偏微分方程式をより良く近似するために機械学習を利用(1/2)

入門/解説

1.偏微分方程式をより良く近似するために機械学習を利用(1/2)まとめ

・スーパーコンピュータであっても物理現象をモデル化するためには性能が不十分
・精度を上げようとすると計算量が10の四乗で増えいくため手に負えない
・方程式を計算ではなく機械学習を使って特徴を捉えようと言う試みが発表される

2.偏微分方程式の解を機械学習を使って求める

以下、ai.googleblog.comより「Learning Better Simulation Methods for Partial Differential Equations」の意訳です。元記事は2019年7月23日、Stephan Hoyerさんによる投稿です。

世界最速のスーパーコンピュータは物理現象をモデル化するために設計されました。しかし、最速のスーパーコンピューターであっても気候変動の影響をしっかりと予測したり、気流に基づいて飛行機の制御を設計したり、核融合炉を正確にシミュレートするのには性能が不十分です。

これらの現象は全て、偏微分方程式(PDE:Partial Differential Equations)によってモデル化できます。偏微分方程式は、方程式の一種で、物理世界の滑らかで連続的な動きを数式化する際や、科学や工学における一般的なシミュレーション問題をモデル化する際にも良く使われます。

これらの方程式を解くためには、より速いシミュレーションが必要ですが、近年、ムーアの法則は減速しています。同時に、機械学習(ML)は機械学習計算用に最適化されたより高速なハードウェアと共に大きな進歩を遂げました。この新しい変化は科学技術計算に何をもたらすのでしょうか?

全米科学アカデミーの会議録に掲載された「Learning Data Driven Discretizations for Partial Differential Equations」では、機械学習が高性能コンピューティングを継続的に改善する方法についても探求しています。偏微分方程式を解いたり、より広範に科学のあらゆる分野で難しい計算問題を解くために機械学習を利用するのです。

現実世界のほとんどの問題では、偏微分方程式の数学的に綺麗な解を求める事はできません。代わりに、コンピュータで解くことができる離散方程式(discretization)を見つけて、それを使って連続偏微分方程式を近似する事で解を求めます。

偏微分方程式を解くための典型的な手法は、グリッド(格子)を使って方程式を近似的に表現する事です。

グリッドの間隔が十分に小さくなければ、近似解が粗くなってしまい、偏微分方程式の特徴を捉える事ができなくなります。

しかし残念ながら、グリッドの間隔を小さくする事は、しばしば現実的に不可能になります。10倍の高精細度を達成するには、10,000倍の計算が必要になるからです。グリッドは、4つの次元(3つの空間次元と時間)でスケーリングする必要があるので10の四乗の計算量になってしまうのです。

今回、私達の論文では従来手法の代りに機械学習を使って、より粗いグリッド上に、偏微分方程式の特徴表現をより良く近似できる事を示しました。


ハリケーンの衛星写真の「フル解像度版」と「最新気象モデルによるシミュレート版」の比較。積雲(たとえば赤丸部分)は大雨の原因になりますが、最新気象モデルによるシミュレート版では細部が完全にぼやけてしまっています。そのため、気象モデルはサブグリッド物理学を用いて粗い近似値を求めます。この粗い近似は気候モデルにおける不確実性の主な原因となります。(画像クレジット:NOAA)

 

3.偏微分方程式をより良く近似するために機械学習を利用(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Learning Better Simulation Methods for Partial Differential Equations

2)www.pnas.org
Learning data-driven discretizations for partial differential equations

 

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