衛星画像と機械学習を用いて山火事の境界をリアルタイムに追跡(1/2)

アプリケーション

1.衛星画像と機械学習を用いて山火事の境界をリアルタイムに追跡(1/2)まとめ

・Googleの山火事追跡機能が最近機能拡張されより正確に10-15分ごとに火災の境界情報が更新されるようになった
・山火事の境界追跡は詳細さと更新頻度のバランスをとる必要があり静止衛星画像を使う事でこの課題に挑戦している
・火災は大量の煙を放出するため上空から火災の範囲を決定する事は困難だが赤外線の波長域を利用して事を解決した

2.山火事の境界を衛星写真から捉える事の難しさ

以下、ai.googleblog.comより「Real-time tracking of wildfire boundaries using satellite imagery」の意訳です。元記事は2023年2月23日、Zvika Ben-HaimさんとOmer Nevoさんによる投稿です。

直近は心がざわめく系のお話が多いですが、こういう人力では難しい作業を人工知能ちゃんが頑張ってくれてる系のお話は心に平穏をもたらしてくれますね。

アイキャッチ画像はstable diffusionのカスタムモデルによる生成で制御室で山火事の衛星写真をやや険しい顔で見ているナウシカとテトをイメージした画像

地球の気温上昇に伴い、世界各地で山火事が頻発し、その危険性が高まっています。その影響は、人々が家から避難したり、火や煙の近くにいるだけでも被害を受けるであり、多くのコミュニティで危険性を感じています

Googleは、信頼できる情報に人々がアクセスできるよう支援するというミッションの一環として、衛星画像と機械学習(ML:Machine Learning)を使用して山火事を追跡し、影響を受けるコミュニティに情報を提供しています。Googleの山火事追跡(wildfire tracker)は最近機能拡張されました。

10-15分ごとに更新される火災の境界情報は、衛星を使った同様な製品よりも正確で、これまでの成果をさらに高めています。米国本土、メキシコ、カナダ、オーストラリアの大部分における大規模火災の境界が表示されます。Google検索やGoogleマップに、地元自治体からの追加情報とともに表示されるため、人々は自分や自分の家、大切な人の近くに潜む危険について情報を得ながら、安全を保つことができます。


2021-2022年のWrattonbully山火事のリアルタイム境界追跡
(Googleマップ上の赤色で表示)

入力情報

山火事の境界追跡は、空間分解能(spatial resolution)と更新頻度のバランスをとる必要があります。頻繁に境界を更新するための最も規模拡大可能な方法は、静止衛星、すなわち、24時間に一度地球を周回する衛星を使用することです。静止衛星は、地球上の一定の地点に留まり、その地点の周辺を常にカバーすることができます。

具体的には、山火事追跡モデルには、北米をカバーするGOES-16とGOES-18衛星、オーストラリアをカバーする静止気象衛星ひまわり9号とGK2A衛星が使用されています。

これらは10分ごとに大陸規模の画像を提供します。分解能は、衛星直下で2km、直下から離れるにつれて低くなります。この衛星の目的は、できるだけ早く人々に警報を出し、必要に応じて空間的に正確な現地データを提供する権威ある情報源に照会することです。


2018年にカリフォルニア州で発生した最大級の山火事である「キャンプ山火事(Camp Fire)」の炎を覆い隠す煙の噴煙
[画像はNASA Worldviewより]

火災は大量の煙を放出するため、火災の正確な範囲を決定することは自明ではありません。また、雲などの気象現象により、火災の実態はさらに見えにくくなります。

これらの課題を克服するために、赤外線(IR:Infrared Ray)、特に3~4μmの波長域を利用することが一般的です。これは、山火事(および同様に表面が高温になっている状態)がこの周波数帯でかなりの赤外線を放射しており、赤外線は大気中の煙やその他の粒子によって比較的小さな歪みの影響しか受けず、妨げられないためです。

下図は、オーストラリアの山火事のマルチスペクトル画像です。可視光(青、緑、赤)のチャンネルでは三角形の噴煙を、3.85μmの赤外光では火災のリング状の燃焼パターンを主に映し出しています。しかし、赤外線帯の情報を加えても、火災の発光強度が変化することや、他の複数の現象が赤外放射を放出したり反射したりしているため、火災の正確な範囲を決定することはまだ困難です。


ひまわり8号による山火事のハイパースペクトル画像
可視光(青、緑、赤)の煙と、3.85μm帯のリングに注目してください。

モデル

衛星画像からの火災検出に関する先行研究は、一般的にマルチスペクトル画像からホットスポットを特定するための物理ベースのアルゴリズムに基づいています。例えば、米国海洋大気庁(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)の火災プロダクトは、主に3.9μmと11.2μmの周波数(他の2つの周波数帯からの補助情報)に依存しており、それらを使ってGOES衛星で山火事の可能性のある画素を識別しています。

私達の山火事追跡システムでは、モデルはすべての衛星の入力に対して学習され、異なる周波数帯の相対的な重要性を学習することが可能になっています。モデルは、雲などの一時的な障害物を補正するために、各周波数帯から最新の3つの連続する画像の並びを受け取ります。また、静止衛星2機からの入力を受けることで、どちらの衛星でも画素サイズに応じて検出精度が向上する超解像効果(super-resolution effect)が得られ、検出精度が向します。

また、北米では前述のNOAAの火災プロダクトを入力として与えています。最後に、太陽と衛星の相対角度を計算し、モデルへの追加入力として提供します。

2.衛星写真と機械学習を用いて山火事の境界をリアルタイムに追跡(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Real-time tracking of wildfire boundaries using satellite imagery

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