TensorFlow Quantum:量子機械学習のためのオープンソースライブラリ(3/3)

量子コンピュータ

1.TensorFlow Quantum:量子機械学習のためのオープンソースライブラリ(3/3)まとめ

・TensorFlow Quantumの重要な機能は、多くの量子回路を同時にトレーニングおよび実行できる事
・このため新しい高性能オープンソース量子回路シミュレーターであるqsimもGithubで公開
・将来TFQは量子超越性を達成したSycamoreを含む本当の量子回路で実行できるようになる予定

2.TensorFlow Quantumの概要

以下、ai.googleblog.comより「Announcing TensorFlow Quantum: An Open Source Library for Quantum Machine Learning」の意訳です。元記事の投稿は2020年3月9日、Alan HoさんとMasoud Mohseniさんによる投稿です。


TFQの概要図
量子データのハイブリッド量子古典識別モデルの推論とトレーニングのためのエンドツーエンドパイプラインに含まれる計算ステップの図です。エンドツーエンドのサンプルコードを見るには、www.tensorflow.orgに掲載されている「Hello Many-Worlds」の例や量子畳み込みニューラルネットワークのチュートリアル、およびガイドを確認してください。

TensorFlow Quantumの重要な機能は、多くの量子回路を同時にトレーニングおよび実行できることです。これは、TensorFlowの2つの機能、複数台のコンピュータで構成されたクラスタ全体で計算を並列化する機能とマルチコアコンピューターで比較的大きな量子回路をシミュレートする機能によって実現されています。

後者を達成するために、新しい高性能オープンソース量子回路シミュレーターであるqsimをGithubでリリースしています。qsimは、ゲート深度14の32量子ビット量子回路を111秒でシミュレートする能力を実証しました。(単一のGoogle Cloudノード(n1-ultramem-160)での実行です。詳細については論文Supplementary information for Quantum supremacy using a programmable superconducting processorを参照)。

このシミュレータは、マルチコアIntelプロセッサ向けに特に最適化されています。TFQと組み合わせて、Google Cloudノード(n2-highcpu-80)でゲート深度20の20量子ビット量子回路を60分間で100万回、回路シミュレーション出来る事を実証しました。 詳細については、TensorFlow Quantumの論文のセクションII Eのqsimを使用した量子回路シミュレーションを参照してください。

楽しみな未来
現在、TensorFlow Quantumは主に、古典的なコンピュータシステム上で動く量子回路シミュレーターで量子回路を実行する事が主要な使い方となっています。将来、TFQは、Cirqがサポートする実際の量子プロセッサ(GoogleのプロセッサSycamoreを含む)で量子回路を実行できるようになります。

TFQの詳細については、私達のホワイトペーパーを読んで、TensorFlow Quantum Webサイトにアクセスしてください。 MLコミュニティとQuantumコミュニティの橋渡しは、全面的なエキサイティングな新しい発見につながり、世界で最も困難な問題を解決するための新しい量子アルゴリズムの発見を加速すると信じています。

謝辞
このオープンソースプロジェクトは、Google AI Quantumチームが主導し、Waterloo大学、(Google親会社の)AlphabetのX、およびフォルクスワーゲン社が共同開発しました。Google AI Quantum 研究所の複数のインターンシッププロジェクトを通じて、このオープンソースソフトウェアに学生が多大な貢献をしてくれたWaterloo大学に特別な感謝を捧げます。

3.TensorFlow Quantum:量子機械学習のためのオープンソースライブラリ(3/3)関連リンク

1)ai.googleblog.com
Announcing TensorFlow Quantum: An Open Source Library for Quantum Machine Learning

2)arxiv.org
TensorFlow Quantum: A Software Framework for Quantum Machine Learning
Supplementary information for “Quantum supremacy using a programmable superconducting processor”

3)github.com
tensorflow / quantum
quantumlib / qsim

4)www.tensorflow.org
TensorFlow Quantum is a library for hybrid quantum-classical machine learning

4.TensorFlow Quantum:量子機械学習のためのオープンソースライブラリの感想

機械学習と量子コンピュータっておそらく相性が良いんですよね。

機械学習って計算に厳密性は必要なくて、むしろ精度を落としてもパフォーマンスを上げる方向に進化しようとしています。一方、量子コンピュータは基盤の不均一性によりノイズが増えてしまう事周辺の微量なエネルギーの影響を受けてしまう事超低温状態での制御の困難さなどの影響で精度と安定性を向上させる事に苦労しています。

量子コンピュータを完璧な演算装置として実現する事は困難かもしれませんが、機械学習であったらある程度ノイズ入りであっても許容できるというかむしろ得意分野だし、学習結果を一度出してしまえば、それを使うだけだったらそんなに計算機パワーは必要ないので量子コンピュータを継続的に安定動作させる必要もありません。

Google AIで量子コンピュータの話が結構出て来るのは、理想的な量子コンピュータを求めているのではなく、機械学習の実務に使える限定的な用途としての量子コンピュータも見据えているからで、実務に使える量子コンピュータが出来た暁には、既にそれを使いこなためのフレームがTensorFlow Quantumとして存在し、それを使いこなせる開発者も沢山いるって状況になるのでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました