DNAと家系図で40年以上前の連続殺人事件の容疑者を逮捕

その他の調査

1.DNAと家系図で40年以上前の連続殺人事件の容疑者を逮捕まとめ

・カリフォルニア州の40年以上前の未解決連続殺人事件の容疑者が逮捕された
・犯人のDNAとパーソナルゲノム情報サイトから祖先が特定されそこから容疑者特定に
・親戚のDNAから自身のDNA情報が推測されてしまう時代

2.パーソナルゲノム情報とプライバシー

1976年から86年にかけてカリフォルニア州(別名ゴールデン・ステート)で12件の殺人と50件以上の暴行、120件以上の強盗を行ったと推測される未解決事件の容疑者が捕まった。容疑者は、「ゴールデン・ステート・キラー」と呼ばれ、1986年を最後に犯行が途絶えていたにも関わらず全米でも注目度が高く、2016年に新たに5万ドルの懸賞金がかけられた程。

そして、2018年4月25日、カリフォルニアに住む元警官の72歳の老人が逮捕された。

逮捕に至るまでの過程が興味深い。アメリカでは簡単な器具で自分のDNAを取得して登録すると自分のルーツや家系図の欠けている部分がわかるパーソナルゲノムサービスを提供するWebサイトがある。

捜査機関はGEDmatchと言うパーソナルゲノムサービスに登録されている65万に及ぶDNAと、過去の犯行現場に残されていたDNAを、四カ月かけて比較し、容疑者の曾曾曾お爺さん(great-great-great grandfather)にたどり着き、そこから家系図をくだり最終的に容疑者にたどり着いたと言う。

気になった事は2つ

1)未解決事件が解決したのは喜ばしい事だが、GEDmatchは家系図研究目的の運営であり、他の商用パーソナルゲノムサイトに比べると法的備えが十分ではなかったようだ。他の商用サイトで同様な事をするためには「特定の遺伝的情報または個人情報にアクセスするためには、捜査令状または裁判所命令を発行するように法執行機関に要請」が必要になるため、捜査機関はそういった面倒な手続きを避け、GEDmatchに事前に知らせる事もせずに捜査に利用した模様。FaceBookの個人情報流用が問題になっている時期でもあるので考えさせられるが、結局のところ、利用できるものがあればそれを利用する人は出てくるのだ、それが良い目的であっても悪い目的であっても。

2)ゴールデン・ステート・キラー自身は、GEDmatchに登録はしておらず、祖先のDNA情報から特定された事。自分自身が何も登録せずとも親戚に誰かオープンな性格な人がいれば、自分のDNA情報も相当なレベルで把握できてしまう世の中になっている事。

記事中では特に人工知能には触れられていないが、四カ月かけて65万に及ぶDNAと比較したと言う事は何らかの機械学習的アプローチがされているはず。丁度、DeepVariantのゲノム解析の記事を取り扱ったばかりなので、現在は「認識」や「特定」に留まっているDNA解析も「予測」や「推薦」を本格的に始めるようになるのだろうな、と考えるとちょっと怖く感じてしまう。

実際、中国では新生児の遺伝子検査サービスが始まっており、
・Extended Exome(拡張エクソーム検査)が1495ユーロ
・Whole Genome(全ゲノム検査)が3990ユーロ
まだ不確実性が高いけど、将来の薄毛の可能性までチェックできるとか。

3.DNAと家系図で40年以上前の連続殺人事件の容疑者を逮捕関連リンク

1)jp.techcrunch.com
連続殺人犯逮捕へと導いたDNA分析サイトは、ユーザープライバシーに関する懸念を再燃させる

2)en.wikipedia.org
Golden State Killer

3)technologyreview.jp
中国で過熱する新生児の遺伝子検査はどこまで許されるか

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