MetNet:数時間先の降水量を予測するニューラル気象モデル(2/2)

入門/解説

1.MetNet:数時間先の降水量を予測するニューラル気象モデル(2/2)まとめ

・MetNetは米国全体の予報であっても、並列計算で数秒で予測を行うことができる
・MetNetニューラル気象モデルは、8時間未満ならNOAA HRRRよりも優れている
・HRRRモデルは雨雲の形状は正しく予測するが位置等を著しく間違う可能性がある

2.MetNetによる天気予報の精度

以下、ai.googleblog.comより「A Neural Weather Model for Eight-Hour Precipitation Forecasting」の意訳です。元記事の投稿は2020年3月25日、Nal KalchbrennerさんとCasper Sønderbyさんによる投稿です。アイキャッチ画像のクレジットはPhoto by Johannes Plenio on Unsplash

結果
MetNetを降水率予測ベンチマークで評価し、その結果を2つのベースラインと比較しました。1つは、NOAAハイレゾリューションラピッドリフレッシュ(HRRR:High Resolution Rapid Refresh)システム。現在米国で運用されている物理的な天気予報モデルです。
もう一つは降水フィールドの動きを推定するベースラインモデル(具体的には、オプティカルフロー)で、これは2時間以内の予測であれば良好に機能することが知られています。

ニューラル気象モデルの重要な利点は、密な並列計算用に最適化されており、特殊なハードウェア(TPUなど)での実行に適していることです。これにより、ニューヨーク市などの特定の場所の予報であっても米国全体の予報であっても、並列計算で数秒で予測を行うことができます。一方、HRRRなどの物理モデルの実行時間は、スーパーコンピューターで約1時間です。

以下のグラフでは、MetNet、HRRR、オプティカルフローによるベースラインモデルのパフォーマンスの違いを定量化しています。ここでは、降水量しきい値1.0mm/hでF1スコアを漬かって評価された3つのモデルのパフォーマンスを示します。これは、小雨に対応しています。MetNetニューラル気象モデルは、8時間未満のタイムラインでNOAA HRRRシステムよりも優れており、フローベースのモデルよりも一貫して優れています。


1.0mm/hの降水率でF1スコアで評価されたパフォーマンス(高いほど良い)。
ニューラルウェザーモデル(MetNet)は、現在米国で稼働している物理学ベースのモデル(HRRR)よりも最大8時間先までの予測であれば優れています。

大気の確率論的性質のため、正確な将来の気象条件に関する不確実性は、予測時間が長くなるにつれて増大します。MetNetは確率モデルであるため、予測時間の延長に伴って予測の滑らかさが増すことにより、予測の不確実性が視覚化で見られます。
対照的に、HRRRは確率的な予測を行うのではなく、直接単一の潜在的な将来を予測します。

次の図は、MetNetモデルの出力とHRRRモデルの出力を比較しています。


NOAA MRMSシステムから取得したMetNet(上)とHRRR(下)と真実の雨雲の形状(中央)の比較
HRRRモデルは真実の雨雲に似ている形状を予測しますが、予測された形状の位置等は著しく不正確な可能性があることに注意してください。

HRRR物理モデルを使った予測は、MetNetモデルの予測よりも鮮明に雨雲の形状を表示しているように見えます。しかし、雨雲が予測される正確な時間と場所は、初期条件とモデルのパラメーターが不確実であるため、精度が低くなります。


HRRR(左)は多くの起こり得る結果から単一の潜在的な将来(赤)を予測しますが、MetNet(右)は将来の結果に確率を割り当てることで不確実性を直接説明します。

HRRRモデルとMetNetモデルの詳細な比較は、以下のビデオでご覧いただけます。

今後の方向性
急速な気候変動の影響が最も深刻な与える地域向けに、広範囲に天気予報を改善する方法を積極的に研究しています。ここで紹介したモデルは米国本土向けのMetNetモデルですが、適切なレーダーおよび光学衛星データが利用可能な任意の地域をカバーするように拡張することもできます。

ここで紹介した研究は小さな足がかりであり、気象コミュニティとの今後の協力を通じて、さらに大きな改善につながることを願っています。

謝辞
このプロジェクトは、Lasse Espeholt, Jonathan Heek, Mostafa Dehghani, Avital Oliver, Tim Salimans, Shreya Agrawal そしてJason Hickeyと共同で行われました。

有益なディスカッションを提供してくれたManoj Kumar, Wendy Shang, Dick Weissenborn, Cenk Gazen, John Burge, Stephen Hoyer, Lak Lakshmanan, Rob Carver, Carla Bromberg そして Aaron Bell、可視化を支援してくれたTom Smallにも感謝します。

3.MetNet:数時間先の降水量を予測するニューラル気象モデル(2/2)関連リンク

1)ai.googleblog.com
A Neural Weather Model for Eight-Hour Precipitation Forecasting

2)arxiv.org
MetNet: A Neural Weather Model for Precipitation Forecasting

 

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