SeqSNR:ICU患者の臓器機能不全をマルチタスク学習を使って予測(1/2)

AI

1.SeqSNR:ICU患者の臓器機能不全をマルチタスク学習を使って予測(1/2)まとめ

・ICU患者の治療後の状況を正確に予測する事は患者にとっても人員配置計画にとっても重要
・従来の機械学習は特定の有害事象だけを予測するシングルタスク学習が採用されていた
・臓器系間の相互依存性などの競合するリスクを考慮に入れたマルチタスクモデルを採用した

2.SeqSNRとは?

以下、ai.googleblog.comより「Multi-task Prediction of Organ Dysfunction in ICUs」の意訳です。元記事は2021年7月22日、Subhrajit RoyさんとDiana Mincuさんによる投稿です。

マルチタスクと聞くと「同時に実行」のイメージが強いですが、本件は異なるタスク/事象を一緒に扱えるようにする試みであって、例えば、血圧を見つつ、脳波を見つつ、呼吸を見つつ、過去の投薬状況を見つつ、患者の病状を予測するイメージです。

アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Obi Onyeador on Unsplash

病院の集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)は、医学的に最も脆弱な患者の世話をします。その多くは、人工呼吸器や透析などの臓器サポートを必要とします。ICUは常に重要ですが、COVID-19パンデミック中のICUサービスに対する需要は、ヘルスケアにおけるデータに基づく意思決定の重要性をさらに強調しています。

さらに、ICU患者の治療後の状況を正確に予測する能力は、リハビリや食事改善などの療法に繋がる可能性があり、人員配置やトリアージサポートを含む最も効果的なケアについての決定に情報を与える可能性があります。

機械学習(ML:Machine Learning)を電子カルテ(EHR:Electronic Health Records)に適用すると、治療後の状況を予測する上で有望であることが示されています。ただし、これらのMLモデルの多くは、臓器機能障害や生命維持介入の必要性などの特定の有害事象を予測するためのみにモデルがトレーニングされるシングルタスク学習(ST:single-task learning)に基づいています。

現実的な設定で患者の病状がどうなるかを考慮に入れて臓器系間の相互依存性とともに、さまざまな競合するリスクを考慮に入れてマルチタスクモデルをトレーニングする事はより大きな利点を生みます。

論文「Multi-task prediction of organ dysfunction in the ICU using sequential sub-network routing」では、シーケンシャルサブネットワークルーティング(SeqSNR:Sequential Sub-Network Routing)と呼ばれるマルチタスク学習(MTL:multi-task learning)アーキテクチャを提案します。これは、現実的な環境の複雑さをより適切に捉えます。

SeqSNRは、問題を診断するための臨床医の全体的なアプローチに触発され、柔軟なパラメーター共有とルーティングを使用して関連するタスクを見つけ、それらの間の相互学習を促進するように設計されています。 SeqSNRをICU設定で継続的な有害事象予測のタスクに適用することに成功し、特に低トレーニングデータシナリオで、シングルタスクおよびナイーブマルチタスクよりも優れていることを示しました。

データとラベル

この研究では、2001年から2012年の間にBeth Israel Deaconess Medical Centerで52,038回の救命救急入院を行った36,498人の成人からなる患者集団を含む、無料で利用できるオープンアクセスの匿名化されたMIMIC-III EHRデータセットを使用しました。

以前の調査と同様に、Fast Healthcare Interoperability Resource(FHIR)標準にマッピングされ、包括的な機能セットを使用したバージョンのMIMIC-IIIデータセットを採用しました。これには一連のバイタルサイン、検査結果、過去の投薬、手順、診断などが含まれています。

MIMIC-IIIデータベースには、ICU患者から取得した様々な手段を用いて計測した記録が含まれています。MLのほとんどのデータセットとは異なり、入力とターゲットは明示的に定義されていないことが多く、データから推測する必要があります。そのため、自動化されたルールベースの方法と臨床レビューの組み合わせを使用して、クリティカルケア介入、特定の臓器機能障害、および全体的な患者の転帰を含む、一連の多様なエンドポイントを定義しました。

モデルに与えられたタスクは、患者がICUに入院してから1時間ごとに24~48時間以内に選択された有害事象の発症を予測することでした。定義された有害事象には、急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)、持続的腎代替療法(CRRT:Continuous Renal Replacement Therapy)透析、昇圧剤と変力剤の投与、人工呼吸器(MV:Mechanical Ventilation)、死亡率、および残存滞在期間(LoS:Length of Stay)が含まれていました。

SeqSNRアルゴリズム

マルチタスク学習は、臓器系間の相互依存性を捉え、競合するリスクのバランスを取りますが、正常に実装するのは難しい場合があります。実務的には、共同で訓練されたタスクはしばしばお互いに損ない合う、「負の転移(negative transfer)」と呼ばれる影響を受けます。SeqSNRの背後にある直感は、モジュール式の「サブネットワーク」が、複数のタスク間で情報を共有する方法を自動的に最適化することにより、この問題を軽減するというものでした。

SeqSNRは、SNRアーキテクチャの時系列対応版であり、深層embedding層とそれに続くスタック型リカレントニューラルネットワーク(RNN)層の組み合わせです。モジュール化は、embedding層とRNNスタックの両方を、トレーニングフェーズ中に学習されたルーティング変数によって接続された複数のモジュールに分割することによって実現されます。

ルーティング接続は、常に1つのレイヤーと次のレイヤーのブロック間に作成されます。このアプローチは、特定タスクのレイヤーとの関連性が低いデータを確実に除外することにより、負の転移を最小限に抑えます。本質的に、これは、各タスクがモデル内の異なるパスを利用することを意味します。


SeqSNRアーキテクチャの概要

3.SeqSNR:ICU患者の臓器機能不全をマルチタスク学習を使って予測(1/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Multi-task Prediction of Organ Dysfunction in ICUs

2)academic.oup.com
Multitask prediction of organ dysfunction in the intensive care unit using sequential  subnetwork routing

3)github.com
google / ehr-predictions

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