ハエの脳を自動でインタラクティブな3D画像に再構成する試み(1/2)

入門/解説

1.ハエの脳を自動でインタラクティブな3D画像に再構成する試み(1/2)まとめ

・ショウジョウバエの脳はニューロンの数が10万程度であり他の脳と比べてモデル化しやすい
・今回ショウジョウバエの脳をFlood-Filling Networksを使って自動再構築する手法が発表された
・従来手法に比べてFFNにSECGANなどの2つの新しい改良を加えている

2.Neuroglancerとは?

以下、ai.googleblog.comより「An Interactive, Automated 3D Reconstruction of a Fly Brain」の意訳です。元記事は2019年8月5日、Peter H. LiさんとJeremy Maitin-Shepardさんによる投稿です。

コネクトミクス研究の目標は、脳の神経系がどのように機能するかを理解するために、脳の「配線図」の地図を作る事です。 最近の主な研究対象は、生物学などの分野で研究対象として定評のあるショウジョウバエ(キイロショウジョウバエ)の脳です。

ショウジョウバエの研究は分子生物学、遺伝学、神経科学の進歩に繋がり、過去に8つのノーベル賞が授与されています。ハエの重要な利点は、そのサイズです。ショウジョウバエの脳は、たとえばマウスの脳(1億ニューロン)や人間の脳(10億ニューロン)と比較して比較的小さい(10万ニューロン)のです。この利点により、ハエの脳は完全な回路として研究しやすい対象になっています。

本日、ハワードヒューズメディカルインスティテュート(HHMI:Howard Hughes Medical Institute)ジャネリア リサーチ キャンパスおよびケンブリッジ大学と共同研究である「Automated Reconstruction of a Serial-Section EM Drosophila Brain with Flood-Filling Networks and Local Realignment」を発表できる事にエキサイトしています。これは、ショウジョウバエの脳全体を自動再構築する手法を紹介する新しい研究論文です。

また、Neuroglancerと呼ばれる私達が開発したインタラクティブな3Dインターフェイスを使用して、全ての結果を誰でもダウンロードまたはオンラインで閲覧できるようにしています。


40兆画素で再構築したハエの脳。インタラクティブな表示を誰でも利用できます。右下:Google AIが2016年と2018年に出版物で分析した小さなデータセット。

40兆ピクセルの自動再構成
HHMIの共同研究者は、ハエの脳を薄さ40ナノメートルの数千のスライスに輪切りにし、透過型電子顕微鏡を使用して各スライスを撮影し、40兆画素を超える脳画像データを作成しました。このハエの脳全体の2D画像をまとめて3D空間に整列させました。

そして数千のクラウドTPUを使用して、Flood-Filling Networks(FFN)を適用しました。これは、ハエの脳内の個々のニューロンを自動的に追跡します。アルゴリズムはほぼほぼ良好に動作しましたが、整列位置が不完全な場合(連続する画像コンテンツが安定していない)や、断片的な箇所、画像処理に関連する困難により複数の連続スライスが欠落している場合、パフォーマンスが低下することがわかりました。

これらの問題を補うために、FFNと2つの新しい手順を組み合わせました。最初に、3D画像のあらゆる場所でスライス間の一貫性を推定し、FFNが各ニューロンをトレースしたときに画像コンテンツを局所的に安定化するようにしました。次に、「セグメンテーション強化CycleGAN」(SECGAN:Segmentation-Enhanced CycleGAN)を使用して、画像ボリューム内の欠落スライスの幻影を計算的に補完しました。

SECGANは、画像セグメンテーションに特化した一種の敵対的生成ネットワークです。SECGANで幻影化された画像データを使用すると、FFNが複数の欠落スライスのある場所をはるかに堅牢に追跡できることがわかりました。

 

3.ハエの脳を自動でインタラクティブな3D画像に再構成する試み(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
An Interactive, Automated 3D Reconstruction of a Fly Brain

2)www.biorxiv.org
Automated Reconstruction of a Serial-Section EM Drosophila Brain with Flood-Filling Networks and Local Realignment(PDF)

3)elifesciences.org
Enhanced FIB-SEM systems for large-volume 3D imaging

4)github.com
google/neuroglancer

5)neuroglancer-demo.appspot.com
Neuroglancer Demo

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