1.Rise Of Robots ロボットの脅威の読書感想まとめ
・2015年のビジネスブックオブザイヤーRise Of Robotsは非常に内容が濃い
・内容が非常に多岐にわたるので一読しただけではまるで消化しきれない
・自動車のクラウド化と人工知能のパラドックスが心に残った
2.ロボットの脅威の内容の濃さ
本の厚みに圧倒される事はあまりないのだが、この本の厚みには久々にグッときた。全409ページ、本文は344ページだが脚注や原注が非常に充実しており本文中の根拠となる元データをなるべく示そうとする誠実さには尊敬の念がこみ上げてくる。その分、消化に非常に時間がかかる本でもあり、一読したが全然消化できている気がしない。
取扱っている話題が本当に多岐に渡るのだ。原題は「Rise Of Robots ロボットの脅威~人の仕事がなくなる日~」だが全10章のうちロボット関連がメインとなっているのは第一章のみ。中項目だけ拾っても、下記のようにそれ一つで本が書けそうなトピックがゴロゴロ出てくる。
ロングテール、ビッグデータと機械学習、クラウド、オフショアリング、ムーク(MOOC)、医療と人工知能、アメリカの医療費問題、3Dプリンティング、自動運転、格差と消費支出、テクノロジーと高齢化する労働力、シンギュラリティ、先進的ナノテクノロジー、教育がもたらすリターンの減少、ピケティ、ベーシックインカム、再生可能資源としての市場、気候変動。
しかも、そのトピックが先見性にも溢れていて、例えば、P165には「日本の国立情報学研究所の数学者、新井紀子は、東京大学の入学試験に合格できるシステムの開発プロジェクトを率いている。もしもコンピュータが日本の最高学府に入るのに必要な自然言語適正と分析スキルの組み合わせを発揮できれば、そのコンピューターがいずれ、大卒者が就く仕事の多くをこなせるようになる可能性はきわめて高いと言うのが、新井の考えだ。・・・彼女のプロジェクトの眼目のひとつは、人工知能が労働市場に及ぼす影響を定量化できるかという点にある。高スキル労働者の10~20%が自動化によって置き換えられるだけでも破局であり、それが50%になるとどういうことになるか想像もつかない」と記述がある。
これ、日本で今(2018年3月)人工知能関連書籍でAmazonでベストセラー1位になっている「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」のロボットの話ですね。Rise Of Robotsがアメリカで出版されたのは2015年5月。3年前に日本で行われている実験にも着目していたと言う事を考えると、本の中でサラッと引用されている他の事例もかなり調べたうえで引用しているのだろうな、と思ってサラッと読みこなす事ができず余計に消化に時間がかかる。
正直、例の配管工が人間に残される最後の仕事だ!って東スポ的記事で引用されていた事もあって、やや斜めから見ていた部分があった。しかし、文中では怪しげな説はばっさり切っていて、例えばシンギュラリティを改めて提唱しているレイ・カーツワイルについては「カーツワイルはどこからどう見ても、きわめて優れた発明家でありエンジニアだ。・・・トーマス・エジソンの正当な後継者と評された事もある。ところが彼のシンギュラリティについての著作は、技術の加速度的進歩についての根拠が明確で首尾一貫した記述と、恐ろしく思い込みに満ちた、ほとんど馬鹿げているすら言いたくなるようなものを加えた奇妙な混合物なのだ」と個人的に共感できる評価を下している。カーツワイルさんは頭が良すぎるのか常人が理解するのが難しい非現実的な事を言っているように感じる時があるのだ。
4.一読して心に残った事
全然消化しきれていないが、それでも一読して心に残った事をあげると下記2つ。
1)自動車のクラウド化
自動運転が普及すると自動車は公共交通機関のように必要な時にスマホで呼び出して必要な場所に連れて行って貰ったり、大人数で共有して使うのが主流となる。クラウド化のイメージですかね。都会だと本当にあり得るかと思います。
2)人工知能のパラドックス
ドラえもんやアトムのようなシンギュラリティに到達する先進的人工知能の実現には莫大な研究投資が必要になる。その研究過程でドラえもん程ではないがそこそこ有能な人工知能ができれば、それによって大多数の人間の仕事が奪われる可能性が高い。国民の大多数が失業していたら、ドラえもんを発売しても買える人がいなくなる。そうすると、ドラえもんを開発するために研究投資するモチベーションを企業も国も保つ事が出来なくなりシンギュラリティは実現しない。確かに需要がなくなると発売しても意味がないですし、国民の大多数が失業した状態では科学技術よりパンと米が最優先事項になりますね。面白い視点だと思いました。
4.Rise Of Robots ロボットの脅威の読書感想関連リンク
1)Amazon
ロボットの脅威 ―人の仕事がなくなる日
コメント