なぜなら、もしゼロカーボンエネルギーを化石燃料よりもはるかに安くする方法を見つけ出せば、人々は自然に、エネルギー源を代替します。

ですから、「強いエネルギーの奇跡」とは私たち全員を助ける一種の組織化原理と考えることができますが、それは不可能かもしれないし、遅すぎるかもしれません。

これは、端的に言えば、意思決定の問題なのです。集合的に、何を、どのように、どのようにすれば人々は集合的に行動できるのか?機械学習は人間の代わりに意思決定をする事はできません。

しかし、機械学習は新しい行動の可能性を指し示す事で役立つ可能性があります。物事をより安価にする事で、意思決定をより簡単にする事もできます。

しかし、機械学習は集合的な決定を下すために私達を代替する事は出来ないのです。

クレイグ
今週のポッドキャストは以上です。 ジョンに時間を割いてくれた事に感謝し、彼の努力の成功を祈ります。本日お話した内容についてさらに詳しく知りたい方は、転記したWordファイルをご覧ください。ジョンが参照した論文へのリンクと、ワークショップ「Climate Change: How can AI Help?(気候変動:AIはどのように役立ちますか?)」のビデオへのリンクを含めています。

あなたがポッドキャストを面白くするか、役に立つと思うかどうか、そして私たちがどのように改善できるかについて何か提案があったらを教えてください。シンギュラリティの実現は近くないかもしれませんが、AIはあなたの世界を変えようとしています。ですから、注意を払いましょう。

(アイキャッチ画像のクレジット Photo by Shaun Low on Unsplash)

3.気候変動に対してAIは何が出来るのか?(4/4)関連リンク

1)www.eye-on.ai
Episode 20 – John Platt

2)www.climatechange.ai
ICML 2019 Workshop Climate Change: How Can AI Help?

3)arxiv.org
Tackling Climate Change with Machine Learning

4)slideslive.com
Truck Traffic Monitoring with Satellite Images