私たちはAIに仕事を奪われる事を心配するべきか?(3)

その他の調査

1.概要

・ロボットや人工知能に奪われる職業一覧は古くなっている可能性がある
・主観が絡んだ調査であるため、技術の進歩に影響を受ける
・「技術的に可能か?」を判断しており「実現可能か?」ではない事に注意

2.論文の歴史

「ロボットやAIが人間の仕事を奪う」のテーマで良く取り上げられる事の多いのはオックスフォード大学のオズボーン准教授とフレイ博士の論文。発表の順番は下記。
2013年9月
The Future of Employmentが発表。これは米国データを元に作成されたもので「米国では47%のお仕事がロボットや人工知能に奪われる!」とショッキングな結果として引用される事が多い。
2014年
その後、デロイトトーマツコンサルティング社と共同で英国データを用いて「英国では35%のお仕事がロボットや人工知能に奪われる!」と調査発表しているようだ。これは元データの場所が見つけられない。
2015年12月
野村総研がオズボーン准教授とフレイ博士の共同研究として日本のデータを使って「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に!」と発表。
2016年1月
AlphaGoが欧州の囲碁チャンピオンと2015年10月に対局し、5戦全勝の成績を収めていたことが発表。人工知能が囲碁で人間に勝つのはまだ先の話であろうとされていたのでショッキングな出来事として報道された。
最初の論文のThe Future of Employmentに下記の表現がある。
we subjectively hand-labelled 70 occupations, assigning 1 if automatable, and 0 if not.
私達は主観的に70の職業についてラベルを付けた。自動化可能であれば1、そうでなければ0。
私達とは
Oxford University Engineering Sciences Department
オックスフォード大学のコンピュータエンジニアリング学部
自動化可否の判断条件は
Can the tasks of this job be sufficiently specified, conditional on the availability of big data, to be performed by state of the art computer-controlled equipment
ビッグデータと最新のコンピュータ設備が利用可能であったらこの仕事の作業は十分に規定可能か?
判断条件にbig dataは入っているけどAIとかMachine LearningとかDeep Learningの単語は入ってないのだ。もちろん、オズボーン准教授ご本人はMachine Learningを専攻されている方だから意識していないわけではないと思うが、人工知能関連の単語が入ってない事にどうしても時代を感じてしまう。機械学習の論文や新手法が日々発表される2018年現在ではもっと自動化可能と判断される職業は増えるはず。
いずれにしても主観が入った調査なので、気になっている職業がロボットや人工知能に奪われる可能性が高い職業に入っているか否かで一喜一憂するのではなく、就業環境が大きく変わる事への警鐘と捉えるべき論文と思う。なお、The Future of Employmentに対する取材申し込みは日本からが一番多いとの事。日本人は鉄腕アトムやドラえもんのお蔭で、諸外国に比べてロボットには脅威を感じずに済んだと言われているけど、人工知能時代になって改めて脅威を感じるようになったのだろうか。

3.人工知能に技術的に可能な事と人工知能で実現可能な事の違い

 

例えば、野村総研の調査で「人工知能やロボット等による代替可能性が高い100種」の職業に入っているバイク便配達員は自動運転が発達すれば技術的には可能だが実現は困難と思う。
まずは、コスト。個々の顧客の要望がバラバラなので学習コストが高い。○○ビルのXX階の△さんから◇をA時に受け取って◆ビルのZさんに必ず手渡し!など個別性の高い仕事が不定期に発生する。技術的には可能ではあると思うけど、おそらく人間がやった方がコストが安い。
それと、グレーなルールの取り扱い。個々の事例は比較的大目に見られているが公に発言するとNGな交通ルール。
バイク便のお兄さんがすり抜けや割り込みなどをやっていても「まぁ、お仕事だろうから多少は仕方ないか」的に見逃されるケースがあると思うが、「我が社はすり抜けOK、どんどん割り込め!と人工知能を教育しています!」がばれてしまったら社会的にそれは許されるのだろうか?

4.参考リンク

~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~
AIではなくマシン・ラーニングから考える

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