GPT-2のリリースから六か月後の振り返り(1/2)

入門/解説

1.GPT-2のリリースから六か月後の振り返り(1/2)まとめ

・六カ月前に公開された小型モデルの6倍のパラメータを持つ大規模GPT-2が公開された
・偽ニュースの検出の研究は進んでいるが決定的な手法はまだない
・7割の人がGPT-2が作成した偽ニュースを信頼できると判断、本当の新聞記事は同検査で8割

2.GPT-2の段階的リリース戦略

以下、openai.comより「GPT-2: 6-Month Follow-Up」の意訳です。元記事の投稿は2019年8月20日、Jack ClarkさんMiles Brundageさん、Irene Solaimanさんによる投稿です。人間が入力として与えた文章の続きを作成する事ができ、その文章の出来があまりに自然だったためにフェイクニュースが作り放題になるのではないかとの懸念から、機能を制限した(パラメータ数を減らした)版のみが公開されたGPT-2のその後の動きに関するお話です。

私達は2月にGPT-2の小型モデル(パラメーター数124M)、5月にGPT-2中型モデル(パラメーター数355M)と段階的なリリースを行ってきました。その後、パートナーとAIコミュニティとの共同研究によるモデルの悪用の危険性と社会的利益の潜在性を調査した後、7億7400万(774M)のパラメーターを持つGPT-2言語モデルをリリースします。

また、組織間で相互にモデルを共有するパートナーシップを開始しやすくするために、オープンソースの法的取り決め書もリリースしています。そして、幅広いAI研究コミュニティと公開基準に関して調整した経験についてテクニカルレポートも発行しています。

私たちが学んだ大切なこと
(1)研究機関の間で巨大な言語モデルの取り扱い方法を調整する事は困難ですが、可能です。
現在まで、1558Mパラメータを超える言語モデルを公開した事例はありませんでしたが、複数の組織がそれらをトレーニングするシステムを開発したか、より大きなモデルをトレーニングする手法を公に議論しています。

例えば、自然言語関連技術を開発しているHugging Face社や、Allen Institute for Artificial Intelligence(AI2)とワシントン大学(WU)の共同研究チームは、同様の段階的リリースアプローチを明示的に採用しています。
2月以来、GPT-2を複製した5つ以上のグループと議論しています。

(2)人間はGPT-2が作り出した偽ニュースを信じてしまいます
Foreign Affairs(アメリカの外交問題評議会が発行する政治雑誌)で発表された私達の研究パートナーであるコーネル大学のSarah KrepsとMiles McCainの調査によると、人々はGPT-2が合成した文章を読んで新聞の記事と同程度に信頼できると判断しました。(調査対象の集団は72%がGPT-2が書いたフェイクニュースを信頼できると判断し、一方、New York Timesの本物の記事は83%であり、ほぼ同等でした。)

更にAI2/UWの協同調査によると、「GROVER」と呼ばれるシステムによって書かれたニュースは、人間が書いたプロパガンダよりももっともらしいことが示されています。これらの研究結果を踏まえると、GPT-2のような巨大な言語モデルの公開についてより慎重になります。

(3)偽ニュースの検出は簡単ではありません
現実には、偽ニュース検出器は非常に少ない誤検知率で膨大な数のニュースと元ニュースから派生したニュースをチェックする必要があると予想されます。

悪意のある攻撃者は、さまざまなサンプリング手法(棄却サンプリングを含む)を使用するか、モデルを微調整して検出を回避する可能性があります。

現実世界での使用に耐える偽ニュース検知システムは、派生ニュースを含む様々なニュースに関して非常に正確(99.9% ~ 99.99%)に真偽を検知できる必要があります。私達の研究では、現在の機械学習ベースの方法では90%程度の低 ~ 中程度の精度しか達成できず、言語モデルを微調整されると更に検出精度が低下する事が示唆されています。

前途有望な研究はありますが(特に「GROVER」の開発者が提唱している論文「Defending Against Neural Fake News」の手法を参照)、それは本当に難しい研究課題です。言語モデルの誤用に効果的に対処するには、フェイクテキストの統計的検出に加えて、テキストに関連する人間の判断やその他の付加的な情報を追加する必要があると考えています。

パートナシップ
以下の4つの主要な研究機関と提携して、新しくリリースされた774Mのパラメーターを持つGPT-2モデルと未リリースのフルサイズGPT-2モデルの両方を分析しました。テクニカルレポートにはフルモデルに関する予備的な分析結果が含まれており、現在も継続しているこの分析により、1558Mモデルのリリースも関して潜在的な考慮が行われます。

また、組織間でモデルの共有を促進するために非営利の法的契約を作成し、他の組織がそのような共有スキームの利用を開始できるようにここで公開しています。

1)コーネル大学は、言語モデルによって生成されたデジタル偽情報に対する人間の感受性を研究しています。

2)ミドルベリー国際テロ研究所、過激主義、テロ対策センター(CTEC:Center on Terrorism, Extremism, and Counterterrorism)は、オンラインでテロリストや過激派がGPT-2を悪用する可能性を調査しています。

3)オレゴン大学は、GPT-2内の偏見を分析するための一連の「バイアス探査(bias probes)」を開発しています。

4)テキサス大学オースティン校は、領域固有のデータセットでGPT-2を微調整した後にGPT-2が出力した文章か否かを統計的に検出できる可能性を研究しています。
同様に、検出モデルを異なる言語モデル間で転移学習させる事ができる範囲を研究しています。

 

3.GPT-2のリリースから六か月後の振り返り(1/2)関連リンク

1)openai.com
GPT-2: 6-Month Follow-Up

2)github.com
openai/gpt-2

3)d4mucfpksywv.cloudfront.net
Release Strategies and the Social Impacts of Language Models(PDF)
Software Access Agreement(WORD)

4)www.foreignaffairs.com
Not Your Father’s Bots

5)arxiv.org
Defending Against Neural Fake News
Hello, It’s GPT-2—How Can I Help You? Towards the Use of Pretrained Language Models for Task-Oriented Dialogue Systems

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