ゴッホがカラーパレットを変更した理由を示す新しいデータ(1/2)

入門/解説

1.ゴッホがカラーパレットを変更した理由を示す新しいデータ(1/2)まとめ

・ゴッホは明るい黄色を多用する色使いで有名だが初期の作品はむしろ暗い色がメインだった
・ある時点から色使いが急激に変化した事が昔から有名で2つの有名な説がある
・視界が黄色っぽく見える病気の影響であった説とパリで印象派に影響を受けた説の根拠を検証

2.ゴッホの黄色の謎をデータから追う

以下、www.artnome.comより「New Data Shows Why Van Gogh Changed His Color Palette」の意訳です。元記事はJason Baileyさんの2018年12月24日の投稿です。ゴッホの色使いの傾向が突然変化したのは確かに昔から諸説あった事を記憶してます。今回の研究は、データを元にそのトレンドの変化を丹念に調べて従来の説を覆す発見、これはビッグデータに関わる人間としては興味深く大変Good Jobと思います。

 


Vincent Van Gogh, Wheatfield With a Reaper, September, 1889

ゴッホについて考えるとき、ほとんどの人の頭に浮かぶ最初の色は暖かく、輝く、黄金のようなの黄色です。黄色いヒマワリ、黄色い穀物畑、さらにはゴッホの代表作の一つであるThe Starry Night(星月夜)の黄色い月。

しかしゴッホの絵は初期の作品からそのようであったわけではありません。1885年、ゴッホが絵画を描いたおよそ10年間の中間地点になっても、彼はまだオランダ時代の作品と同じ傾向の絵を描いていました。The Potato Eaters(馬鈴薯を食べる人々)のような暗く、混ざった、灰色、茶色、そして緑が特徴の絵画作品です。


Vincent Van Gogh, The Potato Eaters, 1885

この暗さから明るさへの奇妙な移行について知りたく思ったので、私たちは明るい黄色の色使いに移行した瞬間をよりよく調べるためにデータ視覚化技術を使うことにしました。

最初のステップとして、すべてのヴァン・ゴッホの絵画を、描かれた年ごとに分け、各絵画の色を平均(画素の合計を絵画の総数で除算)することによって、活動年毎の色を計算しました。

かみ砕いて言えば、私たちはヴァン・ゴッホが活動していた年ごとに「平均的な」ヴァン・ゴッホの絵を作りました。私達はこれで時間の経過とともに変化するゴッホの色使いの微妙な変化を拾うことができると期待していました。最初の2年は作品が少なすぎたので、集計範囲を1882-1890に短縮しました。


1882年

1883年

1884年

1885年
1886年


1887年


1888年


1890年

一連の画像を見ると、1888年以降により明るい黄色のパレットへの紛れもない移行があります。

私達が最初にこの1888年の変化に気付いたわけではありません。従来より、ゴッホが彼のカラーパレットをシフトさせた理由として語られる2つのよく知られている主張があります。

・視界が黄色に見える病気(黄視症)、もしくは薬の副作用の影響

・パリで活動している期間にフランス印象派の影響を受けた

以下でこの両者を簡単に説明してから、私たち自身の説を提示します。

ゴッホは黄視症に苦しんだのでしょうか?

ゴッホの色の選択の変化として説明される事のあるよく知られた仮説の1つは、彼が黄視症に苦しんでいたかもしれないということです。黄視症は、「目の光学媒体の異常により、風景が黄色っぽく見えてしまう色覚異常」です。

緑内障が原因の場合、症状には光ぼけやちらつきも含まれることがあります。そしてこれは、The Night Cafe(1888)やThe Starry Night(1889)のように、ゴッホが光を外へ放射するように描いた理由を説明できると考えている人は多いです。


Vincent Van Gogh, The Night Café, 1888

Vincent Van Gogh, The Starry Night, 1889

その他の人々は、フランスのオーヴェル=シュル=オワーズでの最後の数ヶ月間にヴァン・ゴッホを治療した医師であるガシェ博士が、植物のジギタリスから抽出した成分でヴァン・ゴッホの発作を治療した可能性があると信じています。

ジギタリスは当時、てんかんなどの神経疾患の治療に用いられていましたが、副作用として黄青視野および光ぼけを引き起こす事で知られています。


Vincent Van Gogh, Portrait of Dr. Gachet, 1890 (手前の花瓶にジギタリスの花が見える)

ジギタリス

ゴッホのカラーパレットがシフトした説明に使われるもう1つの主張は、1886年にパリに移ったことです。フランスの印象派の大胆な色使いに影響を受けたとされています。

私達はゴッホのカラーパレットの移行の背後にあるとされる医学的な原因に納得できず、ゴッホのように大胆な色使いを用いたフランスの印象派に思い当たる人がいなかったので、他の可能性を検討することにしました。

(ゴッホがカラーパレットを変更した理由を示す新しいデータ(2/2)に続きます)

3.ゴッホがカラーパレットを変更した理由を示す新しいデータ(1/2)関連リンク

1)www.artnome.com
New Data Shows Why Van Gogh Changed His Color Palette

2)www.ncbi.nlm.nih.gov

Vincent van Gogh’s yellow vision

Van Gogh’s vision. Digitalis intoxication?

3)lifeofvangogh.com
Impressionism influence on Vincent Van Gogh

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