ディープラーニングを使用して胸部X線画像内の未知の異常を検出(2/2)

ヘルスケア

1.ディープラーニングを使用して胸部X線画像内の未知の異常を検出(2/2)まとめ

・固有の疾患を発見するモデルが利用可能であっても、異常検出モデルは有用
・モデルが異常を特定するために焦点を合わせた領域は放射線科医の関心領域に近い
・緊急の決定が必要な可能性のある症例の迅速なトリアージを可能にする

2.異常検知モデルの有用性

以下、ai.googleblog.comより「Detecting Abnormal Chest X-rays using Deep Learning」の意訳です。元記事の投稿は2021年9月1日、Zaid NabulsiさんとPo-Hsuanさんによる投稿です。

アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Frida Bredesen on Unsplash

COVID-19の検出パフォーマンスが大幅に低下しているのは、システムが異常を発見して「陽性」とフラグを付けた多くのケースが注意が必要な異常なCXR所見が含まれているにも関わらず、COVID-19に対して陰性であったためです。

これは、固有の疾患を発見するモデルが利用可能であっても、異常検出モデルが有用である事を更に強調します。


(A)一般的な異常(B)結核(C)COVID-19について、陽性、偽陽性、陰性、偽陰性の胸部X線写真の診断概要。各CXRで、モデルが異常を特定するために焦点を合わせた領域(つまり、クラス活性化マップ(class activation map))を赤、放射線科医が関心を示した領域を黄色で示します。

医療分野における潜在的なメリット

臨床ワークフローの改善における深層学習モデルの潜在的な有用性を理解するために、異常なケースが正常なケースよりも「迅速化(expedited)」される状況で優先順位付けに本モデルを使用するシミュレーションをしました。

これらのシミュレーションでは、システムは異常なケースの所要時間を最大28%短縮しました。
この優先順位付けの設定は、複雑で異常な症例を心臓胸部専門の放射線科医に転送し、緊急の決定が必要な可能性のある症例の迅速なトリアージを可能にし、レビュー合理化のために陰性CXRをバッチ処理する機会を提供するために使用できます。


(A)一般的な異常(B)結核(C)COVID-19をランダムにレビューする場合と深層学習モデルベースの優先順位付けを行った場合のシミュレーション比較
赤いバーは、異常なCXRを示し、正常なCXRはピンクで示しています。左側に向かって赤の密度が高いほど、異常なCXRが正常なCXRよりも早くレビューされることを示します。ヒストグラムは、ターンアラウンドタイムの平均的な改善を示しています。

さらに、特にデータが限られている場合は、システムを事前トレーニング済みモデルとして使用して、胸部X線の他のMLアルゴリズムを改善できることがわかりました。たとえば、最近の研究では、胸部X線から肺結核を検出するために正常/異常分類子を使用しました。異常および結核の検出器は、訓練を受けた放射線科医や分子検査などのリソースへのアクセスが不足している地域での早期診断をサポートする上で重要な役割を果たすことができます。

改善された参照標準ラベルの共有

機械学習が世界中の胸部X線の解釈を支援する事を実現するためには、まだ多くの作業が必要です。

特に、匿名化されたデータで高品質のラベルを取得することは、医療におけるMLアルゴリズムの開発と評価に対する重大な障壁となる可能性があります。これらの取り組みを加速するために、公開されているChestX-ray14データセットに対してこの調査で使用されたラベルをリリースすることにより、以前のラベルリリースを拡張しています。この分野でのコミュニティによる将来の機械学習プロジェクトを楽しみにしています。

謝辞

Googleでのこのプロジェクトの主な貢献者には、Zaid Nabulsi, Andrew Sellergren, Shahar Jamshy, Charles Lau, Eddie Santos, Atilla P. Kiraly, Wenxing Ye, Jie Yang, Rory Pilgrim, Sahar Kazemzadeh, Jin Yu, Greg S. Corrado, Lily Peng, Krish Eswaran, Daniel Tse, Neeral Beladia, Yun Liu, Po-Hsuan Cameron Chen, Shravya Shettyが含まれます。

放射線科医の協力者であるSreenivasa Raju Kalidindi, Mozziyar Etemadi, Florencia Garcia Vicente, David Melnickからも多大な貢献と意見が寄せられました

CXR-14データセットについては、NIHクリニカルセンターに公開してくれたことに感謝します。

結核のデータ収集については、Sameer Antani, Stefan Jaeger, Sema Candemir, Zhiyun Xue, Alex Karargyris, George R. Thomas, Pu-Xuan Lu, Yi-Xiang Wang, Michael Bonifant, Ellan Kim, Sonia Qasba, そして Jonathan Muscoに感謝します。

著者はまた、Google Health Radiologyおよびラベリングソフトウェアチームの多くのメンバー、特にShruthi Prabhakara, Scott McKinney, および Akib Uddinに謝意を表します。研究全体を通して画像の解釈と注釈の努力でこの作業を可能にした放射線科医にも心からの感謝を捧げます。画像注釈作業を調整してくれたJonny Wong。Gavin Bee, Mikhail Fomitchev, Shabir Adeel, Jeff Bertram, そしてBenedict Noeroによるデータリリース。原稿に関するフィードバックを提供してくれたDavid F. Steiner, Kunal Nagpal, そして Michael D. Howell。ブログ投稿へのフィードバックについては、Craig Mermel, Lauren Winer, Johnny Luu, Adrienne Welch, Annisah Um’rani, そしてAshley Zlatinovに感謝します。

3.ディープラーニングを使用して胸部X線画像内の未知の異常を検出(2/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Detecting Abnormal Chest X-rays using Deep Learning

2)www.nature.com
Deep learning for distinguishing normal versus abnormal chest radiographs and generalization to two unseen diseases tuberculosis and COVID-19

3)cloud.google.com
ディープ ラーニング モデルを使用した胸部放射線の解釈

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