1.アンビエント・コンピューティング用の目立たないインターフェイスの実現(1/2)まとめ
・美観を保ちつつ必要に応じて操作可能になるアンビエントコンピューティングが望まれている
・これは織物、木製化粧板、アクリル、一方向鏡などの素材にディスプレイ表示を可能にする
・従来手法は輝度やチラつきに問題があったためパラレルレンダリングという新手法を開発
2.アンビエント・コンピューティングとは?
以下、ai.googleblog.comより「Hidden Interfaces for Ambient Computing」の意訳です。元記事は2022年4月21日、Alex OlwalさんとArtem Dementyevさんによる投稿です。
アンビエント・コンピューティング(Ambient Computing)とはあまり馴染みのない言葉ですが、利用者が(電源オンなど)特別な行動をしなくともスムーズに利用できるような機器/環境の事です。
これが実現できるようになると身近な機器の使い勝手、拡張現実(AR)の没入感、メタバースヴァースなどでも現実世界との境界を曖昧にする事が出来るので期待されています。
アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Y K on Unsplash
家電製品やインターネットに接続された家電製品が一般的になるにつれて、家庭では、音楽コントロール、音声アシスト、ホームオートメーションなどの機能を提供するさまざまな種類の接続デバイスが採用され始めています。
特に、電源がオフになっていたり、積極的に使用されていない状態では、単調な表面や黒い画面となり、空間の視覚的なデザインを簡単に破壊してしまいます。そのため、日常的に使用する素材の美観を保ちつつ、必要に応じて操作可能になる事やデジタルディスプレイを利用できるコネクテッド・アンビエント・コンピューティング機器(connected ambient computing devices)や家電製品の開発が望まれています。
鏡や家電の羽目板など、日常的に目にするものの中に、操作パネルが隠れている様子
ACM CHI 2022 で発表した論文「Hidden Interfaces for Ambient Computing: Enabling Interaction in Everyday Materials through High-Brightness Visuals on Low-Cost Matrix Displays」では、素材の下に埋め込むように設計されたインターフェース技術と、そのような技術が日常の素材や美観とどのように共存できるのかについての私達のビジョンについて述べています。
この技術により、織物、木製化粧板、アクリル、一方向鏡などの素材の下から高輝度かつ低コストのディスプレイを出現させ、オンデマンドのタッチベースの操作を実現することができます。
パラレルレンダリング:PMOLEDの輝度を向上
今日の消費者向け機器の多くはアクティブマトリクス型有機発光ダイオード(AMOLED:Active-Matrix Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイを採用していますが、そのコストと製造の複雑さから、アンビエントコンピューティングには不向きなものとなっています。また、E-inkやLCDなどの他のディスプレイ技術では、素材を透過するのに十分な輝度が得られません。
このギャップを解決するために、私たちは、コストと複雑さを大幅に削減するシンプルな設計に基づくパッシブマトリクス型有機EL(PMOLED:Passive-Matrix OLED)の可能性を探っています。しかし、PMOLEDは通常スキャンラインレンダリング(scanline rendering)を採用しており、アクティブディスプレイドライバー回路が一度に1列ずつ順次アクティブ化するため、ディスプレイの輝度が制限され、フリッカーが発生します。
そこで私たちは、横線と縦線の直方体をグループ化し、1回の操作でできるだけ多くの行を同時にアクティブにするパラレルレンダリング(parallel rendering)という方式を提案します。例えば、従来のスキャンラインレンダリングでは、行の数だけ演算が必要だったのに対し、2回の演算で正方形を表示することができます。パラレルレンダリングは、より少ない演算で、一瞬に多くの光を出力することができるため、輝度が上がり、ちらつきがなくなります。この技術は、パフォーマンスが最も劇的に向上する線と矩形に限定されるものではありません。たとえば、直線でないコンテンツにアンチエイリアスをかける(つまり、滑らかにする)ためのレンダリングステップを追加することができます。
塗りつぶしていない長方形のスキャンラインレンダリング(上)とパラレルレンダリング(下)の動作説明。パラレルレンダリングは、複数の行を同時にアクティブにすることで、ちらつきのない明るいグラフィックスを実現します。
ユーザーインターフェースと文章のレンダリング
私達は、隠されたインターフェースが、ダイナミックで表現力豊かな操作感を生み出すために使用できることを示します。
ボタン、スイッチ、スライダー、カーソルなどの基本的なUI要素のセットを用いて、照明スイッチ、音量調節、サーモスタットなど、各インターフェースで異なる基本的な制御を行うことができます。わずかな操作で効率よく描画できるように、拡大可能なフォント(数字と文字のセット)を作成しました。
現在、斜めの線を持つ文字「k、z、x」は除外していますが、操作を追加することで対応できる可能性があります。このように、フレーム単位でフォントの特性を制御できることと、ディスプレイの高いフレームレートにより、非常に滑らかなアニメーションが可能となり、固定7分割7LEDディスプレイでは表現できない直線的ナグラフィックスの表現力を大きく拡張することができます。
本発表では、拡大可能な時計、発信者番号表示、ズーム式カウントダウンタイマー、ミュージックビジュアライザーなど、さまざまな例を紹介します。
3.アンビエント・コンピューティング用の目立たないインターフェイスの実現(1/2)関連リンク
1)ai.googleblog.com
Hidden Interfaces for Ambient Computing