機械学習を使った洪水予測の仕組み(3/3)

  • 2019.09.30
  • AI
機械学習を使った洪水予測の仕組み(3/3)

1.機械学習を使った洪水予測の仕組み(3/3)まとめ

・過去の水位測定値を過去の浸水と相関させ水理モデルの修正箇所を特定できるようにした
・水文モデルに関するいくつかの基礎研究にも取り組んでおりマルチタスクラーニングを適用
・従来モデルより今回研究したEA-LSTMが広く貫して上回っている事が確認された

2.水文モデルの開発

以下、ai.googleblog.comより「An Inside Look at Flood Forecasting」の意訳です。元記事の投稿は2019年9月18日、Sella Nevoさんによる投稿です。

前述のように、水理モデルは浸水予測で使われる1つのコンポーネントにすぎません。

浸水モデルの精度が十分でない場所を繰り返し発見しました。それが高解像度のデジタル標高モデル(DEM:Digital Elevation Models)が不正確な部分によるものなのか、堤防の欠損、もしくは予期していなかった水源によるものであるかどうかなど。

私達の目標は、これらのエラーを減らす効果的な方法を見つけることでした。この目的のために、過去の測定値に基づいて予測浸水モデルを追加しました。

2014年から、欧州宇宙機関はCバンド合成開口レーダー(SAR:Synthetic Aperture Radar)機器を備えたSentinel-1という名前の衛星コンステレーション(多数の人工衛星によるシステム)を運用しています。

SARによる画像は、浸水地域の識別に優れており、気象条件や雲に関係なく識別する事ができます。この貴重なデータセットに基づいて、過去の水位測定値を過去の浸水と相関させ、水理モデルの一貫した修正箇所を特定できるようにしました。両方のコンポーネントの出力に基づいて、どの不一致が真の地盤条件の変化によるものであり、どの不一致がモデリングの不正確さによるものであるかを推定できます。


Googleのインターフェースによる洪水警告

待ち遠しい未来
浸水モデルの利点を完全に実現するためには、まだやるべきことがたくさんあります。 何よりもまず、インド国内と新しい国の両方で、運用システムの範囲を拡大する事を一生懸命取り組んでいます。

また、予測される洪水の大きさ、一時的な情報など、リアルタイムで提供できるようにしたい情報がより多くあります。更に、明確性を最大限に高め、必要な保護措置を講じるように奨励するために、この情報を個人に最適に伝える方法を調査しています。

計算上、浸水モデルは、既存の洪水予測の空間分解能(したがって精度と信頼性)を改善する優れたツールです。複数の政府機関や国際機関と話し合っているのは、効果的な洪水予報に全くアクセスできない地域、または効果的な対応を行うために必要な時間を提供するほど早く予報できない予報についてです。

浸水モデルに関する作業と並行して、改良された水文モデルに関するいくつかの基礎研究に取り組んでおり、政府がより空間的に正確な予測を作成できるだけでなく、より長い準備時間を達成できることを願っています。

水文モデルは、降水量、日射量、土壌水分などを入力として受け入れ、数日後の河川流量の予測を作成します。これらのモデルは、従来、融雪、表面流出、蒸発散などのさまざまなコアプロセスを近似する概念モデルの組み合わせを使用して実装されていました。


水文モデルのコアプロセス。 JKU機械学習研究所のDaniel Klotzによるデザイン

これらのモデルは従来、大量の手動補正を必要とし、データの少ない地域ではパフォーマンスが低下する傾向があります。 この問題に対処するために、マルチタスク学習を使用して水文モデルをよりスケーラブルに、より正確に作成する事ができないかを調査しています。

機械学習ベースの水文モデルの開発に関するSepp HochreiterとJKU Institute For Machine Learningグループとの共同研究「Benchmarking a Catchment-Aware Long Short-Term Memory Network (LSTM) for Large-Scale Hydrological Modeling」では、比較対象とした他の全ての古典的な水文モデルよりもLSTMのパフォーマンスが優れていることを示しています。


米国全域のNSEスコアの分布は、様々なモデルの中で今回提案されたEA-LSTMが広く一般的に使用されているモデルを一貫して上回っている事を示しています。

この研究はまだ基礎的な研究段階であり、まだ運用されていませんが、重要な最初のステップであり、他の研究者や水文学者にとって既に有用であることを願っています。

洪水の害を減らすために活動している研究者、政府、NGOの大規模なエコシステムに参加できる事は信じられないほどの栄誉です。このタイプの研究がもたらす潜在的な影響に興奮しており、この分野の研究がどこに行くのか楽しみにしています。

謝辞
今回の大きな成果に貢献した多くの人々がいます。主要な貢献者を何名か強調したいと思います。
Aaron Yonas, Adi Mano, Ajai Tirumali, Avinatan Hassidim, Carla Bromberg, Damien Pierce, Gal Elidan, Guy Shalev, John Anderson, Karan Agarwal, Kartik Murthy, Manan Singhi, Mor Schlesinger, Ofir Reich, Oleg Zlydenko, Pete Giencke, Piyush Poddar, Ruha Devanesan, Slava Salasin, Varun Gulshan, Vova Anisimov, Yossi Matias, Yi-fan Chen, Yotam Gigi, Yusef Shafi, Zach Moshe そして Zvika Ben-Haim.

 

3.機械学習を使った洪水予測の仕組み(3/3)関連リンク

1)ai.googleblog.com
An Inside Look at Flood Forecasting

2)arxiv.org
Benchmarking a Catchment-Aware Long Short-Term Memory Network (LSTM) for Large-Scale Hydrological Modeling