機械学習を使って有用な金属酸化物を捜す(1/2)

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1.機械学習を使って有用な金属酸化物を捜す(1/2)まとめ

・結晶性物質は構造と元素によって特性が決まるが未発見な有用物質が多数あると推測される
・従来の材料探索時は特性を1つまたは数個しか考慮できなかったため非効率であった
・迅速な材料合成と新しい特性評価手法を用いて結晶性金属酸化物の系統的探索に成功

2.金属酸化物の特性

以下、ai.googleblog.comより「Finding Complex Metal Oxides for Technology Advancement」の意訳です。元記事は2021年10月7日、Lusann Yangさんによる投稿です。

かなり材料工学、応用化学よりの専門的なお話なので細部に立ち入らず「機械学習の有効活用事例の紹介」と捉えて読むのが良いと思います。

まとめると、有用な性質を持つ金属酸化物を捜す作業は手間やコスト、時間がかかるので大量に検証する事が難しかった。

まず、安価に迅速に検査試料を大量に作成できるようにした。(ハイスループットな材料実験)

次に、機械学習を用いて、大量の検査試料から有用な性質を持っている可能性が高い金属酸化物を推定できるようにした。(物理学を意識したデータサイエンスのワークフロー)

タンパク質遺伝子などでも行われていますが人の手だけでは困難だった研究が一気に進む可能性ありますね。

アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Tengyart on Unsplash

結晶性物質(crystalline material)とは、原子が体系的に繰り返して配列されたものです。この構造と含まれる元素によって物質の特性が決まります。

例えば、シリコンの結晶構造は半導体産業で広く使われています。グラファイトの柔らかい層状構造は優れた鉛筆の材料となります。バッテリー技術や水の電気分解(H2Oを水素と酸素に分解すること)など、さまざまな用途に欠かせない結晶材料の1つに、酸素と金属の繰り返し構造を持つ結晶性金属酸化物(crystalline metal oxides)があります。

研究者たちは、有用性を示す可能性のある結晶性金属酸化物が相当数存在すると考えていますが、その数や有用な特性がどの程度あるかは判明していません。

カリフォルニア工科大学にある米国エネルギー省(DOE:Department of Energy)のエネルギー・イノベーション・ハブである人工光合成共同センター(JCAP:Joint Center for Artificial Photosynthesis)のパートナーとの共同研究「Discovery of complex oxides via automated experiments and data science」では、迅速な材料合成と特性評価のための新しいアプローチを用いて、新しい複雑な結晶性金属酸化物を系統的に探索しました。

カスタマイズしたインクジェットプリンターを用いて、金属の比率を変えたサンプルを印刷したところ、35万個以上の異なる組成を生成することができ、その中には興味深い特性をもつものもありました。

その中の1つには、コバルト、タンタル、スズをベースにしたものがあり、透明性、触媒活性、強酸性電解質に対する安定性を調整できるという、再生可能エネルギー技術にとって重要な特性を兼ね備えた珍しいものもありました。

この分野の継続的な研究を促進するために、私たちは、興味深い特性の指標として使用できる9チャンネルの光吸収測定からなるデータベースを、108の3金属酸化物系の376,752の異なる組成と、さまざまな技術的応用のために最も有望な組成を特定するモデル結果とともに公開します。

背景

材料科学の分野では、電気的、光学的、磁気的、熱的、機械的など、既存の技術を向上させたり、新しい技術を生み出したりするために必要な特性が100種類以上もあります。

従来、ある技術を実現するための材料探索では、このような特性を1つまたは数個しか考慮しないため、同じ材料を評価する作業が何度も並行して行われていました。機械学習(ML:Machine Learning)を用いた材料特性の予測は、これらの並列作業の多くで成功していますが、そのモデルは本質的に特殊であり、普遍的な特性を捉えることができていません。

本研究では、特定の特性に適した材料を見つけるためにMLがどのように役立つのかという従来の疑問に代えて、MLを適用して、特定の特性に対して例外的である可能性のある材料の短いリストを見つけます。この戦略は、ハイスループットな材料実験と、物理学を意識したデータサイエンスのワークフローを組み合わせたものです。

この戦略を実行する上での課題は、新規の結晶性金属酸化物の探索空間が膨大であることです。

例えば、無機結晶構造データベース(ICSD:Inorganic Crystal Structure Database)には、単一の金属と酸素からなる酸化物として存在する73種類の金属がリストアップされています。

これらの金属をさまざまに組み合わせて新しい化合物を作ることができれば、62,196通りの3-金属酸化物系ができ、その中にはいくつかのユニークな構造を持つものもあります。さらに、それぞれの金属の相対的な量を変えれば、可能な組み合わせの数は桁違いに多くなります。

しかし、このように探索空間が広いにもかかわらず、新しい結晶構造を形成するのは、これらの新規組成物のごく一部であり、大半は既存の構造の組み合わせに過ぎません。

このような構造の組み合わせは、ある種の用途には興味深いかもしれませんが、目的は中核となる単一構造の組成物を見つけることです。ICSDでは、可能性のある3-金属酸化物系のうち、実験的に組成が確認されたものは2,205件しか報告されていません。

これは、可能性のある組成の大部分が探索されていないか、否定的な結果が得られたために発表されていないことを示しています。本研究では、新物質の結晶構造を直接測定するのではなく、ハイスループット実験を用いて、どこに新しい構造があるかをMLベースで推論できるようにしています。

3.機械学習を使って有用な金属酸化物を捜す(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Finding Complex Metal Oxides for Technology Advancement

2)www.pnas.org
Discovery of complex oxides via automated experiments and data science

3)icsd.products.fiz-karlsruhe.de
ICSD – the world’s largest database for completely identified inorganic crystal structures

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