人工知能による心血管疾患リスクの評価

モデル

1.人工知能による心血管疾患リスクの評価まとめ

・人工知能を使って網膜画像から高精度で心血管疾患リスクを予想できた
・予測精度は従来の採血による診断に迫るレベルであり今後の発展も期待される
・人工知能は個別性に着目した効果的な治療を可能にするがパンドラの箱を開ける怖さもある

2.人工知能による心疾患リスクの予測

GoogleResearchブログより。心臓発作などの心血管疾患(心臓と血管の病気)は、現在もアメリカで健康問題のトップであり続けているが、人工知能を使って発症リスクを診断する実験が成果を上げつつある。

従来は心血管疾患のリスク診断にはベテラン医師による問診、採血による診断、及び糖尿病など他の病気の影響も考慮する必要があった。しかし、人工知能に患者の網膜画像を学習させたところ、目の病気や糖尿病だけでなく、心血管疾患リスクも高精度で予測可能である事がわかった。

ディープラーニングを使い28万人以上の患者のデータを学習したところ、喫煙者の網膜と非喫煙者の網膜を71%の確率で区別できた。また、人工知能に「5年以内に心血管疾患を発症した患者の網膜画像」と「何も発症しなかった患者の網膜画像」を与えたところ、70%の確率で発症リスクを予測できた。この予測確率は採血してコレステロール値から心血管疾患リスクを予測する手法に迫る精度である。

更に重要な事は、アテンションの手法を使い、人工知能が画像の何処に注目して予測をしたのか確認できるようになった事だ。例えば、血圧に関する予測の際は目の血管部分に人工知能は着目していた。人工知能がどのように予測を行っているか説明することは、医者が人工知能に信頼を持てるようになる事に繋がるし、将来人工知能の着目している部分を元に新しい仮説をたてる事もできるようになるかもしれない。

3.人工知能が実現する個別性に着目した医療

脳科学の本を読んでいると特に感じるのだけど、人間の体は個別性(遺伝要因)が高い。Aさんは幾らお酒を飲んでも平気だけど、Bさんはすぐに酔っぱらうとか、ダイエットしているのになかなか痩せない人や逆に食べても太らない人など、皆さんも身の回りで世の不条理を感じたことがあるかと思う。

従来の医療は最大公約数的なアプローチしかできなかった。例えば、「Aさんにはとても効果があるけどBさんにはほとんど効果がない薬」は市場として成立しないので発売出来なかった。「AさんにもBさんにも少しは効果がある薬」がのぞまれたのだ。

人工知能が医療分野でもっと使われるようになると、従来は最大公約数的なアプローチしかできなかった医療が、患者の個別性に着目したより効果的な治療が可能になるかもしれないと言われている。それは待ち遠しくもあるけど遺伝要因と言うパンドラの箱を開けてしまう事に繋がる怖さも感じる。まぁ、これは人工知能のせいではないのだけど、親族に癌患者がいると癌を発症するリスクが高い等、公には言われていないけどほぼ確実な事が、他にもドンドン露わにされていくとしたら向き合うにはそれ相応の覚悟が必要になりそう。

4.人工知能による心血管疾患リスクの評価関連リンク

1)research.googleblog.com
Assessing Cardiovascular Risk Factors with Computer Vision

 

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