ベーシックインカムとは何か?(1)

基礎理論

1.ベーシックインカムとは何か?(1)まとめ

・人工知能が人間の能力を遥かに超えるようになったら人間は働く必要がなくなるという予測がある
・人間が働く必要がないのであったら政府は全国民にお金を配るべきと言う案がベーシックインカム
・ヨーロッパや北米など限定された地域ではベーシックインカムの実験が始まっている

2.ベーシックインカムの考え方

人工知能が人間の能力を圧倒するような時代になったら、人間が額に汗を流して働くのは止めて労働は人工知能やロボットに任せて、人間は文化芸術活動やより生産性や独創性の高い仕事に集中できるようにするべきで、そのためには働かなくても最低限度の生活ができるような収入を政府が保障するべきだよね、と言うのがベーシックインカムの考え方。

当然反論はあって「働かなくてもお金が貰えるとしたら人間は堕落してしまう!」などなど勤労の概念を信奉する人たちは強い拒否反応を示す。個人的には拒否反応が出る理由は良くわかるし共感もする。しかし、仮に職業が囲碁のプロ(棋士)しかなかったとして、アルファ碁が出現した後の世界でもアルファ碁に勝って賞金を獲得する事を目指して全人類は努力するべきなのだろうか?

もちろん、全ての職業が同時に人工知能に置き換わるわけではないだろうから、上記の「職業が囲碁のプロ(棋士)しか存在しない世界」は例えとして極端すぎるだろう。しかし、人工知能が人間の能力を圧倒するような時代になれば大部分の職業は人間が逆立ちしても人工知能に勝てなくなる。そうなると、人工知能で置き換わる事ができない職業であっても「顧客」がいなくなる。例えばテレビのタレントや映画のスターは人工知能では代替不可能であるだろうが、顧客である「一般大衆」が人工知能に代替されたらCMやテレビ番組、映画は産業として成立するのだろうか?ベーシックインカムにこだわる必要はないが、何か従来にない新しい社会保障の仕組みが必要になるのではないだろうか?

とはいってもベーシックインカム信奉派の人々のように「近い将来、人工知能によって全人類の仕事が代替されるのだからベーシックインカムは必ず実現される!」と考えるのも楽観的過ぎる。ベーシックインカムを実現するためには大企業の税負担を増やして財源を確保する必要があるだろうが、現在は世界中が法人税軽減を競って大企業を誘致している状況。全世界で一斉にベーシックインカムを導入するのでなければ、大企業は法人税が安い国に逃げるだけで誰もベーシックインカムの財源を負担しようとはしないだろう。

ヨーロッパや北米の限定された地域ではベーシックインカムの実証実験も始まっており「ベーシックインカムが実現しても必ずしも人は堕落しない」と言う検証結果が示される事も出てきた。しかし、検証結果をよく読むと「ベーシックインカムが優れている」のではなく「現行の社会保障制度の欠点をベーシックインカムがカバーした」と解釈した方が自然である事が多い。仮に日本でベーシックインカムが試験的に導入されたら、失業保険や育休、産休、介護保険、年金制度に対する不満からベーシックインカムを絶賛する意見が集まる事は確実だろう。

個人的には日本でベーシックインカムは簡単には実現しないだろうと思う。なぜならベーシックインカムに近い制度は既にあるからだ。そう、生活保護だ。コスト負担は大企業ではなく勤労労働者が税金や社会保険料として負担している。少子高齢化により現役世代の負担は益々重くなるが、働けなくなった高齢者や貧困世帯はどんどん増える。全世界が一斉にベーシックインカム導入するのでなければ、現役世代がパンクするまで生活保護世帯はどんどん増えるであろう。

余談だが、前回の衆議院選挙で小池知事が率いた緑の党は、ベーシックインカムの導入を公約に挙げていた。東京都の限定された地域でも良いからベーシックインカムの実証実験等をやってからであれば説得力も出てくるのであろうが、真剣にベーシックインカムを検討して公約にしたとは思えなかった。ベーシックインカムは票集めのために気軽に公約に出来るような軽いテーマではないと思う。

このシリーズではベーシックインカムの実証実験結果などを確認していきたいと思う。

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