自動化により消滅の危機にさらされている雇用の実態(1/2)

その他の調査

1.自動化により消滅の危機にさらされている雇用の実態(1/2)まとめ

・OECD加盟諸国の雇用の半分近くがAI等のオートメーションによる影響を受ける可能性がある
・高スキルを必要とする職業より低スキルを必要とする職業の方が影響を受ける可能性が高い
・社会人向けジョブトレーニングは有用ではあるが国や社会状況により実施状況が大きく異なる

2.自動化によって失われる可能性が高い職種とは?

以下、OECD(経済協力開発機構)のサイトに2018年3月に掲載されたStefano Scarpettaさんのレポートの意訳です。後半はこちら

1)OECD諸国の雇用の約14%が高度に自動化されています。その他の32%の雇用は、仕事の内容が根本的に変わる可能性があります。

2)最も自動化のリスクが高い職業は、高い熟練度を必要としない、しばしば賃金も低い定型化されたルーチンタスクです。その一方で自動化のリスクが低い職業は専門性の高いプロフェッショナルな職業からソーシャルワーカーまで幅広いです。

3)オートメーションが最も影響を及ぼすのは製造業と農業です。しかし、幾つかのサービス業は同様に高度に自動化されます。

4)自動化のリスクが高い産業はトレーニングの敷居が低いため、そのような業界でトレーニングを積んでも自動化リスクから遠ざかる事にはなりません。

5)就職活動は若者にとってより困難になるでしょう。習熟せずとも出来るエントリーレベルの仕事は熟練労働者の行う仕事より自動化のリスクが高いからです。

6)これらの予測は相当な不確実性を伴います。さらに、技術的に自動化可能なすべての職業が消えるわけではありません。創出される雇用もあるため、雇用は全体として増加し続けるかもしれません。

AIやロボットに不可能な仕事は急速に減っています。

ロボティクスやAIのような新しいテクノロジーは急速に人々の仕事や生活を変えています。それらは働き方をもっと生産的にし、定型的な作業をなくし、人々がより沢山のより良い商品やサービスを提供できるようにするポテンシャルがあります。しかしながら、テクノロジーは既存の職業の在り方を変えるでしょう。企業や従業員たちに新しいやりかたに慣れるように要求します。自動化の程度は、政策や制度、社会的好みによって異なるものの、一部の仕事は完全に必要とされなくなる可能性があります。

多くの仕事がコンピュータとロボットで代替可能になるため、オートメーションとデジタル化がテクノロジーによる大量失業に繋がるという職業の消滅リスクについては熟考すべき公の議論があります。これは、技術的変化が以前より速く、より広範に行われており、これまで考えられていたよりも多くの仕事を自動化できるという認識によって支えられています。

わずか15年前、コンピュータは定型的でない認知的な仕事や人間が手で行う仕事に関しては貧弱な性能でした。しかし、最先端のテクノロジーでは医療診断や保険のブローカー、自動運転など作業可能な範囲を大きく広げています。

自動化によって完全に失われる職業は7つに1つ程度の割合かもしれませんが、それ以外の職業であっても形態が大きく変わります。

エンジニアリングボトルネックと呼ばれる自動化する事ができないタスクの存在を考慮して行ったOECDの最新の研究によれば、32カ国の全職業の14%が自動化による代替される危険性が高いです。更に32%の職業が現在のやり方と大きく形を変えるかもしれません。

エンジニアリングボトルネックとは?
2017年のフレイ氏とオズボーン氏のセミナーによれば、次の3つのタスクは体系化が難しく、現時点では簡単に自動化できません。これらはエンジニアリングボトルネックとして知られはじめています。

1)知覚と操作が必要なタスク
特にあらかじめ決められていない事が多い複雑な状況、例えば非常に狭い場所で作業するなど

2)クリエイティブインテリジェンスに関連するタスク
独自のアイディアを思いつくなど

3)ソーシャルインリジェンスに関連する
ソーシャルコンテキスト上で他の人々のリアクションを理解し、手助けし、ケアする事


自動化によって失われる可能性が高い雇用の割合
白色:自動化のリスクが70%以上ある雇用、青色:自動化のリスクが50-70%の間にある雇用

自動化の結果労働者が仕事を失ったためか、もしくは変化する業務内容や新しい業務に適応する必要があるためか、いずれにしても成人労働者向けのトレーニングシステムについては考慮すべき課題があります。

現在、OECD諸国では平均して約40%の労働者が業務に関するトレーニングを受けています。しかし、頻度は年間数時間程度です。それに加えて、各国及び社会的に属するグループによっても違いがあります。例えば、調査によればトルコやギリシャではわずか16%の成人労働者のみが仕事に関連するトレーニングを受けています。それに比較するとデンマークやニュージーランドではこの割合は60%に達します。同時に、調査対象の全ての加盟国で、低スキル労働に従事する労働者は高スキル労働に従事する労働者よりトレーニング時間が低い傾向があり、年間平均で17%しかトレーニングに参加していません。

トレーニング時間の違いは、自動化に関するリスクが全ての労働者にとって等しいわけではない事を示しています。これはオートメーションの問題を更に複雑にします。

低スキル労働に従事する労働者と若者が最もリスクに晒されます
近年繰り返されている議論、すなわち自動化が一部の高スキル労働に従事する労働者の雇用も奪い始めるという議論は、フレイ氏とオズボーン氏のエンジニアリングボトルネックの考え方では支持されていません。それどころか、AIは従来のオフィスオートメーションなどの自動化の波より多くの低スキル労働を自動化し、それによってAIは主としてミドルスキル労働に取って代わり、労働市場の2極化をもたらします。

幾つかの例外的な低スキル労働、例えば、他人のアシスタントや実行補助をするような労働を除けば、自動化のリスクは教育の必要性や必要とされるスキルレベルが上がるにつれて低下します。

自動化のリスクが最も高い職種は、食品調理補助員、清掃員、ヘルパー、鉱業建設の労働者など、主に低スキル労働です。自動化のリスクが最も低い職種はすべて、専門的な訓練および/または高等教育が必要な職種であり、教育、マネージメント、および医療などが含まれます。

自動化のリスクを年代別に分析すると、若年層が最もリスクに晒され、次は高齢層です。若者は、しばしば、簡単な低スキル労働である清掃や食品調理補助などの仕事で働きながら社会経験を学びます。それに加えて、高学歴な若者であっても、就職当初は補助的役割や定型的業務から仕事を始める事が多いですが、これらは自動化の対象として真っ先に挙げられる業務であり、若者が社会経験を積む機会が失われます。政策的な観点からは、この状況は若者が働きながら学べる機会を作る必要性が高まる事を示唆しています。更に、法律や会計分野などの専門的な職種ではキャリアの出発点となるエントリーポジションが減り、キャリアを積む事が難しくなります。


ほとんどの国では低スキル労働ではトレーニング時間が少なくなっています。
棒グラフ:年間の業務関連トレーニング回数、左軸
▲印:低スキル労働の年間の業務関連トレーニング回数、左軸
◆印:年間の業務関連トレーニング時間の中央値、右軸

(自動化により消滅の危機にさらされている雇用の実態(2/2)に続きます。)

3.自動化により消滅の危機にさらされている雇用の実態(1/2)関連リンク

1)community.oecd.org
OECD – Automation policy brief 2018

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