POM:色地図のように使える匂いの地図を作成(2/2)

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1.POM:色地図のように使える匂いの地図を作成(2/2)まとめ

・嗅覚は食物の状態を知るために様々な種で使われている共通感覚の可能性がある
・匂いマップで離れている2つの匂い分子は代謝状態の変化にも時間がかかる
・匂いは虫除けにも応用が可能で既存の虫除け剤同等の匂い分子を10種類発見

2.蚊が嫌う匂いの探索

以下、ai.googleblog.comより「Digitizing Smell: Using Molecular Maps to Understand Odor」の意訳です。元記事は2022年9月6日、Richard C. GerkinさんとAlexander B. Wiltschkoさんによる投稿です。

アイキャッチ画像はstable diffusion

テスト2:臭いを生物学の基本原理とつなげる

「主要な匂いマップ(POM:Principal Odor Map)」は人間の嗅覚の予測に有用であったため、動物の嗅覚やその基礎となる脳活動も予測できるかどうかを検討しました。その結果、マウスや昆虫など、嗅覚神経科学者が研究してきたほとんどの動物の感覚受容体の活動や神経細胞、行動を予測することに成功しました。

自然界のどのような共通点が、何億年もの進化の結果、異なった種になった現在でもこのマップを適用可能にさせるのでしょうか?

私たちは、嗅覚の共通目的は、代謝状態の検出と識別、すなわち、何かが熟しているときと腐っているとき、栄養があるときとないとき、健康なときと病気のときを感知することかもしれないと考えました。

私たちは、生命界に存在する数多くの生物種の代謝反応に関するデータを収集し、このマップが代謝そのものに密接に対応していることを発見しました。このマップによると、2つの分子の匂いがかけ離れている場合、一方を他方に変換するのに長い一連の代謝反応が必要です。

一方、同じような匂いの分子は、1つか2つの反応によって分離されています。多くのステップを含む長い反応経路も、マップの中では滑らかな経路をたどっています。また、同じ天然物質(例えば、オレンジ)に共存する分子は、地図上で非常に密に集まっていることが多いです。POMは、嗅覚が代謝の構造を通じて私たちの自然界と結びついていることを示しており、驚くことに、生物学の基本原理を捉えているのです。


左:4界17種に見られる代謝反応を集約し、代謝グラフを作成しました。
この図では、各円が異なる代謝分子であり、矢印はある分子を別の分子に変換する代謝反応があることを示します。代謝物には匂いのあるもの(色)とないもの(灰色)があり、匂いのある2つの代謝物の代謝距離は、一方を他方に変換するのに必要な最小限の反応数です。太字で示された経路では、距離は3です。
右:代謝距離は、匂いの非類似性の推定値であるPOMの距離と高い相関がありました。

テスト3:モデルを拡張して、地球規模の健康問題に挑む

動物界全体の知覚と生物学に密接に関連する匂いの地図が、新しい扉を開きます。蚊やその他の害虫が人間に寄ってくるのは、その匂いの知覚によるところが大きいです。POMは動物の嗅覚の予測に一般的に使用できるため、私たちは人類の最大の問題の一つである、毎年何十万人もの命を奪っている蚊やダニが媒介する病気の惨劇に取り組むために再調整を行いました。

この目的のために、私達は2つの新しいデータソースを用いてオリジナルのモデルを改良しました。

(1) 米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)が80年前に人間のボランティアに対して行った実験のうち、長い間忘れられていた実験で、最近Google Booksで発見され、その後、機械読み取り可能になったデータ。

(2) TropIQのパートナーが実験室で行ったハイスループットな蚊の実験によって収集した新しいデータセット。

どちらのデータセットも、ある分子がどの程度蚊を寄せ付けないかを測定したものです。その結果、ほぼすべての分子の蚊よけ効果を予測することができ、膨大な分子空間における仮想スクリーニングが可能になりました。

私たちは、まったく新しい分子を用いてこのスクリーニングを実験的に検証し、その結果、ほとんどの虫除け剤の有効成分であるDEETと少なくとも同等の忌避効果を持つ分子を10種類以上見いだしました。より安価で、より長持ちし、より安全な虫除けは、マラリアなどの疾病の世界的な発生を減らし、無数の命を救う可能性があるのです。


Google Booksでスキャンした何千もの分子について、米国農務省の蚊の忌避データをデジタル化し、それを使ってモデルの中核となる学習済み特徴表現(マップ)を改良しました。さらに、蚊の摂食評価における忌避性を予測するためのレイヤーを追加し、忌避剤候補の計算機スクリーニングを実行しながら、摂食予測を改善するためにモデルを繰り返しトレーニングしました。

実験室で蚊の忌避効果を示した多くの分子は、ヒトに適用した場合にも忌避効果を示しました。いくつかの分子は、現在最もよく使われている忌避剤(DEETとpicaridin)よりも高い忌避効果を示しました。

有望な前途

私たちは、匂いを予測するモデリング手法が、より一般的な匂いに関する問題に取り組むための「主要な匂いマップ(Principal Odor Map)」を描くために利用できることを発見しました。このマップは、新しい匂いとそれを発生させる分子に関するさまざまな疑問に答え、匂いを進化や自然界における起源にまで遡らせ、何百万人もの人々に影響を与える人間の健康という重要な課題への取り組みに役立っているのです。今後、このアプローチが、食品や香りの調合、環境品質のモニタリング、ヒトや動物の病気の検出などの問題に対する新しい解決策を見出すために利用されることを期待しています。

謝辞

この研究は、ML嗅覚研究チーム(ML olfaction research team)によって行われました。

メンバーにはBenjamin Sanchez-Lengeling, Brian K. Lee, Jennifer N. Wei, Wesley W. Qian, and Jake Yasonik(後者2名はGoogle Student Researcherプログラムの一部支援を受けています)が含まれます。また、外部パートナーにはMonell Center の Emily Mayhew と Joel D. Mainland、TropIQ の Koen Dechering と Marnix Vlot が含まれます。

Google Books チームは USDA のデータセットをオンライン化しました。Richard C. Gerkin は Google Visiting Faculty Researcher プログラムの支援を受けており、アリゾナ州立大学の准研究教授でもあります。

3.POM:色地図のように使える匂いの地図を作成(2/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Digitizing Smell: Using Molecular Maps to Understand Odor

2)www.biorxiv.org
A Principal Odor Map Unifies Diverse Tasks in Human Olfactory Perception
Metabolic activity organizes olfactory representations

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